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傀儡使い

元ニザヴェリル領の麦畑、快晴の下、馬車を走らせるスコーネの女王。


「_________それにしてもこの世界には美味しい食べ物が多いでありんすな。んんぅ、美味しい♡」


馬車で旅をするスクルドとフェンリル。荷台には聖女が乗っている。


「りんご飴。ふふ、随分とこの世界に馴染んできたね。気に入った?」


グレイプニルの鎖から解放されてから二週間と言う時間が経ったのだが、フェンリルの適応力はかなり高かった。寧ろ馴染みすぎて怖い程である。


「上手い食べ物に旨い酒、自由気ままに旅をするのも悪くないでありんす。」

「あぁもぅ、君はもう少し綺麗に食べられないのかい。」


フェンリルの口元にベッタリとつく食べかすを拭き取って上げるスクルド。


「む、綺麗に残さず食べているではないかや?」

「そう言う意味では言ってないよ。」

「かか、冗談でありんす。」


会話の応酬を楽しむフェンリル。反対にスクルドは少し疲れた表情を見せていた。


「そう言えばスクルドよ、そなたの職業適正はなんでありんすか?」

「唐突だなぁ。一応最終章のボスを飾ろうと奮闘してるんだよ、私。こういうのって戦いの最中にネタバレしてこその王道だと思うんだよね。相手に絶望感を与えて戦いに意味がないことを頭と身体に教えて上げるんだ。特に三三三には抗う感情すらも無駄であることを分からせたい。あぁ、絶望にまみれた君の顔を考えただけで私は絶頂してしまいそうだよ、ふふ。」


身体をクネクネさせるスクルドをドン引きとした様子で見るフェンリル。


「まぁでも、スクルド本人の固有能力は開示してもいいかな。どうせ借り物の"器"だし。」


フェンリルはスクルドの発言に何処か引っ掛かかる。


(借り物の器.....それにスクルドはお前だろう?一体何を言っている。)


スクルドはそんなフェンリルの表情を察するが、構わずに話を続けた。


「傀儡使い(ドールマスター)。それが私の冠する職業適正。覚醒能力は生物、無生物を私の傀儡とする能力だね。意志に関係なく身体の主導権を握れるちゃんとしたボス系統の能力だよ。」

「そのボスとやらの意味は知りんせんが、発動条件はあるのじゃろ。」


鋭いねっと小さく嗤うスクルド。


「魔力量が私より多い相手だと覚醒能力は発動しないギミック付き。だけど、私はこの弱点を克服しているの。スコーネの古城にいた待女、それに各地に放った私の傀儡達を私は魔力タンクとしているから私以上にこの大陸で魔力がある者はいない。総数知りたい?」

「知りたい!」


スクルドはフェンリルの耳元で総数を呟く。フェンリルは目を大きく上げ、驚いた表情を見せた。


「スクルド.....そなた、頭が可笑しいじゃろ。現存するほぼ全ての人類全てではありんせんか。」

「もぉ、私の能力を声に出して言って欲しくないなぁ。まぁでもそうだね。昔から着々とこの時の為に計画を経てていたからね。仕掛けは完成してるんだ。だから私の魔力は絶対に尽きない。」


魔力が尽きる事はない。そしてスクルドの肉体は神代の天才魔術師のもの。ヴァルハラ大陸に置ける最上位の魔術師の魔力量の約五倍の魔力量を内包している。供給源である人類そのものを駆逐しない限り、スクルドの覚醒能力は解けない。


「他者の肉体の主導権を握る、か。」

(仲間割れ、国落とし、自決....様々な手法を用いることが出来る。それに術者であるスクルド本人もかなりのルーン魔術の使い手。強い。強者と認めざるを得ない程に。)


フェンリルは顎へと手を当てる。


「して効果範囲や最大捕捉数はどれ程のものでありんす?」

「フェンリルちゃん.....けっこうづけづけと人の能力を聞くんだね。普通、こういうのって聞かないものなんだよ?」

「互いに攻撃や殺意ある行動に準ずる事が出来ぬと言うのに何故食い下がる必要がありんす。わっちらは全てが片付くまで、運命共同体であろう。互いの戦闘能力の把握は必要な情報共有じゃ。」


スクルドは確かに、と頷く。


「フェンリルちゃんって意外としっかりしているよね。」

「長子でありんす。」


懐かしむように周囲の麦畑へと視線を向け微笑むフェンリル。スクルドは何か思うところがあるのか、少し熟考するとフェンリルに対し、能力の捕捉数の説明を始めた。


「..................最大捕捉人数は三人。それ以上の人数も可能だけど繊細な動きに大きく制限が掛かっちゃうからあまり推奨できない。範囲はとくにないね。私が死ぬか、意識が途切れない限り効果は解除されない。」

「防ぐ方法は「それは教えて上げない。」まぁ、そこは妥当じゃの。」


スコーネの女王スクルドの魔力総量はタンクを合わせれば神の領域を大きく凌駕する。最高位の攻撃ルーン魔術さえ彼女は連続して唱える事も可能だろう。


「つくづくと驚かされる。それ程の力があればわっちはいらんじゃろ。」

「いるね。物語の鍵を握る人物達はこんなチート能力を持つ私でさえ突破口を見つけてくるの。特に神聖国王なんかがいい例。だから、一人ずつ確実に殺して行かないといけない。特にヴェストフォルの王子は最初に削らないと。」


フェンリルはスクルドの発言であることに気づく。


「ヴェストフォルの王子......そうか、そうじゃな。そなたにとっての弱点でもあるのか。」

(ダーインスレイヴの担い手然り、わっちを先ず仲間に取むことで無作為な人類殺戮を止めたか。わっちもそなたにとっての弱点であろうからなぁ。)


大量殺戮兵器であるダーインスレイヴの担い手を第一に消し、魔剣を回収して置きたいらしい。人を殺せば殺す程、スクルドの力は減少するのだから当然の事だろう。


「まぁ余談だけどもう一つの弱点は七英雄が一人『魔帝』だったんだよ。十解の一人だった魔獣使いと共倒れしてくれたから良かったんだけどさ。あれが生きてたらこんなにアクティブに動けないもん。魔帝の覚醒能力が他者の【魔力制御】だから私の魔力タンクも根こそぎ取られちゃうし。魔力チートな私を唯一牽き殺せる相手。」


神聖国は魔帝を殺すべきではなかったのだとスクルドは嗤う。


「この世界で私に勝てる人はかなり少ない。寧ろ条件が揃わない限り、私を殺しきり事も出来ないもん。」

「相当な自信家でありんすね。」

「フェンリルちゃんも内心では同じでしょ?」


二人は顔を見合せ、大きく笑い声を上げるのであった。

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