相談
「お前さんとははあんまり面識がない筈だが、何の用だ。防具の完成にはまだ時間が掛かると報告は伝わっている筈だが。」
十解の一人「ゼクス」は新たに加わった十解の為に防具の製作に取り掛かる。そしてその側で見守るのは闘技大会の前に加わった十解の新メンバー、ランドグリーズであった。
「ゼクス殿........ゼクス殿は何故、十解に加わったのだ。そなたの同士であった七人の小人達の大半は殺され、国は大きな被害を被ったと聞いた。憎悪、怒りは感じぬのか。復讐はしたいとは考えないのか。」
ゼクスは手を止め、ランドグリーズへと身体を向ける。
「その質問、そのままお前さんに返すぜ。」
ランドグリーズはぐっと拳を握り締め、椅子から立ち上がる。
「怒りはあるッ。我が祖国は蹂躙され、多くの者が命を失った。この身に神聖国に抵抗出来る力があるのならば当方は刃を神聖国へと向けるだろう。だが、当方にそれ程の力はない。だからこそ今は神聖国の進む未来を見届けなければならない。散っていったクラキ国の仲間達の為にもな。」
「随分と律儀な性格をしたお嬢ちゃんだ。お前さんにも言える事だが、俺にも選択肢がなかったのさ。剣の奴は未だ目が覚めていない。他の奴らは死んじまった。残った俺が元ニザヴェリルの奴らを纏め上げ、立ち直さきゃならんかった。その為に先ず必要なものが終戦後の立場だったのさ。」
ゼクスは小槌を前に突きだし、自身の胸へと当てる。
「その事を理解していた道化師の野郎が神聖国王に進言して十解の一員に加えたって訳だな。七英雄だけでなく、各大国の抑止力になるように代表に近い立場であった奴らが十解の立場に就いてるだろ?それがいい証拠だ。」
神聖国の目標は世界の調和を目指す事にあるとジークフリートは言っていた。その為には臣民の賛同が必要なのだ。それを可能とするのが各大国で権威を持っていたものが言葉にすることにある。
「侵略者ではなく、自国の権力者に言葉を紡がせた方が国民は言うことを聞く訳か。」
「そう言う事だ。そして一丸となった国は長期の平穏を得る。」
世界を統一し、アングルボサの呪いを消し去れば此れより数世代は平和な世が続く。
「その後は後の世代の十解の頑張り次第だとジークフリートは苦笑していたな..........」
人の世に真の平和は訪れない。その事実は歴史が既に証明している。争いと共に人と神の歴史はあるのだ。だが、暫くの平穏は作りだすことは出来る。
「神聖国に怒りを感じるのは正当な権利だ。家族や仲間、友人、知り合いが侵略戦争で死んじまったんだからな。だがな、この国がやろうとしていることは間違っちゃいねぇよ。目に見えて平和な国造りがされてんだからな。」
ゼクスは背を向け、防具の製作に戻る。ランドグリーズもまた背を向け、ゼクスの工房から立ち去る。
(間違ってはいない、か。)
ジークフリートを筆頭とした初期の十解は世界蛇を討伐し、混沌から世界を救った。まさに英雄、勇者の所業であった。




