僕たちは友達だから
国の統制が取れ、神聖国は不動の統一国家となった。王は玉座にて座すのみ。後の事は十解に任せ、国を円滑に回せばいい。
(やっと肩の力が抜ける.......)
トゥーレの塔、最上階から見える景色を目に焼き付ける。
「この世界はもう俺の手の内にある。やるべき事はフェンリルを倒すことだけになったんだ。」
戦力は揃った。十解のみならず何千、何万という戦士兵団が神聖国にはある。フェンリルには充分に対応出来る。
(寧ろ過剰戦力と言ってもいい。ディートリッヒの実力は最早原作を大きく上回る。あいつ単体でもフェンリルと殺りあえるだろう。)
ニヤケが抑えられない。
「あと少し、あと少しで俺はスローライフが手に入るんだ.........」
目を瞑り玉座へと背を預ける。
(影鏡士のポテンシャルは高い。俺の影武者をさせるには充分な程に。彼奴が影武者の任を仮に否定しようとも妹の安否をちらつかせれば必ず従う。)
磐石なスローライフを送る為の駒も揃った。
「.........」
だけど、一つだけ不安が残る。
「.........ロキ」
未だに目覚めていない。既に半月は経っているが目覚める兆候すら見せていない。
(ブリュンヒルデとの戦いは命を掛ける程の戦いだった.......ロキは覚醒能力の先を行使したんだ。)
この世界に置ける主人公とラスボス。一筋縄ではいかない戦いだったことは言うまでもない。
「俺はお前が嘘をついているように見えるよ。」
玉間を後にし、ロキが眠る寝室へと足を踏み入れる。使用人達は全て退室させた。
「眠っている振りをしているんだろ?」
眠るロキに話を掛ける。だが、返答は返って来ない。
「そろそろ、起きてもいいんじゃないか?」
長い髪に隠れる幼い顔。健やかに眠る道化師の姿に苦笑が出る。
「これまでお前にはたくさん助けられた。正直にいうとお前がいなかったら詰んでた。」
ロキの手を握り、自身の額へと当てる。
「..........俺の名前は廉太郎、山田廉太郎。何処にでもいる平凡な高校生だったんだ。スローライフ計画や神聖国王なんて大層な事をしているけど、俺は小心者で臆病者だ。この容姿だって本当は俺のものじゃない。」
懺悔をするように言葉を続ける。
「ブリュンヒルデやクリームヒルトが惚れていい男じゃない。お前やディートリッヒが思うように俺は凄い男でもない。俺の芯はいつだって脇役で主人公になれない半端者なんだ。これまでもこれからも俺は鴉羽の容姿に守られる。本物の道化師は俺なんだよ、ロキ。俺は何時だって嘘で塗り固まれた大嘘つき者だ。」
涙が頬を伝う。何時だって俺がしてきた事は上澄みばかりで芯がない。それが脇役の限界なんだ。
「_____________そんなジークフリートが好きだから僕はここまでついて来た。」
掴んでいた手が握り返される。
「ロキ.........目が覚めて」
目を見開き、ばっと立ち上がる。
「君が誰であろうと僕は君に付き従う。だって僕達は__________」
ロキは頬を上げ、嬉しそうにジークフリートへ告げるのだ。
「_________________友達だから。」




