全力
「_____________水刃拳舞」
メリケンサック型の短刀を両側に振り払う。軽い動作だ。だが、その軽い動きで地面は両断され、闘技場の地形を変える。
「武器に高圧水流を纏わせる技。切れ味と破壊力が強すぎてこの大会向きじゃない。このまま戦えば確実に死ぬわよ?」
赤髪は立ち上がり、唾を吐くように血を吐き出す。そしてにぃと笑みを浮かべた。
「_____________上等だぜ。戦いはそうこなくっちゃ愉しくない。」
片手剣を強く握りしめる。
「剣帝様!俺がもし、この戦いで死んでもヒス女への制裁は不問にしてくれ!」
剣帝は何も言わない。ただ、静観する。その反応を見て苦笑をすると赤髪は桜髪へと視線を向け直し、片手剣を翳す。
(片手剣使いの覚醒能力は瀕死に近い状態、又は即死した場合に発動する.........最大活動時間は3分。死の先伸ばし。それも覚醒状態時に陥った場合は通常時よりも数段と使い手の底力を引き上げ戦闘を続行させる。)
使いづらくて仕方がない。だが、覚醒状態に陥れば底力を持ち手の肉体崩壊限界値まで引き上げる。
(大陸中に放送されるこの戦いで奥の手は見せたくなかったけど..........そうも言ってられないよな。)
目の前で桜髪が展開する技はあまりにも危険過ぎる。軽く振るっただけでこの威力。
(それにもし、空衝拳舞と同時使用が出来るとしたら........)
思考を止める。考えれば考える程、剣がぶれる。
「三分だ...........三分で蹴りをつける。」
己を自ら傷付け、瀕死状態になる。全ての性能が爆発的に上がる。両腕に刻まれたルーンの威力も素とは比較にならないほど威力を増すことだろう。
(予備の魔法袋に収納した高級回復薬が一瓶。)
これを使用すればどんな致命傷であろうと万全の状態へと帰化する。そこそこ良い家が変える金額がしたが致し方ない。
(此処が俺の正念場だ........)
両腕の赤いルーンが淡く光る。すると赤髪は紅蓮の炎に呑まれた。
「ははっはは自殺願望者かよ、おい!!綺麗に燃えてんなぁ!!えぇ?」
桜髪は炎に焼かれる赤髪を見て爆笑する。
「.............俺がヴァナヘイムの意思を継ぐんだよ。」
焼かれる赤髪が声を発する。そして炎がかっ消えると、全身に火傷を負った赤髪が姿を現す。最早、立っている事すら奇跡な程に重症だ。
「あんた.........そうか、片手剣使い。」
桜髪は笑みを消し、感覚を研ぎ澄ませる。目の間にいる男は戦士だ。かつてのヴァナヘイム王を彷彿させる強靭な覚悟と意思を瞳から感じられる。
(そう.....私の目標はヴァナヘイム王を倒し、私自身が王に成り変わる事だった。)
その鬱憤をヴァナヘイムの元国王フレイと同じ職業適正を持つ目の前の戦士で果たす事ができる。
「あんたを倒して本物の女王になる。」ボソ
先に動き出す桜髪。
「_________________おせぇよ。」
動き出そうとした刹那、顔面を片腕で捕まれ岩盤へとぶつけられる。
「........痛ぇってて言ってんだろーが?」
桜髪は岩盤に頭を押し付けられた状態で空衝拳舞を発動する。
「ぐっ、ヒス女っ、てめぇ!!」
赤髪の急所(股関)へと打撃が入り、怯む。その隙を見て桜髪は赤髪の拘束から抜け出す。
「自分が男であったことを恨むんだなぁ!」
水刃拳舞を振るい、赤髪の両腕を即座に両断しようと試みる。
(このヒス女、マジで容赦がねぇな.......ヴァナヘイムでこれ程の力を持ちながら無名だったなんて信じらんねぇぜ。)
赤髪は後退するのではなく前進する。そして桜髪の両手首を抑え、水刃拳舞の攻撃を防ぐ。桜髪はキッと赤髪を睨み付け暴れるが、赤髪は拘束を解かない。
「蔦よ___________」
地面から複数の蔦が生えると、桜髪を拘束していく。
「舐めんなっ!この程度の雑草、直ぐにひきちぎっ!?」
引きちぎれない。蔦の強度が比較できない程に強化している。
(バカな......ルーン魔術の強度も覚醒能力に比例するっての!!)
赤髪の左腕に刻まれたルーンの一節が紅く光る。
「_______________火柱」
その一言の詠唱で強大な火の柱が天まで昇る。




