影武者くん
「いやぁ.......楽しかったぁ!」
バトル・ロワイアル。兜や装備を脱ぎ捨て、待機室のソファーで寛ぐジークフリート。
「最後の八人まで残っちゃった......どうしよう。」
(軽い気持ちで参加しちゃったけどついつい舞い上がって最後まで残ってしまった。)
ジークフリートは武闘大会に密かに参加していた。そして十解の誰にもこの事実は告げていない。ちなみにではあるが現在、神聖国王席に座らせているのは影武者である。
(この日の為に急遽用意した代理だけど......バレないよね?)
「声帯模写」という特殊な職業適正を持つ者を奇跡的に神聖国兵として雇用する事が出来たのだ。使わない手はない。
「...........影武者くんがボロを出す前に入れ代わらないと。」
カブトムシを模した兜に軽装備、獲物も双槍ではなく剣を使っている。戦い方のスタイルだって徹底して変えているし、誰にも分からない筈だ。
(スローライフを送る上で影武者の存在は必要になってくる。限定的な話で言えば「声帯模写」くんに影武者を任せる事は出来るが長期となると正直に厳しい。)
将来的に誰か適任な人物を探さなければならない。
(..........そういえば、バトル・ロワイアルの時に気になる奴がいたな。)
徹底して戦わずに逃げていた奴がいた。動きが素人ではなかった。まるで様々な職業適正を平用しているような動き。
「俺と同じ、冒険者の職業を司っている?それとも他に似たような職業適正か。まぁいい、トーナメントで戦えば分かる。」
使える人材なら神聖国に取り入れるまでだ。優秀な人材は多ければ多い程いい。
「____________貴様、何者だ?」
クリームヒルトの一言により十解一同がジークフリート(声帯模写)の方へと顔を向ける。
「な、何を言って、るんだ?」
狼狽える「声帯模写」により疑念の目が向けられる。
「怪しいですわね.....というよりもジークフリート様でないことは始めから分かってましたが........」
「まぁ、彼奴が神聖国兵の履歴書を熱心に読み始めた当たりから予想はしていたな........」
アスラウグとグローアは溜め息を吐きつつジークフリートがしそうな行動パターンを予測する。
(............師匠が武闘大会に参加してること、黙っとこ。面白そうだし。)
(...........廉太郎は時々、子供みたいなところがあるからなぁ。其処が可愛いんだけど。)
ベルンとスキールニルはジークフリートがバトル・ロワイアルで戦っていたことを見抜いていた。
「はぁ......久しぶりの会合で戻って見ればロキきゅんが昏睡状態とはやる気が起きんではないか。武闘大会などどうでもいいから見舞いに行かせてくれ。」
「ダメだよ、ヘズ。これはエイル嬢、そしてフレイヤ姫の後継を選定する大会なんだ。真剣に取り組もう。」
遠征から戻ってきたヘズは悪態を吐き、それを咎めるハーラル。二人はジークフリートが入れ代わっている事に気づいていなかった。
「.............」
そんな様子の十解に対し、ランドグリーズは沈黙を貫く。十解入りを果たしたが遺恨が消えた訳ではないと態度で示しているのだ。
「_________愚民に悟られればお前の命はない。心にとどめて置けよ、贋具。」
そう言い残すと、クリームヒルトは席を立ち上がり、闘技場の玉間から去って行く。一同は思う。探しに行ったのだろうと。




