そこまでッ!!
「__________________うん、そこまで!」
剣帝の言葉により、戦闘音は鳴り止む。
「いやぁ、期待以上だったね。まさか此所までの戦士がアルフヘイム内に残っていたとは!世界蛇の時、何してたの?」
皮肉混じりに剣帝は問い掛ける。だが、残った八人は言葉を発っさない。
「あはは、冗談さ。そう怖い顔をしないでよー。さて、君達も疲れただろう。気を失っている勇士の諸君を医務室に運ばないと行けないからね、トーナメントは午後から行う。個別の待機室に案内するから其処で身体を休めておいで。食事もしたければ神聖国兵に頼めば持って来てくれるよ。」
剣帝はそう言うと十解が集う席へと戻って行ってしまった。
(..........無戦で生き残った。はは、ついてる。兄ちゃん、最後の八人まで残れたよ!)
職業適正の使い方はこのバトル・ロワイアルで完璧に覚えた。それに周囲を観察していたから、様々な戦い方をある程度、自身に投影が出来ると思う。
(後はトーナメントの試合を観察し、備えるだけだ。)
ぶっつけ本番ではあるけれど、掛けるしかない。職業適正の覚醒に。
「あぁ、もぅ!!!本当にじれったいんだけど!!」
桜髪の女戦士は神聖国兵について行きながら、イライラを感じていた。
(あのまま戦わせてくれれば良かったじゃん!絶対に私、あの場にいた全員をボコボコ出来たし.........でも、えへへ、もうすぐ、あの十解の一員になれるんだぁ。遠目でしか見れなかったけど、十解の人達、やっぱりオーラが全然違ったなぁ。何て言うか高貴な感じ!)
待ちきれない。十解入りを果たせば無条件でアルフヘイムの英雄として歴史に名を刻むことになる。それだけじゃない。ヴァルハラ大陸に自分の名前が轟く事になるのだ。
「えへ、えへへ........それ、しゅごくない、」
待機室へと案内され、ソファーへと腰掛ける。そして立ち上がり、鏡の前まで歩くと腰へと手を当て、女帝がとるようなポーズを決める。
「頭が高いわよ!私を誰か理解しているのかしら?跪きなさい、愚民。このフィンブルの冬、第○席【拳刃士】様にね。おーほほほほほほ!!!!あーははははは!!!」
そして十解になった自分を夢想して台詞の練習をするのだ。
「________あのぉ、食事をお持ちしたので、こちらに置いておきますね。」
神聖国兵は食事をテーブルへと移すと何も見てませんよと気の使った顔で待機室を退室していく。桜髪は顔を真っ赤にさせ、その場で踞った。
「も、もぉおおおおおおおなんでいつもタイミングが悪いのよぉおおおおおお!!!!」
「っち、グローアの奴も偉くなったもんだなぁ。俺だって、世界蛇と戦っていれば今頃十解の一人だったさ。」
待機室に広がる酒の匂い。蒼髪は出来上がっていた。
「はぁ、なんで武闘大会になんか出ちまったんだろうなぁ。」
名声や富に興味はない。「s」級の時に腐る程、周囲から羨望の眼差しを受けた。
「俺は.........」
家族も故郷も失い、そして祖国の名前が奪われた今、自分には何も残されていない。「s」級冒険者という肩書きも冒険者が撤廃され、過去の栄光となった。
「..........こんな戦士としての終わりかたは嫌だ。」
せめて戦場で華々しく死ぬか、未開の地、大冒険の果てにこの命を散らしたい。
「最後の掛けだ。三十代後半となる俺に成長の余地はもうねぇだろう。だが、成熟しているからこそ、俺はこの強さを保持している。」
そんじょそこらの若造に負ける気は毛頭ない。酒を飲み干し、壁に立て掛けていた大剣を握る。
「【怪物殺し】の異名が枯れていないことを見せてやる。」




