バトル・ロワイアル開始
「________ッ」
戦いに参加出来ない。いや、正確には武闘大会には参戦しているのだが、バトル・ロワイアルの鐘が鳴ると同時に周囲は祭りのように暴れだした。
(こいつら、剣を抜かないで拳で戦いを始めやがった。)
それもそうだ。謝って殺してしまえば剣帝に斬り殺ろされる理不尽なルールが追加されたのだ。
(とは言え、実践経験のない俺が積極的に戦いに参加出来る筈もなく存在感を極限に消し、逃げ回っているのが今の現状。)
最後の八人まで逃げ切る。
「あぁーほんっとにウザいんだけどッ!!」
桜髪を靡かせた女戦士はルーン魔術によるエンチャントで拳に魔力を纏いライバル達を殴り倒していく。
「私が女だからって簡単に倒せると思ってんだろ?はっ、その猿みたいな低能に分からせて上げるッ!!私が次期十解だってぇ!!!!!」
地割りを起こし、周囲の者達を蹴散らす。大胆な戦法だが凄く目立っていた。十解の面々も観覧席から感心とした様子で桜髪の戦い振りを観察する。
「すげぇ面白ぇ奴だな、あの女戦士!絶対にヒス持ちだぜ!なぁ?」
誉めているのか貶しているのかどっちなのだろうか。とは言え、急に肩を組んできた赤髪の青年に警戒をする。
「うわ!!?だれだお前!!!」
そして赤髪は自分の顔を見ると驚いたように離れた。
(お前から引っ付いて来たんだろう.....)
赤髪は直ぐに戦闘態勢に入り、木刀を構えてくる。
「________悪く思わないでくれよ!」
そしてルーン魔術で身体能力を引き上げ、襲い掛かってくる。
(速ぇ.......避けられない!!!)
木刀が目の前に迫る。スローモーション。走馬灯にも近い妹との何気ない会話の情景が頭を過る。
「____________邪魔だ、退け。」
だが木刀が頭を殴り付けることはなかった。何故ならば身の丈程の大剣を振り回す蒼髪が何十人もの参加者達を殴り飛ばしていたのだ。そして殴り飛ばされた大男の戦士が間に飛んで来たことで木刀の一撃は入る事はなかったのである。
(土煙が舞っているうちに身を潜めさせて貰う。)
鏡影士の能力は他者の真似事をする事が出来る。簡単な事であればある程、精密にコピーが出来る。故に隠密の真似事も熟練度は低いが可能ではあった。
「_______ちぇ、逃げられたか!」
赤髪は悔しそうに叫んでいた。
「悔しそうだな。獲物にでも逃げられたか?」
ポニーテールの優男が赤髪へと話を掛ける。
「そうなんだ、逃げられたんだよってポニーちゃん!どこ行ってたんだよ!!」
「ポニーちゃん呼ぶな。」
ポニーテールの優男が手に持つ武器は鉄の棒、鈍器。
「赤髪、お前......もしかして獲物は木刀しか持って来てないなんて言わないよな?」
「え?木刀で足りるくない!俺、結構強いよ!!」
ポニーテールは赤髪の頭を叩く。
「何すんだよ!」
「お前が何してんだ。闘技場を見れば分かるだろ。明らかにヤバイのが二人いる。」
ポニーテールは闘技場で暴れまわっている桜髪と蒼髪を指差す。
「あの二人には近づくなよ。今のお前の装備じゃ、絶対に勝てない。断言する。」
(桜髪は自前の武器すら使ってない。能力は未知数。それにあの蒼髪は力の一割すら出していない。俺や赤髪がフル装備で挑んでも勝てる見込みがあるかは分からない。まさか、アルフヘイムにこれ程の戦士が残っていたとはな。)
隣に立つ赤髪はバカみたいにキラキラとした目で両者の戦いっぷりを見ている。勿論、首根っこは掴んで行かせないようにしている。
(こいつは馬鹿正直者だ。無策に飛び込んで返り討ちに必ず合う。)
頭は馬鹿だが、こいつ以上のポテンシャルを秘めた戦士に出会った事がない。
(故に最高の戦士を此所で潰すのは相方として勿体ない。必ず、こいつをアルフヘイムの希望にする。)




