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憎悪と覚悟

「この殺気の数........」

(そうか。俺だけではなく、この場にいる多くの者たちがハーラルに家族を殺されているのか。)


ダーインスレイヴの能力とはそう言うものだ。起動すれば人間を大量殺戮出来てしまう。侵略戦争には持ってこいの代物。故に戦争間での使用は本来であれば禁じられているのだが、神聖国はお構い無いし使用してきた。


「ぐっ........俺には耐えられないッ!!!」


一人が軍刀を抜き、壇上にいるハーラルへと向かい走り出す。


「そうか。君は自分の感情を優先して此所にいる皆を犠牲にするというのだね。」


ハーラルはダーインスレイヴへと手を掛ける。そして隊列を組む皆へと言葉を掛ける。


「規律を守るためには集団による捕縛が効果的である。さて、君達は神聖国の民であり、部下だ。やるべきことを理解しているね。ならば行動してみてくれ。もしそれが理解できないというのであれば、僕はコレを抜かなければならなくなる。」


ダーインスレイヴへと手を掛けるハーラル。軍刀を手にした男は壇上へと上がり軍刀を振り上げた。


「_________がはっ!!?」


だが、即座に新入兵達により地面に組み伏せられる。ハーラルはその姿を見下すと再び視線を新兵達へと向けた。


「僕が憎いか。許せないか。その刃で復讐を遂げたいか。勝手に思っていろ。僕の祖国ヴェストフォルは世界蛇と戦い滅びた。けれど戦士として戦い、戦士として誇り高く死んだんだ。」


ヴェストフォルは世界蛇の引き起こした大津波で深海の底に沈んでしまった。


「どこぞの大国らと違ってね。兵団を一つも寄越さずのうのうと自国の防備に力を入れ、大国間戦争の準備をしていた無能な国家達。一丸となって倒すべき世界蛇は二の次か。はっ、何が四大国か。世界を救った英雄を、僕の祖国を愚弄するなよ。」


皮肉混じりに嗤うハーラルにヴァナヘイムの新兵達は何処かバツの悪い表情を見せる。


「僕はヴェストフォル全ての民達の魂を背負ってこの場に立っている。神聖国は新たな希望なんだ。僕へのつまらない怒りは早々に捨て、子供達が住みやすい明るい世界を作れ。」


押さえていた男を解放し、立ち上がらせ、隊列へと戻るように命令をする。


「そして戦争のない世の中を僕達で目指すんだ。美しく在れ。その為に神聖国は大国間との戦争で勝利をし国々の境目を消したのだから。」


ハーラルはそう言い終えると壇上から下り、複数人の兵達を引き連れ、その場から去って行った。


「...............」


絶句する。言葉を受け、怒りが収まってしまった。納得してしまった。


(壇上に立っていた人は俺の親父を確かに殺した......殺したけれど、余りに失ったものが多すぎる。)


あの人の眼は何処か寂しくもあり、何処か希望へとすがる。そんな情景を瞳には写していた。


「一体どれ程の覚悟と罪を背負いながらあの人は........生きているんだ。」


許してはいけないのにあの人についていけと心が語り掛けてくる。


(戦士としての覚悟がこの場にいる誰よりも上だった。世界平和などという戯れ言を本気であの人は語っている。嘘ではなく本心から。)


手汗が凄い。十解はやはり雲の上の存在だった。ああいう人らが世界を変えていくのだと無能な俺でも理解できる程に。

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