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参加する者達

ツリ目の桜髪の女は自宅の庭で剣を振るっていた。元アルフヘイム軍の兵士であり、神聖国との戦争で運良く生き延びた女戦士である。


(私の覇道を邪魔した神聖国が許せないッ!!)


剣を振るう力が上がる。


「私がッ!フレイヤとッ!!フレイをッ!!倒そうと思ってたのにぃ!!!」


神聖国に易々と負け、国名を奪われた。数世紀と暴君を振るった我が儘兄妹の最後にしては呆気ないものだ。


「ヴァナヘイムは私のものになるはずだったのぃ!!クソォ!!!!」


剣を投げ捨て、椅子へと座り休息を取る。


(歴史に名を刻む筈だったのに........)


ヴァナヘイムの兵として着々と力を付け、あの兄妹を大衆の面前でボコボコにし、暴君の世代を終わらせ新生ヴァナヘイム王として国を再建しようと計画していた。けれど神聖国の侵略により全てが無に期した。


「..........私はこれからどうすればいいの?」


野望を失い、イライラも発散出来ない。何か生きる気力が欲しい。


『結婚すればいいじゃないの。』『いい人を紹介しよう。』『お前もいい年なんだ、籍を入れなさい。』『婚期は逃したくないだろう?』『もう子供じゃないんだから現実を見なさい。』


そう言う事じゃないんだ。突き刺さる親族からの言葉に私は逃げるように実家を出た。今は貯金を切り崩しながら貸家で暮らしている。


(一応、職は神聖国軍に入隊申請書を提出したから受かるまでの少しの辛抱だけど........)


このまま私にはスポットライトが当てられず、活躍の機会もないまま人生を一般兵として終えて行くと言うの........給料はかなりいいけれど。



【この大会で優勝した者には十解の地位を約束しよう。力に自慢のあるもの。知恵に自信のあるもの。技を極めたもの。どのようなものであれ歓迎しよう。ヴァナヘイムの信条は己の力で頂きを目指す、だったよね。ならば今こそ、己の力を証明して欲しい。】



ヴァナヘイム中に流れるルーン放送。それを聞いていた私は笑っていた。それも過去一に。こんな嬉しい吉報があるだろうか。


「この大会で優勝をすれば........ふふふ」

凄い。凄すぎる。世界蛇を打ち倒し、四大国を制圧し、ヴァルハラ大陸を統一した神聖国。それを可能としたのが最強と名高い戦士団『十解(フィンブルの冬)』の存在だ。


「ヴァルハラ大陸を支配し、統制しているのは十解に他ならない。その席に座れる名誉をこの大会優勝者は得られる。」


十解となれば全てを手に入れられる。自分の領地、軍団、全てが思いのままに動かせる。


「........そう、そうよ!この時を持っていたのよ、私は!!!」


装備を纏め、身支度をする。


(この大会こそが私の人生のターニングポイント.........絶対に勝ってやるんだからぁ!)











「起きろ、クソ兄貴!」


_____________自慢の妹に叩き起こされる。最高に可愛い我が妹だ。


「起きてたよ、妹ちゃん。そら、おはようのちゅー?してくれないのー?ちゅー」

「マジでキモいんだけど......早く顔洗って下りてきてくんない。朝ごはん冷めちゃうんだけど。」


口は悪いがとても出来た妹だ。世界蛇の出現で母を失い、神聖国との戦争で父を失った。


(にも関わらず弱音を吐かないし、常に前を向いて歩いている。)


だからこそ、心配になる。常に気を張り、無理をさせていると。


(まぁ、俺が元々引きこもりのせいってのもあるんだけど......)


兄の情けない姿を見てきた妹は自分がしっかりしなければと気を引き締めているのだ。


「なにしてんだよ、おれは.......クソ」


神聖国との戦争直前に親父に妹を託された。


【あの子はまだ幼い.........お前が守ってやれ。】


ニートの俺に何が出来るのだと心の中で親父に毒を吐いていた。けれど戦争が始まり、周囲の人間が死んでいく現実を見せられて俺が妹を守らなければならないんだと再確認させられる。


「兄貴......うぅ......」


妹の怯える姿はもう見たくない。妹の泣く姿などもっと見たくない。


(俺がもっと強くなんねぇとだめなんだ。)


終戦後、ヴァナヘイムは衰退し、神聖国指導の下、復旧作業が開始される。


「神聖国軍......君も戦士にならないか、ねぇ?」


その間、ヴァナヘイム人である俺や妹も街の修復作業に精を出していたのだが、街が元通りになれば職を探さなければならない。


(ヴァナヘイム人だってのに剣なんて持った事ねぇし働いたことすらねぇぞ......)


街中には神聖国軍入隊の募集の貼り紙や、神聖国に仕えようという神聖国王崇拝者達が街中を往来する。


「入隊申請するしかねぇ......給金の羽振りもいい。仕事なんてしたことねぇーけど、地べたはって頭下げてでも働いてやる。そんで金を稼いで妹に毎日上手い飯を食わせてやるんだ!」


以前見たくニートとして過ごしていくわけにも行かない。妹の為には働らかなくてはならないのだ。


「..........合格、通知。」

入隊申請書を提出してから二日後の話である。家に届いたのは一つの封筒と大きな箱だった。


「神聖国の紋章が刺繍された軍服、そして紋章が刻まれた軍刀。」


正直に言うとめちゃくちゃ格好いい。生地も良い素材を使っている。


(ん.........封筒の中に手紙が入っているな。)


手紙を開封してみれば『明朝、ヴァナヘイム城に集合されたし。以上』とだけ、書き記されていた。


「晴れて神聖国軍人となった訳だが.......やっぱり働きたくねぇなぁ。」


働きたくない。けれど妹の為には働らかなくてはならない。せめて彼女が成人するまでは我慢しなければ。翌日の早朝、身嗜みを整え軍服を着用した俺だが、家を出る前に妹に似合っていないと笑われた。



「_______僕の名前はハーラル。ハーラル•ヴェストフォル。十解の一人であり君達の上司となる男だ。この管轄は行政となる。戦闘を担当したければ管轄の移動志願書を提出してくれ。」



隊列を組み、壇上に立つ十解様の話に耳を傾ける。元ヴェストフォルの王子であり、ヴェストフォル国最後の生き残り。現在のダーインスレイヴの担い手だと聞く。


(ダーインスレイヴの能力は知ってる。)


魔剣でも最悪の部類に入る強力な能力を待ち合わせている。


(とはいえニート時代に書物を読み漁っていたから宝物の類はほぼ看破できるし対策も可能なんだよなー。)


これも運命か.........。


「______________親父を殺した相手。」


ハーラル•ヴェストフォルの傘下に入る事になるとはな。

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