道化vs聖女
「_____________廉太郎、起きろ。」
水を掛けられ、目を覚ます。そして周囲を見渡せば美しかった神聖国トゥーレの姿は荒れ果てたものとなっていた。即座に立ち上がり、塔へと身体を向ける。
「スキールニル.........一体どうなってる?」
意識を失っている間に余りに多くの事が起き過ぎている。特に塔の最上階は完全に破壊され、空間に亀裂が出来ている。その為か塔周辺の空が歪んで見えるのだ。
「クラキ国最大の敵、いいや、この物語、本来の主人公ブリュンヒルデと物語のラスボスでもあるロキが最終決戦をしているのさ。」
ブリュンヒルデに意識を削がれてから、それ程時間は立っていない。にも関わらずスキールニルは重症にも近い怪我を負っていた。ロキも恐らくブリュンヒルデとの戦闘で軽傷とは言えない傷を負っているだろう。
(けれど、俺を戦闘の余波に巻き込まれないように塔から脱出させた。それも最も嫌悪をするスキールニルに任せて。)
拳を強く握り締める。
「ロキは.........勝てそうだったか?」
スキールニルはジークフリートへと実直な私見を返す。
「勝てないな。聖女の実力は原作以上の成長を遂げていた。最早、勇者に近しい化物だ。ただ......あの道化師は最期に覚醒能力以上の出力を命の輝きを使うことで行使して見せた。あの歪みを見れば理解出来るだろうが、文字通りロキ•ウートガルザは世界を騙し、聖女を仕留めようとしている。」
精神支配による攻撃が聖女本人に通じなかった。ならば世界側を騙し無理矢理と幻想を見せればいい。
(それは覚醒能力の範疇を大きく越えている........ロキ、お前はこの戦いで死ぬつもりか?)
命を糧にした覚醒能力の上限越えは使用者の寿命を大きく蝕む。ロキはその事実に気づいている筈だ。過去の例としてスケッゴルド、カーラが命をとして強大な力を一時的に手にしているが、最期には命の輝きを失っている。
「___________はああああああああああ!!!!!」
ロキによる一太刀がブリュンヒルデの首を裂く。だが、完全に殺しきるには傷が浅い。
「ッ、このおおおおおお!!!」
ブリュンヒルデの聖光爆発により、ロキは吹き飛ばされる。
「がっ........はぁ........あはっ、」
服装は破け、肌は爆発により焼け爛れる。
(.............ジークフリート、)
ロキは地面に手をつけ立ち上がる。
「ッ、無駄な足掻きして........早く死んでよ、ロキくぅん!!」
ブリュンヒルデに浴びせた一太刀は回復していない。聖女もまた限界に近いことが伺える。息は上がり、首を手で抑える。何よりも聖光爆発の威力が落ちている事が何よりの証拠だ。
(こっちの台詞だ、)
ロキは残りの武装へと目を向ける。
(曲剣一本、短剣二丁、麻酔針と毒針は砕けて仕様不可。ルーン魔術もこの状態では使えない。)
短剣による投擲で心臓または眉間を狙い聖女を始末する。曲剣を振るう腕力はもうない。立っていることすら限界に近い。
「世界が平常に戻り始めている......へへ、ロキくんの限界が近いって事だよね!!」
ブリュンヒルデの魔力は空に近づいている。先ほどまでの猛威は振るえないが、弱りきった道化師一人潰すことなど容易であると目が語る。
(そうだ......警戒を解け。その隙がお前の最期だ。)
ロキはその場にて膝をつく。しかし、戦意は失っていない。
(死角から心臓へと短剣を投げる。そして弾かれた場合はその隙を狙い眉間へと短剣を突き刺す。)
聖女を油断させ、仕留める。その思考だけが道化師の頭に浮かぶ。
「あは♪戻ったぁ♪」
魔力切れに近い状態な為、尋常ではない汗を流すブリュンヒルデ。しかしロキの覚醒能力が解けたことで喜びが表情に出る。
「苦しまないように殺してあげるぅ♪」




