ロキは悪戯好きなエルフ
道化師が操る曲剣がブリュンヒルデの頬を切り裂く。
「っ、ロキ•ウートガルザッ!!!」
ブリュンヒルデは激昂とし拳をがむしゃらに振るっていた。けれど道化師にその単調な攻撃は当たらない。
(なんで当たらないのっ、聖光を十分に展開している筈なのにッ!)
道化師に翻弄される聖女。それにランドグリーズによる横やりも鬱陶しい。
(ブリュンヒルデの魔力はまだまだ満タン。)
道化師が何かしら、仕掛けを施して来ている。
(幻術には嵌まってない。この体を通してそれは実感出来る。だけど、何かがズレて来ている。)
ブリュンヒルデはランドグリーズへと視線を向ける。
(仲間とは言え、最も厄介なのは彼女のパリィ.......攻撃を弾かれたときの隙は物凄く痛い。特にこの二人に少しでも弱味を見せるのは良くない。)
特に変な違和感を感じ始めてから自身へのダメージが増えて来た。早急にランドグリーズを無力化し、道化師と英雄王に集中した方がいい。
「______________ごめんね、ランドグリーズちゃんっ!」
聖光の力を強め、一足の元、ランドグリーズへと近づき拳を穿つ。
「パリ「させないよ」」
パリィされることは理解している。故に振るった拳は大盾に当たる寸前で寸止めにし拳の内側に凝縮させた魔力を一気に解き放つ。
「_______________偽•螺旋空衝•玉」
元勇者だった男が使用した必殺の一撃。それを聖女は聖光と魔力を織り混ぜることで擬似的に再現する。
「があああああああああああ!!!!!」
螺旋空衝に呑まれ、ランドグリーズは塔の最上階から吹き飛ばされる。
(これで邪魔な横槍はいなくなった。)
両者を相手に時間を掛けすぎるのは愚策だ。時間を与えれば与える程、目の前の二人は狡猾な策を用意してくる。
「___________潰す。」
簡単には殺させてくれない。それは理解している。だから手数で押しきるしかない。
(...........勇者を相手取った方がまだマシだと思えるくらいに本当に厄介な女だ。)
ロキは聖女の攻撃を紙一重に避け続け、曲剣による反撃を試みる。
(__________聖女の装甲を崩しきれない、か。)
聖女への攻撃が通りづらい。正確にはほぼかすり傷程度にしか攻撃を与えられていない。
(かすり傷は与えられる。だけど、直ぐに自動回復で傷は癒え万全の状態へと回帰する。打つ手がない。)
ロキは思考を張り巡らせる。
(聖女本体を幻覚に落とすことは出来ない。あの目映い聖光が精神支配を遮断しているから、聖女本体を幻覚に落とせないんだ。)
けれど、抜け道はある。
「僕の寿命を削れば___________」
___________『世界』を騙せる。聖女ではなく世界そのものを騙そうじゃないか。
(覚醒能力以上の出力を出すには己の命を糧にする必要がある。)
カーラやスケッゴルドが見せた奇跡にも等しい戦士の輝き。その輝きを再現するは命を卓上に乗せなければならない。
「聖女、君の世界は裏返る。」
ロキは身体に広がる激痛を抑えながらも覚醒能力を世界へと行使する。
(寿命を大幅にくれてあげるよ、聖女。ジークフリートと同じ人並みの寿命があれば僕は十分だ。)
聖女の目に映る世界が反転する。
「な、に!?」
視界が裏返り、重力に引っ張られるように地面へと落下する。そして身体を強く打ち付ける聖女。
「がはっ、」
聖女は痛みに耐え、即座に立ち上がろうとするがロキによる鋭い蹴りが顔面へと入り、そのまま壁際まで吹き飛ばされる。
(.........一体、どうなっているの?)
聖女が見える世界が、舞台が全て歪な形へと変化していく。
「お、おい、道化師!!!」
スキールニルもまたロキの能力に当てられ、その場で立つことすら困難な状態にいた。
「スキールニル.......ジークフリートを抱えてトゥーレの聖塔から離脱するんだ。僕自身、この能力を御しきる自信がない。」
膝を着き、荒い呼吸を見せるロキ。スキールニルは即座に魔力糸を使いジークフリートを掴み寄せる。
「___________了解した。ただ忘れるな。ここが死に場所でないことを。ジークフリートにはお前の力がまだ必要だ。」
英雄王の言葉を聞き、道化師は鼻で笑う。そして道化師の仮面を異空間から取り出し装着する。
「僕を誰だと思っているんだい?」
道化師は本気を出す際に仮面を付ける。そして聖女を屠る為に力を最大限に解放する。
「______________僕は【ロキ】。『道化師』の職業を選定されたちょーと悪戯づきなエルフさ。」




