剣帝、参上
「___________勇者なのだから。」
完全に復活したシグルドはトゥーレの塔へと顔を上げる。
「ジークフリート.......我が弟よ。」
シグルドは魔剣を強く握り締める。そして最後の肉親であるジークフリートを連れ戻す為に塔へと向かおうとする。
「あれれ~勇者様は何処に向かおうとしてるのかにゃあ?」
双剣を扱う翠色髪の青年が勇者の行く手を阻む。勇者はギリっと歯軋りをし、魔剣を垂直に構えた。
「___________剣帝。君ごときが私を止められると思っているのか。」
ベルンは嗤う。
「その驕りが命取りになるよ、勇者ちゃん♪」
「クラキ国は陥落した。後は王の身柄を拘束し、民衆のもと処刑するだけだ。」
グローアはクリームヒルトへとそう告げる。
「そうか。ならば私も同行しよう。」
クリームヒルトは「重力制御」と言う特性から擬似的にクラキ国へ繋がるポータル(ルーン魔術)を抉じ開け、クラキ国側に足を踏み入れた。そしてベルンを援軍としてトゥーレへと送り戻し、グローアの補助に来たのである。
「お前は戻らなくて良いのか?」
ジークフリートを一番と心配しているのはクリームヒルトである筈。
「良い。ジークフリートの側目は英雄王と道化師がいる。それに剣帝を送り戻した。成熟したあの者ならば鑑定士の無念を払えるだろうよ。」
その言葉を聞いたグローアは眉間に皺ができる。
「あのエイル•ワルキューレが敗北したのか?」
「さあな。だが、可能性が無いわけじゃない。相手は七英雄が一人「勇者」。一騎当千の英雄だ。そして何よりもネーデルラント家の者。珍妙な装備、宝物をいくつも保有している。」
グローアはジークフリートの装備「エギルの兜」を思い出し納得する。だが、腑に落ちない事が一つだけある。
「お前..........まさか?」
目の前にいる女はネーデルラント家と婚約を結んでいた過去がある。そしてそれが意味するのは勇者が保有する宝物の一部を知り得ていた事実なのだ。
(もしその宝物の一部が戦況を覆す最悪のアイテムであったなら、エイル•ワルキューレは勇者との戦闘で戦死する。)
クリームヒルトは頬を上げ、悪女とした表情を見せる。
「さぁ、お前が何を言っているのか理解が出来んな冒険王。」
グローアを通り過ぎ、先を歩くクリームヒルト。
(恐ろしい女だ。神聖国を見ていない。彼奴の頭にあるのは聖女と同じ..........ジークフリート、お前だけのようだぞ。)
その背を見ながら畏怖を感じるグローア。だが面白いと彼女の後を追うのだった。




