越えなければならない
(___________ッ)
一撃一撃が重く鋭い。一瞬でも気を抜けば魔剣の餌食になる。だからより集中力を高め、鑑定士としての深度を高めなければならない。
(エイル•ワルキューレ、私に比類し得る女戦士。)
戦闘職に置いて最上位に君臨する【勇者】。それに並び立っている。本来であればあり得ない現実だ。だが、目の前の女傑はそれを現実のものとしている。
「いい、良いぞ......はははッ!!!」
戦闘狂いの勇者は歓喜とした様子で鑑定士と切り結ぶ。
(そうだ。その調子だ、エイル•ワルキューレ。私を倒し、ジークフリートを正式のもと娶りたいだろう。ならばその全ての執念を私にぶつけろ。さすればその刃はこの首に届くやも知れぬぞ。)
魔剣を振り上げ、エイルとの距離を開ける。
(___________消耗が激しい。早期に決着をつけなければ、敗北するのは此方だ。)
鑑定士としての覚醒能力を常時発動し続けている為、勇者以上に消耗が激しい。かといって覚醒能力を解けば、勇者は覚醒能力によりその力を何十倍にも増幅させ、牽き殺されてしまう。
「__________なんだ、仕掛けて来ないのか?」
目の前にいる勇者は憎たらしい微笑を浮かべ、今か今かと戦闘の続きを求めている。
「っ、いい加減に私の前から消え失せろッ!!!!」
エイル•ワルキューレは勇者の元へと踏み込み、腹部へと鋭い一撃を叩き込む。
「ぐぶぁっ、」
勇者は血を吐き出し、意識が飛んだ。
(私が勝ちますッ、シグルド•ネーデルラント_______)
腹部を貫通するつもりで打ち放った拳ではあるが、勇者なだけあって堅牢な肉体だ。だが、問題はない。
(___________後は首をへし折り、戦いに終止符を。)
シグルドの胸ぐらを掴み上げ、手刀で首をへし折ろうと腕を振るう。
「_______________グラム=バルムンク」
手刀が首へと接触する寸前、エイルの右腕が切り飛ばされる。
「ぐっ、バカなッ」
悲痛な表情を見せるエイル。即座に魔剣の射程範囲から抜け出そうと動き出す。
「戦いとは常に非常かつ迅速でなければならない。爪が甘かったな_____________」
だが残った左腕を捕まれ、引き寄せられる。
「_______________グラム=バルムンク」
そして勇者は再び魔剣の解放を口にするのだ。
「___________ロキくんも英雄王も大したことないんだね。正直に言うとがっかりかも♪」
仰向けに倒れるロキの身体に足を置き、スキールニルと対峙する聖女ブリュンヒルデ。
(この女........)
強すぎる。この世界に置いて主人公の格を与えられた登場人物。スキールニルもまた重傷を負っており、このまま戦い続ければ敗北することは目に見えていた。
「なんだか下の階層の皆も静かになったことだし、こっちもそろそろ決着をつけよっか♪」
両拳をバチんと打ち付け、聖光を雷のように鳴り響かせる。
「あぁ、ジークフリートが起きる前に決着をつけよう。だが、その前に______」
スキールニルは魔力糸で聖女の足場を崩し、一階層下へと落とす。
(__________世話を焼かせてくれるな。)
そしてロキを回収し、ルーン魔術で回復を掛ける。今は彼女に打ち勝つために知恵が必要だ。
「目を覚ませ、道化師。眠っている暇はない。」
ロキはパチリと目を開き、即座に立ち上がる。
「........礼は言わないよ。」
ツンとした様子のロキにスキールニルは鼻で笑う。そして聖女が落ちたであろう大穴へと二人は視線を向けるのだ。




