覇王vs聖者
スノッリは己の職業適正が【宰相】であることを誇りであると同時に一戦士になれないことを心の中で嘆いていた。
(騎士や戦士、なんでもいい.....男らしく剣を振るい武勇を馳せる英雄であれたならブリュンヒルデを虜に出来たかもしれない。)
だが現実は国の政治を担う職業であった。剣ではなく脳で覇道を為せば良いと父上は言う。その言葉に従い常に自分は国の情勢を見定め、どう動けば経済が潤うのかを試行錯誤した。
(.........そのようなつまらない男に女は惚れなどしない。)
だが挑み続けなければ。惚れなくてもいいなんて言わない。俺の努力や情熱を君に伝えたい。それ程までに俺はブリュンヒルデという女性に惚れ込んでいた。
「がは.............無念.........よな....」
視界が暗い。何も見えない。先程まで感じていた痛みが一切感じない。
(ベルン..........俺はブリュンヒルデの為に何かを成せただろうか__________)
スノッリは息絶える。その姿を見届けたクリームヒルトはマントを羽ばたかせ、背を向ける。そして倒れているであろうフレイヤを一瞥するが、そのまま通り過ぎ、残ったクラキ兵を殲滅するために歩き出す。
「「はあああああああああああああああ!!!!」」
勇者と鑑定士の攻防は激しさを増していた。
(圧倒的闘気、そして互いから隠せないほどの殺意が周囲へと広がる。エイル•ワルキューレ、君は鑑定士でありながら七英雄の一人、勇者と渡り会う異端者。一体どれだけの研鑽を積めばそれ程までに成長できる。)
勇者と鑑定士の戦闘を目にフロールフは畏怖を感じる。
「お前は見ているだけか、フロールフ?」
突然と話を掛けられる。フロールフは剣を抜刀しようとするが、声を掛けた人物がクリームヒルトであることを確認すると剣を鞘へと納めた。
「クリームヒルト.........そうか。君はジークフリートといたのか。」
生きていてくれたことにほっとした様子のフロールフの表情を見て、クリームヒルトは目を瞑り告げる。
「.......友としての最後の情けだ。聖女ブリュンヒルデの事は忘れ、戦場を去れ。」
クリームヒルトは目を開き、フロールフへ戦場から立ち去れと言う。
「断るよ。僕は王子として、七英雄の一人としてこの戦場にいる。何よりもブリュンヒルデがそれを望んでいる。心配してくれたことには感謝する。だけど、僕はヴァルハラに生まれた戦士。戦いの中で僕は僕の生きざまを示さねば七英雄として生まれた意味がない。この命に代えてでもジークフリートだけは冥府へと連れていく。」
クリームヒルトは細剣を抜刀し、フロールフへと向ける。
「ならば私たちは敵だ。ジークフリートの前に立ち塞がるというのならば剣を抜け。正々堂々とお前を殺し、神聖国を絶対的な国家とする。」
フロールフは言われるまでもないと剣を抜き、両手で構える。
(.......状態異常を無力化する事で重力による攻撃は防げる。そして、同時に相手が重力支配で浮遊したり、己にバフを掛けた場合も状態異常として強制解除は出来る。ただ、彼女が物や地形に対し、重力制御を使用した場合は防ぎ用がない。)
気付かれる前に決着をつけなければならない。それまでは対等な剣術による肉弾戦となる。
「___________逝くぞ、フロールフ。」
上段から振り下ろされる細剣。それを剣で受け流し首へと刃先を持って行く。クリームヒルトはその攻撃をしゃがむ事で避ける。そして姿勢を落としたまま足蹴りでフロールフの姿勢を崩そうとするが、フロールフは後方へと下がることで足蹴りを上手く避けたのだ。
「ほぉ、腕を上げたな。」
感心した様子のクリームヒルトにイラつきを感じるフロールフ。
「昔のように弟扱いするなッ!」
一人前の男となるべく鍛練をつんだ。君に認められる為に修練をしたんだ。
(僕は僕の力で君を打ち倒し、過去を乗り越える。)
泣き虫な自分を常に先頭を歩き導いてくれた憧れの人。友であり姉のような存在の彼女に頭が上がらない。
「変わらんさ。羨望の眼差しが拭いきれん時点でな。」
違う。今はもう違う。彼女は過去の亡霊だ。
(ネーデルラント家との邂逅を得てから君は変わってしまった..........そして僕もブリュンヒルデに出会ったことで剣を迷うことなく振れるようになった。)
目の前の女を消さなければ、前進が出来ない。足を踏み出す事が出来ない。
「_________漸くその気になったか。」
細剣へと力を込め、力強く振り下ろす。ガキンと鉄と鉄がぶつかる音が鳴り響く。
「余裕でいるといい。僕は君の驕りを打ち砕き、未来へと進む。」
フロールフはクリームヒルトの細剣を弾き飛ばす。クリームヒルトは重力制御で後部へと回避行動に移ろうとするが。
「_______させないッ!!!」
聖者の覚醒能力を発動。状態異常の回復、又は解除を可能とする。
(重力制御が解かれっ_________)
剣の刃先が腹部へと突き刺さる。
「________________なっ、んで」
刃先が少し肌へと刺さったが完全には貫かなかった。
「ドワーフの鎧は機能していたと言う訳だ。」
十解の為に作り上げた『透明の鎧』がフロールフの一撃を防いだのである。
「フロールフ、お前の攻撃は一流の戦士と比べると凡庸だ。この鎧を貫けない事が何より物語っている。」
フロールフの腹部を殴り付け、右手で平手打ちを決める。
「がはっ、」
(ドワーフの......鎧、)
本来であれば小人族は信頼や友好関係にある王族になどにしか武器や武具を贈呈しない。彼らの作る武具はヴァルハラに置いて最高峰の代物である。




