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聖女は勇者に比類する実力を持つ

「寝返ったんじゃない。敗戦して帰属国になったの。クラキ国以外の国は全て神聖国側に白旗を上げたわ。」


ヴァルキリーの力は対戦する相手の十倍の力を当事者に与える壊れ性能。集団戦の場合、その場で敵対する相手の中で最も戦闘力のある者を基準とする。


「彼らの中にはヴァナヘイムの国民だったものもいる。神聖国に家族を殺され、恨みを持つものは大勢といるんだ。そして、君の兄であるフレイも神聖国に倒されたと聞く。その復讐をしたいとは考えないのか。」

「ヴァナヘイムの信条は大昔から変わらない。『力こそ全て』。兄は負け、死んだ。そして私も本気を出してやられた。だから従う。単純明快じゃない。力関係とはそう言うものよ。そしてそのヴァナヘイムの意思すらも忘れてクラキ国如きに加担するような愚か者は私の国民じゃないの。」


剣を天に掲げクラキ国の兵団へと振り落ろす。フレイヤの振るった剣は剣圧だけで兵団を二つへと割った。


「天罰を与えて上げる。」


出力が高い理由は一重に勇者の存在にある。戦乙女の圧倒的力を目に勇者はニヤリと頬を吊り上げる。


「君ならば、私の相手になりそうだ。」


勇者の魔剣がフレイヤの頭部目掛け振り下ろされる。だが、フレイヤは目にも見えない速度で勇者の攻撃を通り過ぎ、エイルの側へと羽ばたく。

「生徒会長..........いえ、勇者シグルド。」


エイルは籠手を装備し、戦闘の構えを取る。


「貴方は私が倒すべき指標であり、目標。約束通り、貴方を打ち倒し、ジークフリート様の寵愛を完全なものとします。」

「って事だから、他の有象無象はこのフレイヤちゃんが直々にお相手して上げる。」


かつて約束した盟約を果たす。その為だけに力を追い求めて来たのだ。エイルはシグルドへと向け、駆け出す。




「_____________始まったよ、ジークフリート。」




塔の最上階にすら届く激しい戦闘音。ロキとスキールニルはジークフリートの左右にて防備を固める。いついかなる奇襲を受けようとジークフリートだけには危害が及ばないようにと。


「ジークフリート、私は下の階層に行く。お前は決してこの場を動くな。そして貴様達衛兵は絶対にジークフリートを守り抜け。もし我が伴侶に傷でもついてみろ_______貴様達を即刻皆殺しにしてくれる。」


クリームヒルトは最上階にある王の間の巨扉を重力で開き、螺旋階段を下りていく。


「ジークフリートはモテモテだな。」

「お前さんの容姿を貰ったおかげでな。」


スキールニルはニヤニヤとした様子でジークフリートの頬をつつく。ジークフリートは鬱陶しそうにそれを払い、視線をクリームヒルトが開けた巨扉へと向ける。


(嫌な空気を感じるな.......)


違和感を直感で感じる。寒気とでもいうのか。



「........それで隠れているつもりかい?」



ロキは眉間に皺を寄せ、ジークフリートの前へと守るように出る。


「あは、あっちゃーばれちゃったかー」


何事かと構えていると、空間にヒビが入り中から元気よく飛び出てくる『元凶』。能天気な高い声を上げながら舐めるようにジークフリートへと目を向ける。


「この宝具、結構使えると思ったんだけどなぁ......クリームヒルトには通じたけど道化師にはやっぱりバレちゃうよね。」


クリームヒルトは彼女の存在に気づかないままに通り過ぎたのだろう。


(あれが七英雄の一角、聖女。ジークフリートがスローライフを掲げる要因を作った人物。)


スキールニルはジークフリートに耳打ちをする。


「あれが七英雄の一人、聖女で間違いないんだな。」


この世界の主人公がブリュンヒルデであることはスキールニルも認知しれいる。だが、あれ程までの異質なオーラを放つ存在であることは知り得ていなかった。


「あぁ......油断するな。あの女はいつも奇想天外な行動をとる。無策で俺達の前に立ちはだかる訳がないんだ。」


聖女はニヤニヤと口元を歪め、頬を紅くする。


「ふふふ、ジークくんはやっぱりブリュンの事を理解してくれている。」


ジークフリートは双槍をクロスさせ、ブリュンヒルデとの戦いに備える。


「久しぶりに会えたのにそれは酷いと思うんだ、ジークくん。十解にも誘ってくれないし、神聖国の一員にも入れてくれなかった。」


尋常ではない憎悪と怒りがブリュンヒルデから溢れだす。


(こいつ......本当にブリュンヒルデか?)


気配や、佇まい、全てに置いて過去のブリュンヒルデを大きく上回る貫禄を見せる。まるで、冥界の女王や世界蛇の核と対峙した時のような感覚。


「ねぇ........邪魔だよね。」


スキールニルとロキを指差し、殺意をぶつけるブリュンヒルデ。両者は冷や汗を流しているものの、一瞬の隙も見せないように最大限の警戒を敷く。


「今、ブリュンはジークくんと二人でお話したいのに可笑しいと思わないのかな。」


目映い程の聖光を全身に展開させる。


(一聖女の出力じゃない..........)


ロキは目の前の聖女は聖女の領域を逸脱した何者かであることを本能で感じとる。


「幻想は夢想、夢想は武装」

(........彼女を幻術に閉じ込め、即殺する。)


ブリュンヒルデを無力化するために道化師の覚醒能力を発動させる。



「___________あは♪」



だが、ブリュンヒルデは幻術に囚われない。寧ろ幻術に嵌めようとしたことを悟られたのである。


「ダメだよ、ロキくん。ブリュンを倒したいなら正攻法で倒さないと。そんな小細工が通じるのは一流まで。超一流の私には通じないもん♪」


聖光を全身に纏うことで精神支配の能力を防いだのである。聖者にもっとも近い性質の聖女だからこそ出来る芸当だ。


(ジークくんと道化師の対策は万全。ブリュンヒルデは負けない。だけど、あのアルフヘイムの王が厄介だな。)


余裕然とした様子で表情は崩さない。最も警戒すべき相手がスキールニルであることを視野に入れ、拳に力をいれる。


「________________先手必勝ッ!いくよぉ!!」


ドンと地面を蹴り上げ、右腕による神速の右ストレートをスキールニルの顔面目掛け放つ。


(恐ろしい速度だな。それに風圧、いや拳圧と呼ぶべきか....その影響で身体が動かせないと来た。)


完全に殺しに来ている。スキールニルは姿勢を低くする。


「________危ないな。」

(____________心眼。)


前方へと足を踏み出す事で拳の一撃を避ける。


(避けられた.......あり得ない。必殺の一撃なのに。だけど、まだ私の攻撃は終わっていない。)


聖光を周囲へと爆発させる。


(この主人公.....強いッ!!)


スキールニルは反射神経の覚醒能力を使用し、致命傷を避ける事に成功する。しかし爆発を直撃で食らった為、壁際まで吹き飛ぶことになる。


「君は避ける事に特化した職業を持っているんだね。強者向けの必殺技だったんだけど、その程度の傷で済まされちゃった。」


スキールニルは優しい笑みを浮かべながら立ち上がる。そして服についた埃を払い、中指と人差し指を上げるのだ。



「ッ!!?」



ブリュンヒルデの四肢が切り落とされる。


「これ以上抵抗するな。敗北を認めて軍下に下れ。そうすれば命までは奪わない。」


そして身体は地面へと叩きつけられ、ジークフリートにより拘束される。


「えへ、えへへ.......ジークくんに久しぶりにしゃわられちゃったぁ♡」


血を流しながらも痛みを感じている様子がない聖女。その姿に不気味さと違和感を感じるが、拘束の手は緩めない。


「狂人だな。」

「ジークくんが愛狂しいから.......だよ♡」


精神に異常をきたしている。この女はこの場で完全に始末しなければならない。


「これで終い「ジークフリートッ!!」


ジークフリートは槍を振り上げ、ブリュンヒルデへと止めを刺そうとする。だが、ロキにより止められる。


「...........本当にきしょいなぁ、道化師。せっかくジークくんと心中出来ると思ったのに。」


イラついた様子で立ち上がるブリュンヒルデ。正確には超速回復で切り飛ばされた手足を再生し、立ち上がったのだ。


「よいしょー♪」トン


そして即座にジークフリートの背後へと回り、首へとチョップを入れ、意識を刈り取る。


「「ジークフリート!!」」

「動くな。ジークくんをこの場で殺して自害してもいいんだぞ?」


叫ぶスキールニルとロキ。だが反対に落ち着いた様子のブリュンヒルデは優しくジークフリートを抱き止め、壁際へと寝かせる。


「________ブリュンヒルデに敗北はない。」


身に纏う聖光がバチバチと音を鳴らし、両拳を握る。


「邪魔な害虫を排除するまでは死んで上げない。今から見せるブリュンの戦う姿はジークくんには見せられない。だから、少しの間だけ眠ってて貰う。大丈夫、直ぐに決着はつくよ________」


ニヤリと頬を吊り上げ、スキールニルを見る。


「_____________だってもう小細工(魔力糸)なんか通じないんだもん♪」

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