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勝たなければならない

(この塔の最上階にジークくんがいることは知ってる。その為にここまで用意したんだ。)


ジークフリートを支配するには周りに群がる蝿が邪魔だ。


(クリームヒルトは生かして上げる。)


彼女とは敬遠の仲ではあるけれど、一種の友情のようなものが両者の間にはある。その為、命まではとらないと心の中で決めていた。


「だけど他の子達はだめ。」


しっかりと息の根を止めて、殺してあげないとジークフリートが解放されない。彼の尊厳と自由は彼女達に帰属しない。ブリュンヒルデにこそ彼の全ての権限があるべきなのだ。


「これはそう.........一種のお仕置きなの。犬がいけないことをしたら叱り、調教する。」


ジークフリートにはお仕置きが必要である。


「従順になるまで、ブリュンが愛してあげないとジークくんは前に進めない。」


抗うという思考が出来ない程の絶望と恐怖を植え付け、永劫の伴侶(奴隷)としなければならない。



「だからシグルド先輩、フロールフ先輩........必ず半殺しで生け捕りにしてくださいね♡」


光がない瞳。そして歪な笑みを浮かべる聖女にフロールフは頬を紅くし惚れ直す。


(あぁ、ブリュンヒルデ......なぜ君はそんなにも愛らしく可愛いのだろうか。他の男の事を好いていようと僕の君に対しての愛情は変わらない。その歪んだ愛を僕に向けて欲しい。)


フロールフは塔の最上へと顔を上げ、睨み付ける。


(生け捕りなんてしないよ__________)


ジークフリートは大罪人だ。クラキ国の王族として誅罰を下さなければならない。


(______________________絶対に殺す。)


その二人を背後から見守る最強の勇者シグルド。


(........ジークフリート以外を殺すことには同意だ。愚弟の行き過ぎた思想を正さなければならない。)


世界に改革は必要ない。現状で世界が回るのなら刺激を与えるな。静観しろ。クラキ王への忠誠心からお前の敵に回るのでない。ただ一人の家族としてお前には普通の人生を送って欲しかった。


「だが、道を踏み間違えたな。」


お前には私と共に世界樹の守り人として生きて貰う。


(安心していい。何人たりともお前には触れさせない。)


私がお前を守る。何も心配する必要はない。静寂が欲しいといつも嘆いていたな。


「私は兄であり、勇者だ。」


必ず、その願いを叶えてやる。世界征服などと馬鹿げた幻想は捨てろ。いいや、捨てさせる。そうしなければジークフリートはこの先の未来も戦うだけの生涯となってしまう。





「___________あんた達、邪魔なんだけど?」





ブリュンヒルデの軍勢の中央に流星が如き紅き稲妻が振り落とされる。その影響で多くのクラキ兵達は吹き飛ばされ、綺麗であった庭園の一部に大穴が出来る。


「........何者だ。」


土煙の中に見える人影。勇者はそれをいち早く察知し、抜剣すする。


「______________貴女が噂の勇者?」


舞っていた土煙が晴れる。そして稲妻が落ちた先に存在したのは両翼をバサリと広げクラキ兵の遺体に右足を置き、此方を嬉しそうに睨み付ける戦乙女の姿であった。


「君はヴァナヘイムの美姫、フレイヤ.......まさか、神聖国に寝返ったのかい?」


フロールフもまた剣を抜き、覚醒能力を発動させようと動きを見せる。


(僕の覚醒能力が発動しない。いや、そんな筈は..........いいや、一つだけ考えられる。)


フロールフは即座に塔側へと身体を向き直す。そして塔の入り口近くに門兵が如く立ち塞がる女傑を目視する。


「やはり君か_______________エイル•ワルキューレ。」



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