夢を見た
「はぁ......はぁ.......」
視界がままならない。呼吸が重い。身体の感覚が抜けていく。明確な死を感じる。カーラは胸を押さえ、ただその場に立ち尽くす。
「ジーク........フリー.........ト」
召喚した二体のハティへ魔帝を殺害するように命令を下した後は爆音だけが周囲から聞こえてくる。立っているだけで限界だった。
「............帰るんだ」
絶対にジークフリートの元に帰るんだ。その覚悟と意思だけが彼女の命をこの世へと繋ぎ止める。
『悩む必要なんてない。レディにはレディの魅力がある。例え他の者がカーラ嬢を認めなかろうと私だけは貴方を否定しない。』
男勝りを直せと周囲に叱られる毎日。うんざりだった。だから小さい頃、社交界でジークフリートに相談したんだ。
(ジークフリートだけは俺を俺だと言ってくれた。)
例えそれが社交辞令であろうと俺はその言葉で救われた。こんな男勝りな性格だけど、彼に恋ができてよかった。
「.........ジーク........フリート」
目の前にいる筈のない幼少の頃のジークフリートが優しい微笑を浮かべ、手を伸ばしている。
「田舎で.......へへ......」
ジークフリートへと手を伸ばす。そして、彼の手を掴んだ気がする。
「.............嬉しい.........」
田舎の参道を手を繋ぎながら談笑をする。そんなあり得たかもしれない未来を見ながらカーラは事切れる。
「_______________死んだか。」
ハティ二体の死骸が両脇に転がる。そしてその中心には体中の至るところを喰い千切られた魔帝が膝を着き、死を待っていた。
「....................」
(魔力で命を辛うじて繋いでいる状態だが、持って数十秒ってところだな。)
嬉しそうな表情で倒れる召喚士を目に魔帝は苦笑する。
(神聖国王の嫁になるとちんけな願望を口にしていて、結局は夢半ばで力尽きやがった。)
バカな女だ。惚れた男の為だけに力を使い、命を使い果たした。
(..........だが、嫌いじゃねぇ。)
一本筋の通った大馬鹿者に敬意を払い、俺も死んでやる。
「スキールニル........」
(...........俺が王だと認めた男よ。)
世界に光を照らせ。神聖国に敗北したとてお前はしぶとく生き残れ。そして最後にお前が全てを支配しろ。
「精々長生きすることだ........俺みたいにな...........」
____________魔帝は命を散らす。戦場に残ったのは激しい戦闘跡と満足とした表情でヴァルハラへと旅立った勇士らの亡骸だったと後の戦記で語られる。




