封じられた魔王
ハティ•ベイビーの群れを一斉に襲わせる。その間、カーラは上位のアングルボサの呪いを再度召喚せんと魔方陣を構築し始める。
(どんなに足掻こうと召喚士が召喚出来る上位の呪いは三日に一体だけだ。例え術者が優れていようとな。)
ハティ•ベイビー達を杭で刺し殺し、展開した魔方陣で死体を焼却する。
「______________遊びはここまでだ。」
ハティ•ベイビー全てを殲滅した魔帝。そして目の先には心臓を押さえながら、召喚陣へと手を当てるカーラの姿があった。
「負ける訳にはいかねぇんだよ.......俺はジークフリートの夢をッ」
________吐血。だが、血を吐き出しながらも魔力の供給を止めない。
(..........)
魔帝はカーラの痛々しい姿をただ黙視する。そして彼女の姿を過去の自分へと重ねるのだ。
『俺は負けねぇ........絶対に負けねぇ!!!』
魔王と恐れられた時代よりも更に昔の話だ。
『未熟者よな。』
オーディンの生まれ変わりと噂される賢者に戦いを挑み、完封なきまでにやられてしまう。
『魔術の才をむやみやたらとひけらかすな。努力せよ。精進せよ。お前の力は他を害すではなく、守る為にある。』
長々とあのじいさんに説教をされた光景を今でも思い出す。
『俺ン力は俺ンもンだ、クソジジイ!!』
『誰がクソジジイだ!!!』
魔帝に選ばれ尖っていた俺は敗北の味をこの時まで知らなかった。七英雄に選ばれる奴は大概己の力に自信過剰になり、
傍若無人になるか使命に縛られ、英雄然としたがる奴かの二つに別れる。そして俺は前者だった。
『俺は最強の魔術師。魔術の帝王を冠した職業適正を得てンだぁ。他者を見下し、力を誇示して何が悪い?』
賢者はあきれた様子で自分を見る。
『それが未熟であると何故気付かん。七英雄とは人類の希望そのものだ。人々が切望し、未来を託す勇者。我らが規律を守らずして誰が守る。大いなる力には大いなる責任が伴う。それが分からぬ程、お前は愚か者ではあるまい。』
『.......見返りも何もねぇーのにそんな聖人君子なこと出来るかよ。俺が助けを乞うた時に誰が手を差しのべてくれた。はっ!そんな奴、誰一人いなかったぜ。』
満身創痍でありながらも気合いで立ち上がる。そして血唾を吐き捨て、その場を歩き去る。賢者は引き留めようとするが、聞き入れず俺はただ前へと進んだ。
『弱者が虐げられる世の中なら、ひっくり返しゃあいい。』
魔帝、かつて魔王と恐れられた魔術の帝王。俺は大戦を引き起こし大陸を二つの勢力圏へと分割した。
『____________世の中を正す。』
力あるものが責任を問われると言うならば、その責任を俺が負う。例え、どんなにこの手を血で汚そうと。そして魔王と畏怖されるまでに俺は大陸に名を轟かせた。
『そこまでだ、堕ちた魔帝よッ!!』
だが勇者一行、いいや、二つの勢力が最後には手を合わせ俺を討ち倒しに来たのだ。五人の死骸どもが七人の英雄だった時代だ。彼奴らの後ろには多くの仲間もいる。多勢に無勢、魔帝は程なくして地面へ身体を沈めることになる。
『俺は負けねぇ........絶対に負けねぇ.........』ボソッ
俺の後ろには誰もいない。悪逆非道を貫いた結果がこれだ。全ての敵意は自分へと向けられた。責任も何もかも全てが。
『.......俺を封じてどうなる!!予言するぞ、愚かなる勇者ども!!!必ず俺のような者が遠くない未来に現れる!!絶対的な統治者が大陸には必要なんだ!!』
『例えそうだとしても、貴様は統治者にはなり得ない。』
無様なものをみる目で封印が施されていく。
『__________眠れ、悪逆帝王。貴様の野望はここまでだ。』




