ヴァナヘイムの美姫(首輪付き)と鑑定士
ヴァナヘイムが神聖国に落ちてから二日、国は何故か賑わっていた。
「神聖国王こそ、ヴァナヘイムの在り方を示している。」「ヴァナヘイムの真王に相応しい」「神聖国万歳\(^o^)/」
と国民達は称賛の声を上げていた。力こそが全ての流儀ゆえに力で屈服させられた国民は忠犬の様に大人しい。未だに騒がしくしているのは首輪を嵌められた狂犬くらいだろう。
「ガルルルルルルル......ワフン」
唸り声を上げる戦乙女。それを宥めるようにエイルはフレイヤの喉を撫でる。
「って違ぁああああああう!!!」ガル!
エイルの行動にフレイヤは爆発した。
「私を犬扱いしないで頂戴!それと気安く頭とか首とか背中とか触らないで!」
エイルへと噛みつくように大声を上げるフレイヤ。
「メッ!」
だが反対にエイルはフレイヤを躾のなっていない犬だと叱りつけた。叱りつけると言っても愛玩動物を教育するように優しく言い聞かせているだけなのだが。
「だ•か•らぁ!!それがイラつくって言ってんの!!!本当にアンタ、頭にウジでも沸いてるんじゃないの?」
フレイヤは地団駄を踏み、ジークフリートの元へと向かおうとする。だが、エイルは行かせまいとフレイヤの首輪に付けたリードを引っ張る。
「あぐっ、」
尻餅をつくフレイヤ。
「ああああああああもぅ!!!!!」
眉間に皺が寄る。もううんざりとした様子で大の字に寝転がる。
「..........ねぇ、お腹を擦るのやめてくれない?」
ここ二日間、フレイヤはずっとエイルに愛でられていた。隷属の首輪を嵌めた主人にはあれから会っていない。
「...........はぁ」
ヴァナヘイム神殿内では好きに動いていいとこの鑑定士の女は言った。だが、何処に行くにしてもついてくる。自由はない。仕舞いには首輪にリードをつけやがったのだ。
『エイル姉さん........あまりそう言う事はやめた方が』
リードを着けての散歩。鑑定士の仲間であり、十解の一人である召喚士にさえドン引かれている。私の感性が可笑しいのかと錯覚し初めていたが、可笑しいのはこの鑑定士の感性だった。
「楽しかったですね、フレイヤ。」
悪びれる様子も見せず純粋に散歩が楽しかったと言うこの狂人にフレイヤは寒気を感じる。
「私も是非、ジークフリート様に首輪をつけられ散歩に連れていって貰いたいものです。」
この鑑定士は狂信的にジークフリートと言う男を崇拝している。恐らく彼が命令すれば迷うことなく命さえも差し出す。
「ねぇ、放って置いてくれないかな。」
フレイヤはエイルへと問う。何故、四六時中一緒にいるのかと。就寝時も同じ床で寝ている現状は可笑しいと思う。
「___________ジークフリート様に貴方の面倒を見るようにと頼まれたのです。ならば全力を持って貴方の面倒を見る。それ以上でもそれ以下でもありません。」
そう淡々と言葉にする彼女にフレイヤは恐れを感じた。この鑑定士はどこかネジが外れている。その類いまれなる戦闘センスに美しい容姿。頭も回る。指揮官としても申し分ない働きをすることだろう。だが、何処か機械的なのだ。
「あんたの行動原理全てがジークフリート様中心ってこと。はっ、馬鹿らしい。自分ってもがないのかしら、あんた?」
全てがジークフリートの利に叶うように行動をしている。
「それの何処に問題が。私の人生はジークフリート様と共にあります。ジークフリート様がいなくなると言われるのであれば、私も冥界へと旅立ちます。そこに何の迷いも抵抗もありません。」




