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ブリュンヒルデ、動きます

ヴァナヘイム侵攻より一週間前、ブリュンヒルデはクラキ国の王都にいた。



「____________召集令を掛けてから既に14日も経つが、何か弁明はあるか?」



スノッリの実父である宰相が鋭い眼光で聖女を捉える。その隣に控えるはフロールフの父であるこの国の王、クラキ国王。


「..................」


聖女であるブリュンヒルデは顔色を変えず口を開く。


「七英雄としての務めを果たしておりました。世界蛇の出現は国に、大陸に大きな損害を与え、多くの民達を傷つけました。多くの者を癒し、手を差し伸べる事が【聖女】としての本来の務め。故に召集内容である国家間の戦争には賛同出来ません。」


ブリュンヒルデは先手を打つ。我が力は国の戦争に使われるものではないと先制するのだ。事実、大陸条約には【七英雄】の戦争使用は禁じられている。


「それは国家間の戦争に置いてだ、聖女。我らが相対するは純粋悪である侵略者。その侵略者の構成員には貴殿と同じ七英雄の一人も含まれている。」


元公爵令嬢クリームヒルトの事を指し、そう言っているのだろう。因みにではあるが、グンテル公爵領は世界蛇の出現により水底へと沈んでいる。もしも公爵家が健在であればクリームヒルトの件について責任問題を追及していたことだろう。


「_____________私に戦えと言うのですか?」


聖女は立ち上がり、クラキ王へと視線を向ける。周囲の者達は無礼だなんだと叫ぶが、既にクラキ王の信頼は平民、王都外の人間に取ってはないに等しいのだ。


「王命だ。」


ブリュンヒルデはため息を吐き出す。


「陛下、私の故郷であるバルドル領は世界蛇の出現と同時にアングルボサの呪いで溢れました。そして、多大な被害を被り多くの死者を出したのです。応援要請を幾度と申請したのですが、兵の一人すら派遣なさらなかった。」


殺気を増幅させ、周囲を威圧する。


「貴様ッ......一体どういうつもりだ!」


宰相は即座に兵達に指示を出し、聖女を包囲させる。


「聖女を嘗めんなっていってんだ!!」キッ


聖光の衝撃波で周囲の兵達を城壁まで吹き飛ばす。そして階段を上り、クラキ王の前へと立つ聖女。


「国の王ならば民へ手を差し伸べよ。国の王ならば民を導き救え。それが出来ぬのなら王冠を手放し、王位を捨てよ。覚悟なき者に国の長は務まらない。恥を知れ、国民の顔に泥を塗った無能な王よ。」


クラキ王の王冠を手で弾き、下段する。


「貴様ぁ!!バルドル領を人質にとっても良いのだぞ!!」


その無礼かつ打ち首刑にも等しい行為に激昂するクラキ王。その言葉を聞き、ブリュンヒルデは振り返る。そして拳を強く握りしめ階段を駆け上がるのだ。


「ならばこの場にいる全ての者を神聖国に虐殺される前に粛清してくれようか!!!」


聖女ブリュンヒルデが聖光を纏おうとしたその刹那、魔剣グラム=バルムンクがクラキ王とブリュンヒルデの間に振り下ろされる。


「____________そこまでにしてもらおう。」


最強の勇者シグルドが姿を現す。その後ろにはフロールフ、そしてスノッリの姿もあった。どうやら宰相が急ぎ、呼びに行ったらしい。頭がキレることだとブリュンヒルデは内心に思う。


「ブリュンヒルデ、落ち着いてくれ。君の怒りはごもっともだ。僕に出来る事があればいくらでも謝罪する。だけど今だけはどうか僕たちの味方でいてくれないか。」

「フロールフ先輩........」


膝をつき、頭を下げるフロールフにブリュンヒルデの敵意は消える。貴族社会が強く構築されるクラキ国に置いて王族の謝罪は大きな意味を持つ。


「バルドル領と同じくネーデルラント領の件も私は怒りを隠せずにいる。だが、止めなければならない。ジークフリートは暴走している。妹の死で歯止めが効かなくなっているんだ。」


シグルドはジークリンデの死がジークフリートの現在の行動理念となっていると考えていた。もっとも事実は【スローライフ計画】を送るという自分勝手な野望の為なのだが。


「勇者シグルドの言う通り、世界を統一する過程で更なる犠牲を生み出す。世界蛇の影響で既に人口は半減した。そして大国同士の戦争は遅かれ早かれ未来で起きただろう。だが、ジークフリートが引き起こそうとしている世界統一はそれ以上の規模で死者を産み出そうとしているんだ。」


スノッリがブリュンヒルデへと諭すように説明する。


「既にドワーフが支配する大国ニザヴェリルは落とされ、ヴァナヘイムが次の目標とされている。国が放った密偵の報告では英雄級の戦士が少なく見積もっても5人以上はいると報告が上がっている。」


ブリュンヒルデはスノッリの言葉を聞き、小さく頬をつり上げた。


(いいことを聞いた......次の標的はヴァナヘイム......ふふふ、そこに向かえばまたジークくんに会えるんだね.......)


ブリュンヒルデは表情を戻し、クラキ王へと告げる。


「謝罪はしません。先輩方の意思を汲み取りクラキ国側に今は協力させて頂きましょう。ですが、バルドル領地への支援が充分に行き届かない場合、私は国民の為に立ち上がらせて頂きます。」


ブリュンヒルデはそう言い残すと玉間を去るために歩き出す。


(ジークくんを早く見たいジークくんを早く見たいジークくんを早く見たいジークくんを早く見たいジークくんを早く見たい)


「ブリュンヒルデ!!何処に行くんだ!」


スノッリが声を上げる。


「決まっています。私自らが神聖国の悪行を監視し、後の決戦に備えるのです。」

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