ヴァナヘイム陥落
ヴァナヘイム陥落はヴァナヘイム神殿に白旗を掲げる事で終息する。血の気の多いヴァナヘイム人も王の両者が墜ちた事で戦意を大きく喪失する。そして武器を地に置き、投降した。
「____________さぁ、フレイヤ。君が君の国民にヴァナヘイムの【完全敗北を宣誓】するんだ。」
神殿から国民へと向け、ヴァナヘイムは神聖国の傘下に入ったことを宣誓させる。ニザヴェリルの時と同じように国の頭を一人生かす事で反骨の意思を下げる意図もある。ロキ曰く、人を掌握するには群衆の筆頭を支配し、統治させた方が上手く回ると言う。
「皆ぁ~聞いてー!」
フレイヤが国民へと向け話し始める。
「ヴァナヘイムはぁ神聖国に帰化しまーす!」
両手を広げ、国民へとヴァナヘイムが神聖国へ帰属したことを宣誓したのである。国民たちは暗いムードに包まれるが、ジークフリートが声を上げた。
「そう悲観するな、ヴァナヘイムの民達よ。この国は今より神聖国として大きく発展する。ニザヴェリルの民と協力し、平和の礎を作ろうではないか。」
ジークフリートに対し、殺意と憎悪の視線が注がれる。だが、ジークフリートはそれをものともせずに言葉を続けた。
「我ら神聖国がしている事はヴァナヘイムの仕来たりに沿っているだろう。力こそ全てを我らは体現したのだ。力があるからこそ彼女を我が手に納めた。」
「なっ、ちょっと.....//」
フレイヤの肩へと手を回し、頬をくいっと上げる。フレイヤはイヤっと小さい声を出し、生娘のように視線を逸らす。
「そして二つの大国を落とし、我が手中に納めたのだ。今一度言う_______________力こそが全てである。」
ヴァナヘイムの民達の目に光が宿る。まさにこの国の矜持そのものを侵略者である男が宣ったのだ。
「さぁ、問おう__________俺と共に世界を征服してくれるな?」
力こそが全て。敗者は強者に付き従うしか選択肢はない。故に国民が取る行動は一つ。頭を垂れ、膝をつくのだ。
「はぁあああああん..........ジークきゅん♡」
ヴァナヘイム陥落の宣誓を遠目の森から眺めるこの世界の主人公ことブリュンヒルデ。
「かっこよしゅぎる......ぺろぺろしたい........♡」
はぁはぁと卑しい吐息を吐き出し、ジークフリートの姿を傍観する。
「___________貴様はこんな場所で何をしている?」
怪しい気配を感じ、森まで足を伸ばしてみれば気色の悪い女が涎を垂らしながらえへえへとジークフリートの姿を傍観していた。
「げっ......クリームヒルト。邪魔しないでくれるかなぁ。今私、すっごく忙しんだけど。」
真顔になり、虫を払う様にしっしと手を振るう。
「邪な顔で鼻血を垂らし変態顔を晒す醜態女の何処が忙しいと言うのだ。」
ブリュンヒルデはこいつ、何も分かっていないなと言った表情でため息をつく。
「あのねぇ、ブリュンだってアンタみたいに【十解(フィンブルの冬)】になりたかったわよ.......でもジークくんからなーんのお誘いもなし!!それに世界蛇が出てきてからは完全放置なんだ!そもそもなんでアンタは十解入りしてんのよ!!どうみてもブリュン側でしょ、アンタは!」
「いや、そう私に言われても...........」
「だから決めたのよ!」
ブリュンヒルデは立ち上がり、クリームヒルトへと野望を告げる。
「ブリュンヒルデ自身がジークくんの最後の障害として立ちはだかる。」
目の奥に宿るどす黒い何かを感じ、クリームヒルトは一歩無意識的に下がった。
「それを聞いて易々と私がお前を生かすと思うか?」
そして警戒心を持ってブリュンヒルデと対峙する。
「うん、生かすよ。別にジークくんを本気で殺しに行くわけじゃないし。ブリュンにそんな事出来ないもん............でもね、ジークくんの記憶にブリュンヒルデという存在を強く刻み付ける事は出来る。ふふふ、安心して........どうせクラキ国が最後の標的なんでしょ。そこで今一度、ブリュンの存在を存分に思い出させて上げるからぁ。」
光のない瞳。病んだ表情でブリュンヒルデはそうクリームヒルトへ告げる。
「だから今はね、ジークくんの勇士を見させて頂戴。遠くから見るくらいならいいでしょ、クリームヒルト。自分は隣にずっといるんだから少しくらい融通してよ。」
ブリュンヒルデの頼みにクリームヒルトは目を瞑り、その場を去ることにする。
「ジークフリートが悲しむ事だけはしてくれるな。」
ブリュンヒルデはクリームヒルトの背をその姿が消えるまで見つめ続ける。
「............悲しんでくれるといいな。」




