激化する戦闘
「______________だからさぁ、本気出したげるッ!!!」
フレイヤは懐から指輪を出し、それを人差し指に嵌める。
「ッ!!」
(..........開錠の力が働かないッ?)
指輪を嵌めた途端、鑑定士としての覚醒能力、開錠がフレイヤに対して作用しなくなったのである。
「ふぐっ!!!!」
フレイヤによる渾身の一撃がエイルを捉える。だが、鑑定士としての感がエイルの身体を無意識的に動かし、回避に成功する。
「あら、避けられちゃった?」
フレイヤは戦乙女の外装に両翼の姿を見せる。夕日の淡い光が彼女を照らし、まるでヴァルハラから使者が舞い降りてきたかのように彼女を写し出していた。
「戦乙女.........それが貴方の職業適正ですか。」
戦士系統の職業適正に置いて最強各の一角を司る職業適正『戦乙女』。エイルは冷や汗を浮かべる。
「ご名答!戦乙女の覚醒能力は対峙する相手の『戦闘力』に比例して自身の出力を引き上げる!その数値は最大にして10倍!!どんなに相手が力を引き上げようともフレイヤは常に相手を上回れる。ふふ、怖い?悔しい?でもごめんね。手加減をしても羽虫のように潰してしまう頂上の職業適正なんだ。」
フレイヤは弁舌に覚醒能力を説明する。そして笑みを深め告げる。
「そ•れ•とぉ~♪この両翼は音速で移動可能ぉ♡」
フレイヤは愛おしそうに自分の翼へと触れる。そして目を細め、エイルを見つめた。
「だからね____________簡単に死なないでね?」
その言葉を言い終えると同時にエイルの左腕が消失する。そして遅れて来たように暴風がエイルへと直撃し、後方へと数歩下がる。
「うぐっ」
(反応が.......)
視界にいた筈のフレイヤの姿も消えた。
「さっきは避けたのに今度は避けられないんだねぇ♡」
背後から声が聞こえる。エイルは即座に止血をし、鑑定士の集中力を最大にまで引き上げ、フレイヤへと身体を向ける。
「............避けるまでもない脆弱な攻撃だったと判断しただけです。」
(敵の攻撃パターン鑑定、攻撃からカウンター命中率鑑定、戦乙女との戦闘勝利条件鑑定。)
鑑定士の覚醒能力を使い、勝利への過程を演算する。痛みなど感じている暇はない。早期に戦乙女の覚醒能力を封じなければこちらが殺られてしまう。
「ふふ___________口が達者なのね、貴方。」
エイルの左腕を奪ったことで気分が舞い上がっているのか、己の武器である鞭へと頬擦りをするフレイヤ。
(精々調子に乗る事です。次の攻撃予測地は把握しています。後はカウンターでその指輪を破壊した後に心臓を一撃のもと屠るのみ。)
エイル•ワルキューレに敗北はない。敗北してはならいないという強迫観念が彼女を勝利へと駆り立てる。
(生徒会長と死合い、倒すまで........私に敗北という二文字は許されないのだから。)
それが元来、ジークフリートを手にするための盟約。
「どこまで耐えられるかしらぁあ!!!」
翼を広げ姿を再び消すフレイヤ。
(__________今度は油断はしません。)
エイルは間髪入れずに正面へと二本指で指突を放つ。
「なっ!!?」
パリンと音が鳴る。すると、フレイヤは地面へと身体を打ち付け、壁際まで転がった。
「いっ!!!」
(.........は?)
戦乙女としての能力は再び鑑定士の開錠により、封じられ翼が消失した。
「.........この『覚醒封じの指輪』、小国なら買えるレベルの代物なんだけど。」
フレイヤは立ち上がり、鞭を手放す。
「あぁああああああもぅ...........」
そして身体をプルプルと揺らし、激昂とした表情を浮かべる。
「..............痛ぶって殺そ。」ボソッ
憤怒とした表情でエイルへと歩を進めるヴァナヘイムの美姫。両腕に嵌めるガントレット、手甲へと魔力を通しルーン魔術にて肉体強化を行使する。
「戦乙女を封じてもフレイヤちゃんとお前じゃあ天と地ってこと身体に教えて上げる。」
フレイヤはエイルへと殴りかかった。だがその力任せな攻撃はエイルにより受け流される。そして殴りかかって来た腕を掴み、此方へと引き寄せる。
「__________冷静を欠いた貴方に負ける道理はありません。」
フレイヤの耳元でそう呟くと、手刀にてフレイヤの左腕を切断した。
「んんんんんん!!!?!!」
血を地面へとぶちまけ、悲鳴を上げる。
「痛い........痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ...........イタイんだって.........何度言えば分かるの?」
殺意とした表情でエイルを睨み付けるフレイヤ。
「..........殺すぅ.......絶対に殺すからぁ.........」
エイルはふっと口元を釣り上げ、ほくそ笑む。
「____________________借りを返したまでです。」
「なんだ、なんだよ、なんですかぁ?」
フレイの足元で膝をつくグローア。それをつまらなさそうな表情でフレイは見下げる。
「君、元s級冒険者じゃないの?がっかりさせないでよ。」
グローアは傷だらけの身体に鞭を打ち、立ち上がる。
「がっかりさせたのなら悪いな.........」
グローアはにぃいと頬を上げ、嬉しそうに笑う。
「.........久しぶりの好敵手だと思ってな。ついつい戦いを楽しんでしまった。」
グローアは冒険家であると共に戦闘狂である。友だなんだと理由をつけては戦っているが、本質は変わらず、血の滾る戦いを求めている獣なのである。
「...........気持ち悪いね、きみ。」
グローアはフレイに剣をかざす。
「__________あぁ、自分でもそう思うぜ。」




