必要な犠牲なのだ
「___________それでは私達は先に行かせて頂きます。此処は任せました。」
エイルはそう言うとヒュンフを通り過ぎようとする。
「行かせると思うかい?」
「行くと言うのが聞こえないのですか?」
盾を弾き、鋭い蹴りを放つ。ヒュンフはそれを盾で受け止めるが、後方へと数メートル程飛ばされる。
(僕の盾が欠けた......バカな、この盾は魔剣や魔槍の衝撃にも耐えられる究極の盾。僕の作り上げた最高傑作なんだぞぉ!!)
そして体勢を立て直した頃にはヘズを除いた十解メンバーは先へと進んでいた。
「それが蹴り一つで一部が破損するだって................ッ」
ギロリと先へと進むエイルへと殺意を向けるヒュンフ。エイルの職業適性は『鑑定士』。敵の弱点を解析し、即座に看破する事が出来る。そして彼女がしたことは至極簡単。盾の脆い部位を鑑定し、寸分違わずに蹴ったのだ。
「ふざけるなぁ!人間の小娘ごときがどうこう出来る代物ではないっ!!」
破損した盾の欠片を握りしめ、巨人兵の手の平へと乗り込む。
「_____________捕まえてなぶり殺してやるッ!!」
そしてエイル達を追いかけようとした刹那、乗っていた盾の巨人の右手首がバッサリと両断された。
「なっ、」
ドスンと大きい音を響かせ巨人の手は地上へと落ちる。そしてヒュンフもまた地面へと身体を打ち付けた。
「ぐぅ、っ、僕をこけにしやがってぇ!」
盾を使い、立ち上がるヒュンフ。そして巨人兵の手首を切断したであろう張本人へと身体を向ける。
「___________お前の相手は拙だと言っただろう?」
ヘズによるランスの一撃が巨人兵の手首を砕き、切断したのである。ヒュンフはヘズの抱えるランスを恨めしく睨み付けた。
「僕は槍専門ではないけれど、君の使う大槍が一流品であることは見て分かる。ツヴァイが見たら作り手は誰だと騒ぐ事だろうね。本当にムカつくよ.......僕を此処までコケにしやがってッ!」
ヒュンフは盾の巨人を動かし、左パンチがヘズへと向け振り下ろされる。
『聖槍一閃』
ヘズは左拳へと正面から受け止めるようにランスを突き出し、技名を唱える。すると巨人の左拳は中心から砕け、そのまま左腕を裂いた。
「........うそ、だろ」
「嘘ではない。本物の戦士とは絡繰頼りではなく己の武器と経験のみで勝利を手にするもの。」
空中へと跳躍したヘズはルーン魔術で空中に足場を作り、巨人の頭部へとランスを振り下ろす。
「戦士としての格の違いを見せてやる。」
聖重騎士の特性の一つでもある肉体強化を発動させ、盾の巨人の頭部を穿つ。
「くっ、舐めるなよ人間ッ!!!」
頭部を破壊しようとしたヘズの真横へと移動し、盾を振るうヒュンフ。
(この体勢では防げんか..........だが)
驚きはしたが、直ぐに冷静な表情に戻り聖重騎士の能力を発動させる。
『聖重結界』
光の衝撃波が三重にしてヘズ•バルドルから放出される。ヒュンフは振るった盾ごと後部へと押し戻され、三重の衝撃波が身体へと直撃する。
「なんとぉおおおお!!!」
光の衝撃波を喰らったヒュンフは住宅地に身体を吹き飛ばされる。そして受け身を上手く取ることも出来ずに壁へと衝突し、血を吐き出した。
「がはっ............盾の鍛冶士.......僕は名誉ある.........七人の小人の一人ヒュンフ........その僕がこんな場所で.........負けていい訳がなっ」
腹部から違和感を感じる。ヒュンフは視線を下へと向けると巨大な槍、ランスが自身の身体を貫いていた。目線を上げるとヘズが己の武器であるランスを投擲した姿が見える。
「そん.....な......いや........しにたく」
盾の巨人は完全に破壊され、己は侵入者になす術もなく殺される。ヒュンフは惨めな最期に涙を流し、絶命するしかなかった。
「恨んでくれても構わない。この身は悪を持って聖道を為す騎士だ。平和な世を造り上げるための尊い犠牲になってくれ。」




