大国クラキ
「勇者と聖女を保有する我が国はどの大国よりも戦力を有している。それは理解出来ているな、ネーデルラント侯爵。」
クラキ王は頭を垂れるシグルドに対し問いかける。
「は、理解しております。」
王の隣にはフロールフ王太子も控え、鋭い眼光を見せていた。
「世界蛇の出現で我が国は大打撃を受けた。そして最高戦力である十二人のベルセルクでさえ、生き残りは二人のみだ。ボスヴァルを失った代償は大きい。七英雄の戦争間の使用は大陸の条約により禁止されている。だが、首謀者は貴様の実弟だな?」
「................まだ断定した訳ではありません。」
シグルドは苦渋とした表情を見せる。
「大国全てを侵略せんとする暴君は捨て置けぬのは理解できよう。他の三国とも協定を結び、賊の撃退に当たる。これは上層で決議された決定だ。例え勇者の頼み事でも刑減は不可能ぞ。」
間違えであって欲しいが、広域魔術で映し出された人物は紛れもない実弟、ジークフリート本人だ。自分の弟を見間違う筈がない。
「............王よ、我が領地は滅びた。既に愛する家族も臣民もいない。残されたのは私と弟ジークフリートだけなのです。もしも王が私にジークフリートの抹殺を要求するようであれば、私は貴方の首を断ち、自害致しましょう。」
シグルドは立ち上がり、クラキ王に対し殺気を向ける。
「貴様ッ、王に対し無礼であるぞ!!!」
スノッリの父、ストゥルルソン宰相は声を荒げ、兵達にシグルドを取り囲むように命じる。
「クラキ王.......私個人が貴方に忠義を果たす理由は何処にもない。私はユグドラシルの大樹の警備で学園を離れる事が出来なかった。故に要請をした筈です。ベルセルク共をユグドラシル側に寄越せと。そうすれば私自らが世界蛇を迅速に葬り、領地や大陸への被害を大きく防ぐことが出来たと。だが、陛下はそれをなさらなかった。」
シグルドは周囲の兵達を敵意を込めて一睨みする。
「引け、お前達も理解しているだろう。この国で私に勝てる者はもう誰一人としていない。」
再びクラキ王へと視線を向ける。
「私は個人的にはジークフリートに付き、大陸統一の手助けをしてもいいとさえ感じている。けれど私はそれをしないだろう。理由としては亡き父ジークムンドの陛下に対しての恩義が関係している。王は素晴らしい方だと常々口にしていた。我が父は陛下を敬愛していた。故にその想いを踏みにじる行為はしたくない。」
「......ならばどうする。」
シグルドは歪んだ笑みを浮かべ、魔剣へと手を当てる。
「実弟がクラキ国に侵略行為に及んだ場合、私自らがジークフリートの部下を皆殺しにする。そして弟の両腕を切断し、飼い殺す。処刑などさせはしない。」
フロールフは憎らしくシグルドを睨みつける。
「ふざけるな!!国を脅かそうとしている男を飼い殺しにするなど正気の沙汰だとは思えない!!!僕が処刑台に送ってやるッ!!」
シグルドはフロールフへと視線を送ることなく背を向け、そして歩きだす。
(ブリュンヒルデ............君は今、何処にいるんだ?)
200話突破ですよ!!




