表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/381

一刀両断

__________失敗した。


神話の時代が終わり、最早俺の敵になるものは存在しないだろうと驕っていた。なのにこの有り様はなんだ。娘や息子達を失い、自分の核さえも消滅した。


(本体への障壁は取り除かれてしまった。)


ラグナロクの時のように暴れ周り、世界を破滅へと陥れるか。いいや、既にそれは完遂された。いくら海の上で波を上げようともこれ以上の破壊は成し遂げられない。ならばどうする。俺に何が残されている?


(人間体の核を再創造出来るのは数世紀の時を要する。新たな子孫を生み出すか。いいや、エネルギーは全て復活する際に使い果たした。無理だ。)


この巨体で出来る事は限られる。大海で泳遊するか、身体を揺らし大津波を引き起こすくらいしか出来ない。


(それにルーン魔術による水魔法を発動出来ない....封じられている。それに追随して生命力すらも奪おうとした愚か者がいたが弾いてやった。)


覚醒能力と言う奴なのだろう。オーディンの老いぼれが人類に残した負の遺産だ。


(俺は詰んでいる。)


この巨体故に簡単には倒されないだろう。だが、時間の問題だ。あの勇者シグルドが魔剣をぶら下げてこの場にやって来たら確実に胴体は斬り飛ばされる。あの魔剣はそう言う類いの代物だ。



「よぉ...........元気してたかい?」



眼前の大岩の上に座り、死んだような目で笑う男。


「エイリークのおっさんから無断で拝借してきたんだ。」


身の丈以上の大きさを誇る巨大斧。それを掴み上げ、立ち上がる。男は血塗れで世界蛇へと対峙する。



「____________俺と一緒に死んでくれねぇーか。」



血斧を両手持ちに変え、上段に構える。


(そんな小さな斧で何をす___________________)


世界蛇の思考は止まる。いいや、その生命活動を完全に停止させたのである。世界蛇の肉体は綺麗に真っ二つへと裂け、海が割れる。曇り空であった天候でさえ今は快晴だ。血塗れの男は晴れた空を見上げ、笑う。


「___________________英雄になれただろうか?」
















『_________いつまで寝てんのよ!』


スケッゴルドはへヴリングとの死闘の後、昏睡状態に陥っていた。そして、恋慕していた彼女の声が意識を呼び覚ます。


「モルドッ!!!」


だが、自分を庇い死んだ彼女の姿は何処にも存在しない。周囲を見渡すと、そこは療養室だった。


「ようやく目を覚ましたか、スケッゴルド。」


クラスメイトであったヘズ•バルドルが壁に背を預け声を掛けてくる。


「ヘズ.......俺はどれだけ寝てた?」

「半日程だ。」


スケッゴルドは直ぐに立ち上がり、装備を身に付けていく。


「完治していないんだぞ?安静にしていろ。今のお前が戦場に赴いたとて無駄死にするだけだ。」


諭すようにスケッゴルドにベッドへと戻れと目で語る。


「囮でも何でも使いようはある。無駄死にはならねぇーよ。ジークフリートやディートリヒ、それにロキが勝機を見出だす。俺は彼奴らのサポートに徹するだけだ。」

「サポート、か。そんな様子には見えんがな。」


闘志と殺気が鋭く膨れ上がっている。ヘズは理解しているのだ。モルドが殺された怒りを押さえられずにいるスケッゴルドの気持ちに。


(彼女はお前に死に急いで欲しい訳じゃないと言ったところで、私の言葉はお前には届かないのだろうな。)


去っていくスケッゴルドの背をただ眺めている事しか出来ない。それが悔しくて、堪らない。私にもっと力があれば、彼等の力を借りずに領地を守る事が出来たんだ。そしてモルドが殺される事はなかった。


(だから私にはお前が無事であることを祈る事しか出来ない.....)


ロキ、お前ならばスケッゴルドの無茶を止められるのではないか?




「________________グローアの野郎、無茶しやがるな。」




海岸沿いにて流れて来たエイリークの血斧を回収する。ハーラルを助ける為に斧を投げ捨てたエイリークの武器。魔斧。血肉を搾取する事で肥大化し、パワーが増すと言うおぞましい能力を持つ。


「借りるぜ、ヴェストフォルの英雄。」


己の武器はへヴリングとの戦いにより万全な状態ではない。刃は砕け、切れ味は随分と落ちている。それに大斧使いによる『三』ある覚醒能力の最後の技には恐らく耐えられない。


(第一の覚醒能力『渾身の一撃』は筋力を100倍にし、振るう必殺の一撃だ。そして第二の覚醒能力『回心の一撃』は推進力に身を任せ、切断力を大きく向上させる。)


最後の覚醒能力、それは大斧使いの集大成。




「よぉ...........元気してたかい?」




デカさなんて関係ない。大斧使いの最後の覚醒能力は全てを込めた一撃。肉体、魂、そして未来さえもその一撃に込められる。


「エイリークのおっさんから無断で拝借してきたんだ。」


この一撃を放てば、命は失われる。だが、それでいい。ジークフリート達が何やら動き出していたが、無駄な労力を背負わせる訳には行かない。


(__________彼奴らの戦いはこれからだ。)


世界蛇が倒され、束の間の平穏な世の後、世界は確実に国間との戦争になる。ヴェストフォルは滅びたが、他の四大国は健在なのだ。そして、各国の英雄級の勇士達も。


(残った領地を奪いあうために争いは起きる。だからこそ、各国は戦力を温存するために英雄級の戦士達を戦場へとは投入しなかったんだ。)


こんな世界は一度ぶっ壊した方がいい。そしてまともな奴が上に立ち、統治すべきなんだ。



「____________俺と一緒に死んでくれねぇーか。」



血斧を両手持ちに変え、上段に構え、振り下ろす。ただ、それだけの動作で作業は終わる。魂の輝きを捧げ、俺は血斧を振るった。



【会心の一撃】



雲を割り、海を裂く。世界蛇はその重き一撃の元に一刀両断された。


(なぁ、モルド......俺は)


消え行く肉体を目に苦笑を見せる。そしてぎゅっと拳を作り、空へと問い掛ける。


「___________________英雄になれただろうか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ