勝利の剣、烈火の炎
水中内では地上のように動くことは敵わない。そして敵の術中内かつ、ハーラルは捉えられ死に瀕している。
(助ける術がない.....奴にたどり着く前にハーラルの首はへし折られる。)
それに海中内では息が出来ない。魔力にて呼吸は何とか確保しているが、消費は激しい。短期決戦で決めに行きたいが目の前には自分達を取り囲む白蛇の群れが存在する。
(ノルナゲスト.......)
ノルナゲストもまた焦りの表情を見せていた。自分達だけであればこの場を離脱する事は出来るだろう。だが、それをすればハーラルは死亡する。それだけは何としても防がなければならない。
(.......友を助ける為に駆けつけたと言うのに無力を晒すのか。)
勝利の剣を強く握り締める。九つの封印を施された聖剣。現在、封印は四つ程解けている。その者が偉業を成す度に封印は解かれ、使用者に絶対的な【力】を与えると言う。
(くそ、俺の剣はまだ至っていないッ!!)
封印を全て解くことが出来れば、世界を焼き付くす程の絶対的な暴力、【終炎】を手にする事が出来る。過去の使い手は誰一人として至る事が出きていない。
(今の出力では俺の周囲しか蒸発をさせることしか叶わない.....)
ハーラルを助ける術がないのだ。
「___________情けないな、冒険王」
大海、いいや、自分達の周囲一帯が空中へと浮遊させられる。透き通った声。女帝とした物言い。一人しかいない。
「.......クリームヒルト」
危機を察し、ジークフリートが投入したのだろう。だが、覇王の力は強大かつ頼もしい。
「この程度の雑兵も潰せぬとはな。」
失望とした目でグローアを一瞥すると白蛇達は一斉に血肉を撒き散らし弾け飛ぶ。重力制御にて、圧縮しミンチにしたのである。
「_____________七英雄が一人か。」
ハーラルの首をへし折ろうと力を入れるが、動かない。
(覇王の力......厄介だな)
ヨルムンガンドはクリームヒルトを睨み付ける。
「ハーラル殿下ッ!!!!」
するとヨルムンガンドの背後から奇襲をするようにエイリークが血斧を振るい、ハーラルを掴む腕を切り落とす。そして、落下するハーラルを掴み庇うように海へと着水する。
「よし、今が好機だッ!!!」
グローアの掛け声と共にノルナゲストも動き出す。グローアは第一のルーン魔術【救いの呪法】を自己に投影させ、勇気を何倍にも昇華する。本来の効力は戦いや悲しみ、悩みなどを取り除く助けとなるものである。
「______________烈火の炎、火坑ッ!!!」
神話の時代にあった火の国の再演。ノルナゲストは全魔力を必殺の一撃に乗せ、燭台を振るう。
「ぐうぅ!!!」
(なんと言う火力、肉体の再生が間に合わんッ!!)
ヨルムンガンドは逃げようにも逃げられずにいた。クリームヒルトによる重力制御により動きを封じられているのだ。そのため、ノルナゲストの放った業火を一身に受ける。そして再生を発動させているが火力により間に合っていない。
「なっ、お前ッ!!!!」
焼け爛れ視界すらも失われようとしていた。だが、完全に肉体が焼かれる前に冒険王は姿を現す。己も炎に肌を焼かれていると言うのに関係なしにと自分の首を跳ね、心臓へと勝利の剣を突き刺す。
「がはっ、」
冒険王は笑っていた。勝利を喜ぶ顔形ではない。あれはネジが外れている奴が見せるような歪な笑みを浮かべているのだ。
「__________表を上げろ、勝利の剣」
ヨルムンガンドの肉体は蒸発し、灰へと変わる。そして斬り飛ばされた頭部はノルナゲストの烈火により完全に灰塵と化すのだった。




