ヨルムンガンド、始動
「_________始まりましたわね。」
目視出来る位置から十解はヨルムンガンドとグローア達による決戦を傍観する。
「グローアが殺されそうになれば此処にいる面子で介入する。ハーラルやノルナゲストの生死は気にするな。それまでは俺達は待機だ。」
ジークフリートは皆へとそう命じると各自に首を縦に振るう。
(さぁ、どう戦うんだ________________グローア?)
スヴィプダグ•グローアは生粋の冒険家で戦闘狂だ。常に強き者との闘争を好む。そして、未知なる物を冒険し探しだすのが大好きな冒険狂いでもある。ジークフリート一派に加入した理由は彼の掲げる『スローライフ計画』の先にある未知数を見る為なのだ。
「ヨルムンガンドッ!!いくぞッ!!!」
勝利の剣を空中にて浮かし操作する。そしてもう一つの宝剣を抜刀しヨルムンガンドへと斬り迫る。
「__________遅いぞ、冒険王?」
ヨルムンガンドはダーインスレイブで勝利の剣を弾き飛ばし、グローアの腹部へとエルボーを喰らわせる。
「うぐっ!!だがッ!!!」
宝剣の柄でヨルムンガンドの後頭部を殴りつける。ヨルムンガンドは怯み、手を地面へとつける。グローアは続き、止めを刺そうと剣を振り下ろす。
「嘗めるなよ、人間ッ!!!」
ヨルムンガンドの周囲から無数の白蛇達が溢れかえる。グローアは攻撃の手を止め、後部へと回避行動に移るが白蛇達の動きは速く、完全に距離を離す事ができない。
「ッ!!」
(ルーン魔術も間に合わッ)
ぼぅ!!!と言う音と共にグローアに迫っていた白蛇達は燃え尽きる。
「_________俺を忘れて貰っちゃあ困るな。」
ノルナゲストは燭台を使い、白蛇を焼滅させたのである。ヨルムンガンドは残った白蛇達を取り込むように吸収すると、蛇の脱皮のように殻を破り姿を現す。その手にはダーインスレイブはなく、手甲鉤が両手から突き出るように突き出ていた。そして上半身に纏う装束は消え、一切の無駄のない筋肉質の身体が外界へと晒される。
「俺は人のように戦うのは実は得意ではないんだ。」
ヨルムンガンドはその言葉を言い終えると同時に蛇のように素早く地を駆ける。そしてグローアとノルナゲストを抜きさり、獣が得物を刈るようにハーラルへとその刃を突きだす。
「_____________殿下ッ」
刃はハーラルの目の前に存在した。だが、その刃はハーラルへ届く事はなかった。
「良かった..........」
何故ならばヨルムンガンドの刃はハーラルではなく、エイリーク・ハラルドソンの心臓を穿っていたのだ。
「そ、そんな.....なんで戻ってきたんだッ!!!」
ハーラルは叫ぶ。エイリークはフッと笑みを浮かべ最後の言葉をハーラルへと送った。
「殿下が....生きている限り.....ヴェストフォルは....滅びはしないッ....生きて.....生きて.......国を.....民達を.......幸せに」
ヨルムンガンドはにぃと意地の悪い笑みを浮かべ、エイリークの肉体を半分へと切り裂いた。その光景はハーラルの目に焼き付く。
「き、きぃさまぁああああああああ!!!!」
怒りと憎悪の感情がハーラルを支配し、剣をヨルムンガンドへと振り抜くが、手甲鉤で受け止められる。
「美髪王、いいや、ヴェストフォルの王よ__________真の絶望を味わって見ないか?」
ヨルムンガンドは剣を折り、ハーラルへと蹴りを放つ。
「うがぁああああああああ!!!!」
世界蛇の圧倒的膂力により結界が張られている首都門近くまで飛ばされた。
(なんと言う力......僕は此処で倒れる訳にはいかない.....いかなくなったんだぁ!!)
血を吐き出しながらもハーラルは立ち上がるが目の前にはヨルムンガンドが微笑を浮かべ立っていた。グローアとノルナゲストが必死とした様子で此方に向かっている姿を視認出来る。
「深海に案内するよ、美髪王_____________」
強固に張られていた筈の結界がヨルムンガンドの一撃により、破壊される。
(不味い....不味いッ!!!)
ヨルムンガンドが結界を破壊した。そして両手を広げハーラルへと告げる。
「___________________ようこそ、ラグナロクの再来へ」




