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ノルナゲスト

国間の小競り合いを何度か止めた事がある。学園へ入学する以前は楽人となって国々を回り、戦に参加しては手柄を立てたりなんかしていたんだ。そしたら騎士の爵位を得た。平民出の自分が最下位ではあるが貴族となったのだ


「母さん、父さん......おれ、貴族になったよ。」


父と母の墓標に語り掛ける。【燭台使い】って職業は特殊な職業で人以上の寿命を得る。今は亡き両親の墓には毎年お参りに来るがこれで100回目だ。そう、年数にして100年。燭台に灯る火が全て消えた時、初めて俺は命を失う。


(死にたい.....そんな感情が日々強くなっていくのを感じる。)


生きているうちにやれる事など全てやりつくした。もう、火は消えてもいい。火が灯る己の燭台をただ眺める毎日は飽々だ。



『__________ノルナゲストさん、ヴァルハラ学園に通って見たらどうだい?』



酒場の店主に愚痴を聞いてもらっていると、店主はそんな事を言い出した。既に100年以上は生きたじじいが今さら学生などになれるかと鼻で笑い、そのまま家に帰宅したのは懐かしい。


『ノルナゲスト様、お手紙で御座います。』


屋敷で雇っているメイドが手紙が届いたという。友人や親族などとっくの昔に死んだと言うのに今さら誰がこの老いぼれに手紙を送るのだと封を開けてみれば『ヴァルハラ学園』からの招待状が入っていた。


(燭台使いは珍しいからか.......いいや、あの店主が勝手に応募したな。)


特殊な職業ではあるがそこまで特別ではない職業適性。故に学園側から送られて来るなどある筈がない。行きつけの酒場の店主が恩着せがましく世話焼きを発動させたのだろう。


「___________処分しておいてくれ。」


騎士爵を授与され、大きな屋敷を与えられた。領地は流石に与えられはしなかったが、農夫出身の俺は出世したものだと思う。今さら学園に行く度胸も出世欲もない。


(ヴァルハラを卒業した者は誰もが偉業を成し遂げている。ルーンの新術、回道の向上、英雄、簡易魔剣の製造など数多の実績をもたらしている。)


燭台使いの俺が入園しては席を無駄にしてしまう。才能あるもの、向上心があるものこそが学ぶべきなのだ。


「____________などとお考えなら、ご主人様は入学をするべきですよ。毎日と酒場に入り浸り、帰れば燭台の火を眺めるだけの質素な毎日。心が病んでしまいます。御友人を作り、青春を謳歌すればいいではないですか。」


長年仕えてくれているメイドさん(59)。かれこれ30近い関係を築いて入るが、残り一年で定年退職だ。この大きなお屋敷も寂しくなる。


「私がいなくなったら孤独死一直線ですよ、旦那様。」

「っ......なら一緒にいてくれよ。この屋敷は大きいんだ。部屋は欲しいだけ使ってくれればいい。俺にはお前が必要だ。」


メイドさん(59)の手を強く握り、そう伝えると頬を紅くし、目線を逸らす。


「はぁ.....20年程前にその言葉をいって下されば二つ返事で答えていたでしょうが、私はもう還暦です。おばあちゃんなんです。」

「還暦など関係ない。歳をとろうとメイドさんはメイドさんだ。側にいてくれよ.....もう、俺にはお前しかいないんだ。」


メイドさん(59)は優しくノルナゲストを抱擁し、頭を撫でる。


「なおのこと、旦那様は巣立ちをするべきなのです。私の人生はもう長くないのですから。」


優しく美しい微笑を見せるメイドさん。俺は涙が出る。そうだ。いつだって俺はいつも彼らに置いていかれる。寿命の違い。俺はもっと普通の職業適性が欲しかった。



「なら、せめて君の余生を俺にくれないか。」



メイドさんは驚いた表情をすると、ふっと笑い「だめです」と断られてしまった。その姿が彼女が若かりし頃に見せた微笑みと重なる。俺はいつだって決断が遅い。もっと早くに彼女と結ばれる道を選択していれば俺はこんなにひねくれた性格にはなっていなかったかも知れない。


『_________________旦那様』


彼女の言い付け通りに学園には入学したよ。そしてたくさん学び、友人が沢山出来た。とても充実した生活に俺は彼女の顔をいつも思い出す。


(学園を卒業したら会いに行こう。そして伝えよう。)


___________________ありがとうと。








「...........メイド....さん?」


ラグナロクの再来、世界蛇の復活は世界を大きくと破壊した。津波や地震、天変地異が大陸を襲い一体何千、何億の人間が死んだのだろう。学園を飛び出し、屋敷へと馬を走らせた。そして、着いた先で見たのは倒壊した建物、切り刻まれた人間の遺体の山。俺は血眼になり、メイドさんを探す。


(やめてくれ、俺はこんな事で君を失いたくないんだ!!)


瓦礫を退かし、探し回る。そして、ようやく見つけた彼女は瓦礫により上半身が押し潰された無惨な姿であった。絶句した。心が、精神が悲鳴を上げているのに声も涙も出ない。怒りが沸々と押し寄せる。


(______________殺さないとだめだ。)


英雄願望などない。だが、世界蛇は排除しなければならない。世界の為にも俺自身の為にも。

この一週間でブックマーク数が100件以上追加されました!それに週間5位!嬉しい....嬉しいですっ!!これからもご愛読のほど、宜しくお願いします!

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