美しくないだろう?
ハーコン・シグルザルソンは常に頬をつり上げ、笑みを浮かべている。だが、彼女の瞳は鋭く常に獲物を追い求めるような鋭い眼光を見せていた。
「それにしても残念ですねぇ......ビャルキはハーコンが倒したかったのにぃ。」
残念そうにハーラルの横で溜め息を漏らすハーコン。
「貴様ではあの男に一蹴りされて終わるだけだ。奴はクラキ国に置いて最強の実力を誇る。」
エイリーク・ハラルドソンはジークフリート同様に全身鎧に包まれているために表情が読めない。ヴェストフォル国に置いて最強の戦士が誰かと問われれば皆は口を揃えてエイリーク・ハラルドソンの名を第一に上げるだろう。それ程までに民衆からの支持が高い。
「えーやってみなきゃ分からないじゃない?」
「分かるさ。俺は奴に殺され掛けたのだからな。」
エイリークは近衛師団に引き抜かれるまでは、国境付近の警備部隊長として国の警備に尽力していた。そしてある時、ベルセルクは現れた。
『貴様が血斧王か______________』
『いかにも。俺がエイリーク・ハラルドソンである。』
スケッゴルドの持つ大斧よりも更に巨大な斧を地面へと下ろし、名乗りを上げるエイリーク。
『_________________________私の名はボスヴァル•ビャルキ。クラキ国に遣える一戦士だ。単刀直入に言う。我が国へ来い血斧王。お前の武功は聞いている。千の軍勢を一人で退け、成体に値するアングルボサの呪いを何匹も殺したらしいな。フロールフ王太子殿下はお前の武力を高く評価しておられる。ベルセルクの一員となれ。』
随分と勝手な事を言うと心の中で思うエイリーク。
『申し出は有り難いが断らせて貰う。俺はヴェストフォルに忠義を立ててる。それを裏切る事は出来ない。』
ボスヴァルはふっと笑い、魔剣を抜いた。
『建前はこの程度でいいだろう。お前も大斧構えろ。』
この男は王太子の命令で勧誘に来たのだろう。だが、それと同時にエイリークの実力を計りの来たのである。
『外交問題になるぞ?』
『お前が俺の相手をしてくれれば外交問題にはならないさ。』
自尊するわけではないが、エイリーク自身はヴェストフォルにとって欠かせない戦士であると自負していた。もし、この場で命を失うような事があればクラキ国との冷戦は解かれ、確実なる侵略戦争が起きる事になるだろう。
(この男.........)
そしてボスヴァル•ビャルキは俺にこの場で倒されるようならば国は直ぐに侵攻すると脅迫しているようなものだ。
『いいだろう_____________その自信、我が血斧で叩き切ってやる。』
奴と三日三晩に切り結び、互いに極限まで戦った。そして俺は最後の力を振り絞り「血斧王」の覚醒能力を発動しようとした刹那、魔剣の刃が首筋に当てられていた。
『良い戦いであった。もう一度問う。我が国、ベルセルクに加われ血斧王。』
『........情けは無用だ。殺れ。俺はヴェストフォルの戦士として死ぬと誓っている。』
目を閉じ、死ぬ覚悟を決める。すると奴は剣を鞘へと戻し背を向ける。
『国に遣える戦士としての忠道、称賛に値する。実力も申し分ない。更に腕に磨きを上げ、ヴェストフォルを守ることだ。』
五大国のパワーバランスを守る為には一騎当千の力を持つ勇士が各国では最低でも一人必要だ。そして俺はヴェストフォルにとっての『英雄』に該当する。
「__________【七英雄】は国同士の戦争には参加出来ない条約があることは知っているな?」
エイリークはハーコンへと尋ねる。
「え、知らなかったんだけど.....なんで?」
「七英雄は人類を化物から守る事が使命だからだ。そして、勇者の力は如何様な戦士をも上回る出力を出す。その者が戦場にでも出てみろ、この国は瞬く間に陥落する。」
ハーラルの眉がピクリと動く。
「あぁ、生徒会長のことだね。広大な領地を保有するネーデルラント家出身で皆からは慕われていた記憶があるよ。うん、そうだね。彼は恐ろしく強かった。冥界では過去の亡霊を難なく蹴散らして先頭を走っていたよ。」
ハーラルは拳を握り締める。
「僕は彼らのように強く在らなければならない。王子として、戦士として。そして世界蛇は誰かが止めなければならない存在だ。倒せなくてもいい。時間稼ぎが出来れば七英雄や各国の英雄達が集い、化物を討伐してくれるだろう。」
「ハーラル殿下.......王位も継がずに死ぬかも知れないんですよ?」
ハーコンの言葉を受け、ハーラルは微笑を浮かべた。
「戦士としての矜持を忘れるよりはいいさ。それに戦わずに引きこもってるなんて美しくないだろう?」




