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クリームヒルトの悲壮

「___________世界蛇の心臓、ヨルムンガンドが動き出したぞ。」


世界蛇の頭部にて黙座していたヨルムンガンドが立ち上がり、魔剣を異空間から取り出した。その姿を上空から確認したクリームヒルトは地上にいるジークフリート達へルーン魔術による通信で伝える。


『ご苦労様。直ぐにその場から離れてくれ。感づかれたら厄介だ。』


ジークフリートから通信が返ってくる。


「あぁ、直ぐに帰投する。お前に早く会いたい。」


クリームヒルトは嬉しそうに表情を緩ませ、その場を後にすることにする。彼女が上空に存在出来る理由は七英雄の一角『覇王』の覚醒能力【重力制御】にある。


(.......十解は冥界の女王と番犬を失った。そして斧使いは戦闘不能。)


残るメンバーは七人となった。そして各国の精鋭達は各首都を防衛するために世界蛇の討伐へとは赴かない。理解は出来る。どの国も甚大な被害を被ったのだ。騎士団や討伐隊を出す余裕などない。


「故に私達が行動を起こしている。」


動かない理由としては『十二人の狂戦士』が壊滅したことも大きい。奴らはヴァルハラ大陸で名を轟かせた一流の王直属部隊なのだから。


「腰抜けどもが。今こそ勇姿を見せる好機だと何故気づかない。ヴァルハラへ誘われたくはないのか?」


ヴァルハラへ誘われた戦士は天より武功を認められた事を意味する。最も冥界の女王いわく、ラグナロクのおかげでヴァルキュリャは全滅したらしいがな。死んだ奴らは善悪関係なくもれなく冥界行きだ。


「希望も糞もないのだからしょうがなき事か。」


そう言えば、レギンは何処にいるのだろうか。彼奴は常に私の後ろについて回っていた筈なのだが、いつの間にやら姿を消していた。大海に呑まれていないことを願うしかない。



「____________________戻って来ましたわよ。」



アスラウグが空へと手翳す。山頂、冠雪の上でクリームヒルトを出迎える。この場にいる十解メンバーはジークフリート、ディートリヒ、グローア、アスラウグ、エイル、カーラ、そして戻って来たクリームヒルトの七名だ。


「お帰り、クリームヒルト。」

「あぁ、ただいま。」


クリームヒルトはジークフリートへと抱きつき胸元へと顔を埋める。まるで長年の時を得て、漸く再会できた恋人のように。


「一時間しか経ってないのにこの反応......それに他の子達がいる中で良くできるね、クリームヒルトさん。」


ディートリヒはクリームヒルトの行動に苦笑する。


「十解、第二席という肩書きは正妻ということだろう?ならば夫に甘えずして誰に甘えると言うのだ。」


クリームヒルトは正妻であることが当然だと言わんばかりに胸を張る。アスラウグは額に欠陥を浮かべ、イライラとした様子を見せていた。


「共有する事は百歩譲って譲歩しますわ。ですが、正妻の座を譲ったという事実は御座いませんことよ。」

「えぇ、ロスブローク郷の言う通り正妻の座は貴方ではありませんよ。既に私がシグルド生徒会長を通じ、予約済みです。」


エイルもアスラウグに追随するように自身が正妻であることを主張していた。


「あぁー、俺はジークフリートと一緒にいられればいいかな。好きな奴の一番になれねぇーのは辛いけど、一緒にいられねぇーのがやっぱり一番つれぇーもん。」


カーラは照れ臭そうに頭をかきながらそう呟く。ジークフリートは彼女に近づき手を握った。



「__________全部が終わったら"二人"で田舎で暮らそうな。」



ジークフリートはカーラの手を握り、彼女の目を愛おしそうに見つめる。カーラもまた愛おしそうにジークフリートを見つめ「うん♡」と答えた。もちろんクリームヒルト含めた十解の他メンバーは唖然とした表情を見せていたことは言うまでもない。

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