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ヨルムンガンドは立ち上がる

「へヴリング......お前も死んでしまったのか。」


世界蛇の頭上にて、胡座をかき、座るヨルムンガンド。四人の息子達が死んだ事実に悲観としていた。


「俺はただ......昔のように暮らしたかっただけなんだがな。」


確かに静寂な時はあったんだ。父上や母上、それに兄や妹、息子や娘。家族全員が生きていた神話の時代。けれど、父上がラグナロクを起こしたことで全てが終わった。母上はラグナロクの際に父に補食され、死亡している。


「更なる力を求めて......貪欲に傲慢になっていく。」


父上は支配欲に染まり、母上を己の糧にした。そして母上は完全に食べられる前に俺達に呪いを掛けた。俺達がこの世に存在する限り、永遠に化物を増殖させる世界への呪いだ。欲に言う【アングルボサの呪い】って奴だな。


「冥界の女王ヘル、すなわち俺の妹は冥界から出られないように門を完全に塞いだ。そして俺は水中神殿へ縛られる形で封印された。」


兄であるフェンリルも【鎖】で縛られている。何処にいるかまでは把握出来ていない。だが、生きてはいる。妹の場合は少し違うだろうが我らは各地に封じられ、数万年もの間、眠りについていた。


「ウートガルザ•ロキ.......何が目的だ?」


誰も本当の姿を知らない。神話の時代に邂逅した際には麗しい絶世の美女、醜悪な臭いを放つ老人、厳格な王、鋭い眼光を持つ青年、天真爛漫な少女と様々な形態で公衆に姿を見せていた。だが、恐らく何れも偽りの姿だっただろう。


「まさかあの道化師の姿が本当のお前だってことはないだろう?」


そんな単純な事があってたまるか。あの幻想士は宿敵であった雷神を幾度と弄ぶように打ち負かした過去がある。気高く厳つい益荒男であって欲しい。


「それにジークフリート•ネーデルラント....俺の妹を誑かした人間。この男の素性も気になるな。」


ヨルムンガンドは立ち上がり、夕日をただ眺める。味方は誰一人として存在しなくなった。


(冥界への扉をこじ開けてもいい.....だが、今の愚妹を解き放つ事は俺にとってデメリットになるかもしれない。)


故にその提案は却下せざるを得ない。


「.......俺は強くない.......父さん、なんで.......」


ラグナロクを引き起こした。現状維持で良かったじゃないか。拳を作り、頭へと手を当てる。


「............倒そう。」


何も心配する必要がないように。ただ自由に気ままに世界を這えるように生きるもの全てをこの手で滅ぼそう。


(そうすれば争いもなにも生まれない.......それでフェンリル兄さんを見つけよう。)


ヨルムンガンドはダインスレイヴを手元に出し、覚悟を決める。


「先ずは俺の息子達を殺した奴らを殺す。十解..........愚妹には申し訳ないがジークフリートは俺の子を殺した。そして、ウートガルザ•ロキは我が愛娘を手に掛けた。許しはしない。例え貴様が幻想を操る魔神だとしても、俺がその幻想を打ち砕く。」

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