へヴリングの意地
処刑人の剣、またの名を【エクセキューショナーズソード】。その剣にはヨルムンガンドが与えた効力がある。
(どんな小さな傷でさえも致命傷を与える事が出来る最凶の剣。)
小さな切り傷さえ、重症に近い切り傷へと変えてしまう。傷口を肥大化させる能力を保有するのだ。故に処刑人の剣とヨルムンガンドは名付けたと言う。
「お前を今代の宿敵と認めよう。」
空中にて舞う頭部は超速再生で肉体を構成し、地面へと着地する。
(既に全身の再生は二度、行使した。暫くの間は再生をすることは控えなければならんか。)
これ以上無理を掛ければ身体は崩壊し、空気へと還ることだろう。それだけは決して起こしてはならない。
「戦場で死することは誉れであり、戦士としての本懐だ。だが、吾輩はヨルムンガンド様と約束を交わしている_____________」
兄弟達は人間達に殺され、残されたのは最古参の四聖蛇公である自分だけだ。創造主であるヨルムンガンドは悲しまれていた。あのような顔を二度と見せてはならない。
「________________吾輩は死ぬわけにはいかんのだ。」
折れた処刑人の剣を拾い、構える。再生能力はもう使えない。だが、父より与えられた最凶の剣がこの手にはある。
「それは俺もだよ、おっさん。誰だって死にたくないから足掻くんだ。俺も、あんたも。だから決着をつけよう。」
スケッゴルドは大斧使い。学園では『c』ランク職業だと評価されるが、使い手によりどの職業も一流になることが出来る。スケッゴルド本人も『英雄』となり、皆から認められる存在になりたいと学園では励んでいた。
(上には上がいる.......だからこそ挑み続けなければなんねぇんだよ。)
スケッゴルドは跳躍し、【渾身の一撃】をへヴリングへと向け振り落とす。圧倒的力による一撃。へヴリングはそれを間一髪の所で避ける。そして処刑人の剣をスケッゴルドへと向け振るう。
「ッ..........!!」
スケッゴルドは大斧の柄で一撃を何とか防ぎ、ルーン魔術を手元に収束させる。
(これで決めるッ!)
火炎系を得意とするスケッゴル。その一撃をへヴリングへと近づき、腹部へと炸裂させた。もちろん爆発による被害は当人にも及ぶ。
「ぐぐっ」
「..........うっ」
互いは反発するように弾け飛び、地面へと転がる。へヴリングは上半身に火傷を負い、荒い呼吸を見せる。スケッゴルドもまた両腕に火傷を負い、苦悶の表情を見せていた。
(腕が使いもんになんねぇ........)
大斧を掴み上げようとするが、痛みで持ち上がらない。反対にへヴリングは折れた処刑人の剣を翳し、迫ってくる。
(覚醒能力の連続使用、続けてルーン魔術の暴発......限界がくるのも頷ける。)
なんとか立ち上がったが、恐らく相手にカウンターの一撃を食らわせたら俺は力が尽きる。
「味気ない終いではあるが楽しめたぞ、人の戦士よ。」
折れた剣の刃先が心臓部へと迫る。ゆっくりと軌道を描くその攻撃をしゃがんで避け、手首を抑える。
「ぐっ、その腕でまだッ!!」
暴れようともがくがスケッゴルドはへヴリングの手を引き、顔面へと頭突きをかました。
「あがっ」
へヴリングの鼻は折れ、歯が何本か抜ける。
「はぁ.....はぁ......」
頭突きに全ての力を注ぎ込んだスケッゴルドはその場にて倒れる。魔力は空で余力はない。
「...............その泥臭さ、嫌いではない。これぞ戦士の戦いと言うものだ。だが、最後の足掻きも無駄だったな。死ぬときは死ぬ。それが自然の摂理と言うものであろう。吾輩とここまで打ち合う事が出来た。それ即ち貴様が一流の戦士であることを吾輩が認めよう。我が称賛を冥土の土産に受けとれ。」
顔を抑えながらへヴリングは処刑人の刃をスケッゴルドへと向け、振り落ろす。スケッゴルドは鼻で笑うと目を閉じた。
「うぐっ_____________________」
死を受け入れよう。そう覚悟を決めた。だが痛みが下りてこない。何故だと目を開けると。
「____________本当にあんたは、私がいないとダメ、ね」
自分を庇うように覆い被さる桜色の髪。折れた処刑人の剣は彼女の背を貫き、胸部から刃先が見えていた。
「ッ.....モルドォ!!!」
名前を叫ぶ。彼女の口元からは血が伝い、優しい笑みを浮かべていた。
「これは神聖な戦士同士の戦いぞ。邪魔をしおって、いね。」
モルドの胸部に大穴が開く。処刑人の剣の効力である「傷口の拡大」を行使したのである。
「...あぁ、ああああ、あああああああああああああ!!!!!!!」
モルドはスケッゴルドへと持たれかかるように絶命した。




