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第三解放

「ボスヴァル.....ボスヴァル.......」


うっとりとした様子で分身達の攻撃を捌くコールガ。氷結による攻撃も肉体の装甲で溶かし、霧も気合いで吹き飛ばす。人外無双の力を振るうコールガに嫌気を感じる。


「第二解放でさえ.....届かないのかッ!」


膂力は拮抗している。狂戦士の特性からかコールガと同じ土俵に立てている。だが、コールガは恐らく全力を出していない。ただ、戦いを楽しんでいるのだ。


(........鬱陶しい)


そして何よりも戦いの当初から己の逸物をいきり立たせ、晒している姿が心底醜い。斬り結ぶ際に見える汚物にはうんざりとしていた。


「もう一度言う。我のものになれ、ボスヴァル。貴殿は良き戦士だ。我が愛玩物になる資格が十分にある。ヨルムンガンド様や他の四聖蛇公にも貴殿にだけは手を出すなと伝えよう。何が不服か。我が元で生きる名誉を得られるのだぞ?」


コールガはボスヴァルを欲しがっていた。現代の世界に置いても上位に位置するであろう戦士は人外を興奮させ、魅了したのだ。


「気色の悪い奴め。私が頭を垂れるのはこの世に置いてただ一人......フロールフ•クラキ殿下だけだ。」


剣のガードにある三つの宝玉が全て黒色へと染まっていく。


(.........刻限か。)


コールガから距離を取り、空を見上げる。


(私の命はここまでのようです、殿下。どうか、ご息災で在られる事を心よりお願い申し上げます。)


剣を下段に構え、魔剣スニルティルの最終解放を口にする。


「選定の剣よ、今こそ真価を示す時だ_____________氷停権(スニルティル)


全ての時間が止まる。ボスヴァルは停止した世界の中、コールガへと向け歩きだした。


(美しいな。大海も、世界蛇のうねりもなく全てが止まっている。)


スニルティルをコールガの心臓部へと突き刺す。無論、この程度で四聖蛇公が死なぬ事も理解している。


「_____________消えろ」


内部から氷結しコールガの肉体は爆散する。ボスヴァルは遠く離れた山頂へと視線を向けると、頬を吊り上げ、笑った。


(グンテル郷の娘だったか......あぁも笑う事も出来たのだな。)


殿下の婚約者だった女。個人的には行け好かない女であったが芯のある女であったことは間違いない。少なくとも聖女よりは殿下に相応しい女であると評価していた。


(他にも学園の生徒会に属する女衆がいるという事は学園から逃れてきたのか....ふ、学園か。悪くはなかったよ。グローアの奴は今頃何をしているのだろうか。無事であってくれると良いのだが。)


うぐっと胸を抑え、膝をつくボスヴァル。スニルティルの矛先が徐々にだが、世界へと回帰し始めていた。第三解放が解かれ始めていると言う証拠だ。


(第三解放が解かれれば、スニルティルは世界より消失する。そして時を止めた代償として世界からの修正力を受け、私の命は..........)


身体が軋む。少しずつと身体は砂のように空気へと還っている。恐怖はある、けれど何処か安心した気持ちが身体を包み込む。


「............私は良き臣下だっただろうか。」


フロールフ王太子殿下と初めて出会った頃の記憶を鮮明に思い出す。走馬灯という奴なのかもしれない。



『_________大丈夫かい?』



私はかつて、ある国の王子だった。三男坊と言うこともあり、王位からは最も程遠い立ち位置にいる。だが、祖国にある選定の剣を抜くことに成功してしまった。兄達の嫉妬は激しいものだった。食事には幾度と毒を盛られ、何度も暗殺者を送りこまれる。私はこのままでは殺されてしまうと祖国を後にした。


『お前は..........』


国を出た俺はまだ幼く、生きる術と言うものを知らなかった。路頭に迷い、ゴミを漁る毎日。だが、選定の剣だけは手放さずに共に生きてきた。この剣だけが私がこの世に存在していいのだと証明してくれている気がしたのだ。だが、限界はある。路上裏で力尽き倒れる私の元に一人の少年が話を掛けてきたのだ。


『僕はフロールフ.......フロールフ•クラキ。この国の次期国王だよ。』


眩しく、優しい笑みを見せる。私は力を振り絞り、よろめきながらも立ち上がる。だが、やはり力が尽き、前方へと倒れてしまう。


『おっと、大丈夫かい。』


支えるように抱き留めるフロールフ殿下の温もり。


『すまない、私は.....』


男ながらに情けなく涙を流す。そんな姿を殿下は慈愛の眼差しで強く抱き締めてくださったのだ。


『安心していい。君を苦しめるものはもういない。今も、そして未来も。』


殿下は私の手を引き無理矢理と路地裏から連れ出す。眩い太陽の光が差し込む。そして殿下は私にこう告げたのだ。



『_______________僕と一緒に行こう。』



あの時のフロールフ殿下の強く眩い姿に心を打たれたよ。この少年ならば平和な世を必ず導くであろうと。


「殿下......貴方の覇道に......付き従う事が....私の夢だっ_____________」


________時間は動き出す。そして動き出した戦場には四聖蛇公コールガの姿もクラキ国最強のベルセルク、ボスヴァルの姿はいなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 惜しい人を亡くした・・・・ おかしい奴も亡くした。
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