ダーインスレイヴ
「怖いことを言う妹だよ。ラグナロクの時も劣勢だと判断すると俺達を置いて、直ぐに冥界に帰ったからな。」
ヨルムンガンドは嬉しそうに笑う。そして振り返り、地上世界最強の男と対峙する。
「_________それで、君を倒せば大きな蛇も止まるのかな?」
ネーデルラントが勇者、シグルドは魔剣グラム=バルムンクを既に抜刀し構えていた。
「さぁ、どっちだろう。倒して見れば分かる。」
ヨルムンガンドは微笑を浮かべる。
「ねぇ、生徒会長.......こいつを倒せばジークフリートに話し通してくれるんだよね?」
そしてその隣にはピンク髪の女性徒、ミストの姿があった。その手には赤刀が握られ、禍々しいオーラを放つ。ヨルムンガンドはその赤刀を凝視する。
「.........ダーインスレイヴ。一度鞘から抜いてしまうと、生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に納まらないといわれた魔剣の一振り。一度滅びた世界でもまだ現存しているとは、しぶとい魔剣だ。」
ヨルムンガンドの言う通りミストの持つ魔剣は「ダーインスレイヴ」。ミストの家系が貴族である最たる理由の一つである。
「大津波で男爵領が滅びる前に父が使い魔でここまで送り届けてくれたんだ。」
ミストの父は津波に呑まれる前に家宝である「ダーインスレイヴ」を使い魔に預け、領地と共に旅立った。ミストに残された物は手に持つ魔剣のみ。
「それはすまないことをした__________」
ヨルムンガンドは申し訳無さそうな表情を一瞬見せるが、直ぐに爽やかな微笑へと表情を変え、言葉を続ける。
「__________________________直ぐに君も冥界に送るよ。」
覇蛇の闘気が感じられる。冥界の女王と対峙した時と酷似していると、シグルドは冷や汗が頬を伝う。
「やってみろよっ、蛇野郎ッ!!!」
ダーインスレイヴの刃の色が黒色へと染まって行く。そして禍々しい程の憎悪と狂気が発っせられる。シグルドはミストとアイコンタクトを取ると戦線から離脱する。
『ダーインスレイヴ起動ッ!!』
そして世界樹の頂上は領域が展開されるように紅い霧に包まれる。
(シグルド生徒会長にはあらかじめダーインスレイヴの能力は説明してある。半径500m内にいる生物の強制吸血権を得る。まだ魔剣を制御しきりていない僕では吸血量は指定できない。だからオートで10秒毎に5000mlの血液を領域内の生物から搾取する。)
人間一人分の血液量。この魔剣を起動したら普通の人間ならば余裕で殺せる。だが、デメリットも存在する。1分という時間が立っても領域内の生物が死滅しない場合、魔剣保有者は死亡するのだ。
「.......あがっ!!?」
ヨルムンガンドは全身から血を吸い出され、その場で倒れ伏す。その姿を確認したミストはヨルムンガンドが完全に死亡したことを確認する為に近づく。
「死んだ、よね?」
ダーインスレイヴの刃でヨルムンガンドの顔を確認すると絶命していた。そして念のために首も立ちきろうとした刹那、ダーインスレイヴを握っていた腕が切り飛ばされる。
「んん.......いいな、その剣!」
そして空に舞ったダーインスレイヴをキャッチし、ミストへと向ける。
「なん.....で.....」
(人間一人分の血を吸血したのに、なんで生きてるのっ)
きり飛ばされた腕を抑え、ヨルムンガンドを睨み付けるミスト。
「ははは、そりゃ俺が世界蛇だからな!どう考えても俺の体積は人間一人分じゃあないわな!」
今も尚、大海では巨大な蛇がうねりをあげている。世界樹の上からでも容易に確認できる。ヨルムンガンドの言う通り、世界蛇は星を一周できる程に巨体だ。人一人分の血を吸い出したとしても大した問題ではない。
「まぁ使用方法は分かったし、第一号に前任者に使うとするか。」
ミストは間髪いれず、逃げ出す。勝ち目はない。シグルドと再び合流し、魔剣を取り返さなければ大変な事になる。
「おいおい、逃げるなよ。」
「あがぁああ!!!」
かなり離れた場所まで走ったのに、追い付かれ蹴りを入れられる。
(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!)
そして地面へと転がり、何とか立ち上がろうと顔を上げるとしゃがみこんだヨルムンガンドがにこにことした顔で自分を見ていた。
(..........あ、死んだ)
ダーインスレイヴの刃の色が黒色へと染まって行く。そして禍々しい程の憎悪と狂気が発っせられる。
『________________ダーインスレイヴ起動』




