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天に輝く者

「_________父、どうするの?」


世界蛇の影響から、ネーデルラント領もまた大きな打撃を受けていた。領地の半分は既に海底の中。生き残った領民達は城門の中に入れ、匿っている。暫くの間は食料に問題はないが、時間の問題だろう。


「シグルドへ緊急の伝令を送った。時期に領地へと戻って来る筈だ。お前は待女や医師と共に傷人の手当てに務めろ。次の指示は追って伝える。」

「_________了解。」


ジークリンデは怪我人へ手を貸すために城内の庭園に設置した簡易避難所へと向かうことにする。


(おにぃ.....大丈夫、だよね?)


向かう途中。ジークフリートについて考えるジークリンデ。兄のジークフリートは頭が冴えるが、長子シグルドや父の様に武に優れ人間離れした肉体を持っている訳ではない。故に心配で仕方がなかった。


(貴族の立場をいらないと捨てた。そして、その理由が世界蛇と相対するためだと啖呵を切っったのを覚えている。)


あの言葉が事実なのならば、兄であるジークフリートは世界蛇討伐の為に戦場へと赴くだろう。


「.........おにぃは弱いのに、ダメだよ。」


冒険家には限界がある。そもそも「覚醒」に至っていない時点で戦士としては落第者だ。槍は上物だが、魔剣や聖剣の類いではない。それにネーデルラント家から盗み出した秘宝『エギルの兜』も対人戦では有用だが、世界蛇の様な神代の異形に通用するかもわからない。


(リンデに槍を教えてくれる為だけに槍を主武器にしてるし、おにぃは本当にシスコン)


庭園にあるテントへとつくジークリンデ。そして足を踏み出そうとした刹那、城門から大きな音が鳴り響く。



「_______________なんだ、まだこんなにも地虫が這っているじゃないか。」



白色の貴族服に身を包んだ黒長髪の美男。その眼は冥界の女王ヘルと同じく紅く、異様な魔力を帯びていた。ネーデルラント城兵達は直ぐに男を取り囲む。


『何者だっ!!』


男は取り囲んだ兵士達をゴミ虫を見るように一瞥すると、腰に差す二振りの漢剣を抜いた。


「今から殺す奴らに一々答えてられるかよ。」


軽く剣を空中にて振るう。その無意味な行動に兵士達は唖然と黙視していたが、直ぐに視界が変わる。取り囲んでいた兵士全員が胴体を真っ二つに切り裂かれ、絶命したのだ。


「...........な、に?」


その光景を遠目から見ていたジークリンデは畏怖する。そして周囲には恐怖が伝染し、逃げ惑う領民。槍を手元に出し、握り締める。


(勝てない.......でも、この場で一番強いのはリンデだけ。)


せめて父が来るまでの間、時間を稼げればいい。槍使いの能力を最大限に放出する。魔力は抑えずに全力を持って注ぎ込む。


(時間だ。時間さえ作れれば......)


男の前へとジークリンデは立ち塞がる。恐怖のあまり、冷や汗が頬を伝う。


「足元が震えてんぜ。びびってんのかよ、くく。まぁしょうがねぇよな_________」


ジークリンデの視界から男は消えた。


「___________________『ヒミングレーヴァ』様の前じゃあアースガルズ人はかしずくしかねぇーんだわ。」


その声は背後から聞こえる。そして足元から違和感をおぼえる。


「っ、ぐああああああああああああああ!!!!!」


両足を切断され、その場でかしずくジークリンデ。正確に説明するならば、脛骨と腓骨を両足とも綺麗に切断されたのだ。あまりの痛みに叫び声を上げ、涙を流す。


「あはははっはははははは!!!!そうだぁ、恐怖しろ!絶望しろぉ!!間もなく世界蛇が世界を支配する時代が来るのだからなぁ!!!」

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