四聖蛇公筆頭
「ッ...........始めやがった」
ユグドラシルの大樹の山頂と言えばいいのか、スケッゴルドは大陸を見渡す。大きな唸りを見せる大蛇が大海には見える。そしてその影響からか、陸には津波が押し寄せ、甚大なる被害を生み出していた。
「う、ウルズの泉が........」
ヴァルハラ学園を除くウルズの都市が海に呑まれ、たくさんの人々が命を散らしている。学園には冥界の女王の加護が張られているため、損傷はなく、一切の水を受け付けずにいた。
「一体何が起きてるって言うのよ、」
モルドはスケッゴルドの裾を強く握り、不安とした様子で声を漏らす。スケッゴルドは彼女の手を握り、告げる。
「安心しろって。俺は死んでもお前を守ってやるからよ!」
眩しい笑顔を浮かべ、モルドへと囁く。その言葉を聞き、モルドは嬉しそうに握られていた手を自身の指で絡めていく。
「私より弱いくせに生意気よ。」
「はは、違いねぇ!」
二人は笑う。されど、目の奥には闘志が宿っていた。この状況はラグナロクの再来で在ることは一目瞭然。古今東西の英雄達が各地で世界蛇を相手取ろうとするはずだ。
「...........お父さんやお母さん、弟達が無事でいればいいけれど。」
モルド子爵家の長子であるスカル•モルド。世界蛇が引き起こす災害はモルド領を確実に壊滅に追い込む。領民はもちろん、両親や幼い妹の無事を心から願う。
「________________他人の心配をする前に自身の心配をしたらどうだね?」
白髪の初老の男が空中より舞い降りる。その手には白色の傘が握られ、格好は白いタキシードを着用している。そしてその瞳は冥界の女王やガルムと同じく深紅の眼をしていた。
「いやはや、ユグドラシルの大樹は近代でも存命かね。完全体であるニーズヘッグのみが大樹を枯らすことが出来る故の障害か。まぁよい。此度は主の復活祭。妹君であらせられるヘル様への挨拶を済まさなければな。」
初老の男は学園へと向け、歩きだす。
「__________待ちなさいよ。」
首もとに背後から剣を当てるスカル•モルド。
「我輩の索敵をすり抜けるか。面白い。だが、装備が足りぬな。その程度のなまくらでは我輩の薄皮一つ裂けはせぬよ。」
「試してみる?」
「お望みとあらば如何様にも。」
モルドは間髪いれず、剣を引いた。本来であらば鮮血が舞い、目の前の男は地へと倒れ伏している筈だが、男は無傷だった。
「だから言っただろう、下等な人間よ。」
モルドの右腕を軽くトントンと退かすように傘を当てる。
「何を........ッ、うぐっ!!!!」
モルドは右腕の違和感を感じ、確認すると右腕が完全に折れていた。悲鳴を上げそうになるが、直ぐに距離をとり痛みを耐える。
「モルド!!大丈夫か!!!」
「大丈夫ならいたがってないわよ、」
「言い返せる力があんなら大丈夫ってことだ。」
スケッゴルドは直ぐにモルドの元へと駆け寄り、彼女を守るように前に出る。
「.........てめぇ、なにもんだ?」
初老の男は傘を地面へと付け、顔だけをスケッゴルド達へ向け、告げる。
「世界蛇『四聖蛇公』筆頭をしている『ヘヴリング』だ。安心したまえ。いずれは死ぬだろうが、今日は生きられるぞ、アースガルズ人(人間)。」




