グローアは強くなりたい
「っ!!!」
グローアはロングソードを振るう。その矛先は生徒会長であるシグルドの首へと向かい振るわれていた。
「________足元がお留守だよ、グローア。」
最小限の動きで剣を避け、グローアの脛を蹴りあげる。
「うぐっ!」
その場にて膝をつくグローアの首もとには木剣が当てられていた。
「グローア、勝負を早期に決めたい気持ちは分かる。けれど、性急過ぎては敵に足元を掬われることもある。相手の力量を見極め、隙を見定め、刃を振るうんだ。」
グローアの手を取り、立ち上がらせる。
「.........やはりアンタは強いな。最強と呼ばれるのもうなずける。」
魔剣を使わずとも素で強いシグルドに称賛の言葉を送る。
「俺がアンタに全力で挑んでも負けるだろう。自慢じゃないが、俺はこれでも世界で10本の指に入る戦士だと評価されている。だが、あんたはさらに上のステージに立っている。」
世界に四人としか存在しない「s」級冒険者の一人でもあるグローア。それを軽々と凌駕するシグルド。
「私を高く評価し過ぎだと思うがね。」
皮肉げにそう声を漏らす。
「負けた事を嘆いているのか。」
「...........私は負けたんだ。常勝無敗だった。だけど、この短期間で二度も敗北した。人類を背負うべき立場にある勇者が、だ。光を民衆に見せなければならないと言うのに私は醜態ばかりを晒している。」
その場へと座り込み、シグルドは語る。
「冥界の女王との戦いは戦いにすらなっていなかった。」
「あれは........」
戦いに置いて「しょうがなかった」などと言う言い訳は通用しない。生か死あるのみなのだ。故にグローアは言わんとしていた言葉を口にせず、黙り込む。
「そしてエイル達を好きにさせた挙げ句、弟に殺されてしまったよ。全力の戦いは心踊るものだったけれど、自分の敗北は想定していなかった。油断せずに全力で最初から敵を討ち取りにいくべきだったよ。」
鞘に納めてある魔剣へと手を置き、己の驕りについて反省の顔を見せていた。
「アンタを目標にしている奴はごまんといる。俺もその中の一人だ。あの戦いでは俺もアンタに殺された。弱気になる気持ちも分からなくはない。だけどな、目標としている男がそんな情けない顔をしているとぶん殴りたくなる。弟のジークフリートのように意地を見せてくれ。誇りを汚すな。俺はいつかアンタを越えて見せる。ベルンでもワルキューレ先輩でもねぇ。」
グローアに日の光が指す。そしてシグルドへと向け、手を伸ばした。
「_________スヴィプダグ•グローアこそが世界で最強の男であると示して見せる。」
そして指し伸ばされた手を掴み、シグルドは立ち上がった。
(そうだったな。私は勇者だ。皆に勇気を与える者。そして_________)
魔剣を鞘から抜き、天へと掲げる。
「__________________私は最強の戦士だ。」
そして剣を払い、背を見せるシグルド。グローアは微笑を浮かべ、立ち去って行く背中を見守る。
「いつの日か、君が私を倒すことを待っているよ。」




