「a」組の日常
簡潔に言いますと、学園は正常に戻った。冥界の女王ヘルは生徒会の暴走で死んでしまった生徒達を生き返らせたのである。
「______________このような突然の強襲に対応出来なくては一流の戦士になり得ません。職業適正に頼りすぎた戦いでは隙が生まれやすく、対応に遅れてしまう。一年生の皆さんにはこれを教訓に魔力障壁の大切さを学んで欲しいと思います。」
冥界の女王は壇上でスピーチを終えると、下壇する。緊急生徒集会が行われ、一年生へと落胆した様子で話し掛ける様子に生き返った生徒達は何も言えずにいた。この学園は学舎であると同時に一流の戦士を育て上げる訓練機関でもある。
(.........みんな分かっているんだ。)
自分の身を己で自分で守れない奴が一流になれる筈がないと。
「しけたつらね、あんた。」バン!
モルドはスケッゴルドの背を強く叩く。スケッゴルドは「いきなり何すんだ!」と叫ぶが、直ぐに落ち着きを見せ、ヘルがスピーチを行っていた壇上へと目を向けた。
「死にはしなかった......けどよ、崩落で潰される奴らを助けられなかったことが悔しくてよ。」
拳を握りしめ、己の未熟さを嘆くスケッゴルド。
「スケッゴルド...............私、あんたのそう言うところがす「あぁ........僕もまだまだ鍛練不足だと痛感したよ。」
モルドの言葉を遮り、ディートリヒが口を挟む。モルドは雰囲気を邪魔され、恨めしそうにディートリヒを睨み付ける。
「強く.......もっと強くならないとだめなんだ。」
(修練、そして修羅場を経験した。だけど僕は殺されてしまったんだ。善戦はしたと手応えは感じているさ。けれど、負けてしまっては意味がない。)
ロキの助太刀があり、最後には倒せたらしい。悔しいと感じる。ロキ一人で勇者は倒せたのだと証明したようなものだ。
(............流石は師匠の右腕。大望を叶えるには道化師のように強くならないとだめだ。)
いつかシグルドを己の手だけで倒すと心の中で誓う。
「ベルン!久しぶりだな!」
スケッゴルドはディートリヒへと抱きつき、肩を組む。
「久しぶり、スケッゴルド。相変わらず男臭いね。」
「おうとも!て言うか、最近は訓練所に顔を出してなかったじゃねーか。体調でも崩したか?」
「うん、そうだね。少し風邪を引いてしまってね.......暫く休校。でも安心して、また師匠やロキから修行を受けられるよ!」
ディートリヒとスケッゴルドは鍛練仲間なのである。ディートリヒはジークフリートに師事してもらい、スケッゴルドはロキに修行をつけてもらっていた。時折、合同で鍛練を組むこともあり、二人は親しい友人関係へと昇華していた。
「げっ........ロキの奴が帰って来たのかよ。」
「とか言いつつ嬉しそうな表情を隠せてないよ、スケッゴルド。」
「う、うるせぇやい!」
そのスケッゴルドの対応に頬を膨らませるモルド。
「そんなにロキくんがいいんだ」
「あぁん?そりゃロキの奴には世話になってるからな!」
「そう言う事を言ってるんじゃない、バカ........」
青春ラブコメを目の前で見せられ、ディートリヒは苦笑をすると「a」組へと戻る為に歩き出す。
「どうやら僕はお邪魔なようだ。モルドさん、頑張ってね。そいつかなりの鈍感だから。じゃあ二人とも、また後でね。」
「し、知ってわよ、そんなこと........」
「おう、また手合わせしようぜ!」
「a」組へと向かうディートリヒ。その途中で生徒会に属する序列四位と鉢合わせてしまう。
「げっ、剣帝..........」
「「げっ」とは失礼な。ふふ、ヒルデちゃんにこてんぱんにされたって聞いたよ。もう怪我は大丈夫なの?」
煽るようにミストを挑発する。ミストはどこかばつの悪そうな顔で「うん」と答えた。
「っ、クラスに行きたくないんだけど!ベルン、あの女殺しといてくれないかなぁ!次元斬りで一発でしょ!」
「うん.......全然反省してなくて安心したよ。」
「a」組への扉を開け、二人はクラス内へと足を踏み入れる。
「ディートリヒ!よかった........はやくあの二人を止めてくれないか!俺では止められん!」
スノッリが慌てた様子で掛けよってくる。教室へと目を向けるとやはりあの二人が激昂した様子で言い争いをしていた。
「覇王って戦闘職じゃなかったんですかぁ?負けて悔しくないんですかぁ?」
「貴様とて負けたではないか、ゴリラ女。聞いたぞ。お前は敵に情けを掛けられて殺されなかったそうだな。それに挙げ句の果てには保健室までおぶられたと聞く。情けない。情けなさ過ぎて笑いが堪えられんわ!あっはははは!」
「ぐぐぐ..........道化師と副会長の戦闘の余波で死んだ癖に」ボソ
「あぁ?」
「んん?」
案の定、二人は取っ組み合いを始める。
「ちょ、まじでやめ、やめろぉー!!」
その二人を引き剥がそうと序列三位のレギンが奮闘するが、直ぐに弾き飛ばされてしまった。ディートリヒは隣に立つミストへと視線を向け、彼女達を止めるように言う。
「僕に死ねと?はっ、ベルンにしては面白い冗談じゃないか。勝手にやってればいいんだ。いつものことだろう。」
生徒会の職務を放棄し、自分の席へと去っていく。とは言え、彼女の言う通り、これこそが一年「a」組の日常なのだ。ディートリヒは苦笑をすると、ブリュンヒルデ達を止める為に足を踏み出すのであった。




