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冥界女王への懇願日

「でへへ........ジークしゃんかっこいいですよぉ、ジークしゃん」


ルーン魔術で写し出された映像を見ながら、涎を垂らす冥界の女王。その隣でガルムは頭を抱え、女王を見守っていた。


「ヘル様........すっごい生徒達が死んでいるのですが、生き返らせないので?」

「生き返らせますよぉ........けれど、ジークフリートさんに頼まれれば、の話です。もしジークフリートさんが誰かに殺されるなり、監禁されるなりして『学長室』に辿り着けなければ誰も生き返らせて上げません。」


冷たい眼差しでルーン魔術による映像を指でなぞる。


「そのまま冥界に帰っていちゃこらします。」

「えぇ.............」


ジークフリートが死ねば魂はヘルヘイムへと送られる。そして彼女はその他の命に微塵の興味もない為、生き返らせずにヘルヘイムへと帰るだろう。被害を放置して。


「そんなことしたらジークフリート君に怒られますよ。」

「う~ん......そうでしょうか。ジークフリートくんの魂って清廉潔白で綺麗って訳ではないんですよね。少し濁っていますね。冷酷で思慮深く、決断を迫られれば被害の少ない方を選ぶ。そんな現実主義かつ冷淡な側面があるんです。」


嬉しそうに語るヘル。ガルムは静かに耳を傾ける。


「死んでしまった生徒達については怒ったふりはしましょう。ですが心の底から怒っているのかと言われればそうではないのです。」

「要約するに偽善野郎と言うことですね。」

「優しい振りを続ける自己中心的な屑ですね、はい。ですがそこが可愛くて愛おしいと思いません?あれ程ひねくれてしまったのは十中八九、あの美しいお顔のせいでしょうが、必死に抗う姿を見ているとゾクゾクしますよね。地上に来て良かったなって常々思います。あぁ、早く老衰で死んでくれると嬉しいのですが.............彼との死後が待ち遠しいです。」


ガルムは両手を合わせ、祈る。


(ジークフリート君..........なるべく長生きをして下さい。)


二人は外の様子など気にせずに学園長室で優雅に談笑をしていたのだが、突然とバンッ!と扉が開けられる。



「_____________ヘル、みんなを蘇らせてくれ。」



冥界の女王ヘルはにこりと微笑みを見せると「喜んで」と答えた。


(うわぁ、ヘル様......凄く嬉しそう。)


年甲斐もなくだらしない笑みを見せるヘルにため息を吐く。尻尾があれば、ぶんぶんと左右に揺れていたことだろう。


(ジークフリート君と会うまではあまり喜怒哀楽を見せない女王様でしたが.............随分とお変わりになられましたね。)


犬のようにジークフリートの頬を舐める主人にドン引きをした表情を見せるガルム。ちなみにジークフリートは嫌な顔をしているが、反抗はしないでいた。何故ならば、耳元で「生き返らせたいんですよね、ね?」などと恐喝し、変態行為に及んでいるからだ。


(ああ見えて.........死を司る唯一神なんですよ。)

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