暴動の沈下
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「______________愛慕しよう、欽慕しよう、敬慕しよう。」
道化師は執務室の扉を開け、堂々と入ってくる。その姿はかなりの傷を負っており、恐らく此処に辿り着くまでに誰かしらと戦った証拠であることは明確に見て取れた。
「我が華ジークフリート。悲しいよ、恋しいよ。君と過ごさない日々は一日千秋。漸く会えた。やはり君は冷艶清美だ。助けよう、支えよう。そら、勇者は何処に。ふふ、記憶の果てに。」
「何を言って__________________」
道化師の覚醒能力が発動する。そしてシグルドは無す術もなく、幻術へと囚われてしまった。
「.........兄さん、ごめん。」
ジークフリートはシグルドの首を跳ねる。慈悲はない。殺れる時に殺るのが戦士のモットーであるのだから。
「ロキ、来てくれて助かった。」
ジークフリートはその場へと座り込み、深く息を吐き出す。
「ジークフリートの為ならなんだってするよ......僕の唯一の友達だからね。」
ロキは足を引き摺りながらも、ジークフリートへ近付こうと動く。
「ひっひっひ.........でも間に合ってよかっぐ」ザシュ
突如としてロキの胸部から腕が突き出る。
「ロキッ!!!」
ジークフリートは叫んだ。手にはロキの心臓が見える。最早助からないのは明白。
「くそ、誰が!............っ、あんたは」
即座に立ち上がり、槍を構える。だが、心臓を貫いた人物を見て殺意が冷めていく。
「やった............やりました..............」
ロキの背後から聞こえるか細い声の正体。
「.......はぁ.........はは.........ジーク......フリート........様..........か、......勝ちまし.........た」
それは黒髪カチューシャをした血塗れの副生徒会長だった。腕を引き抜き絶命したロキは地面へと倒れる。そして引き抜いた本人もその反動で後ろへと尻餅をつくように倒れた。
(その状態でロキを追って来たのか........)
エイルの状態は瀕死に近い状態だった。寧ろ何故生きているのかすらも分からない程の重症。彼女の意識は朦朧とし、身体の至るところは切り刻まれ、打撲跡も多く見える。それに血が至るところから流れ出ていることからじきに出血多量で死ぬことは伺えた。
(.........なんという執念)
エイルはただその場でジークフリートの名前だけを呼び続ける。
「公爵令嬢..........道化師...............倒し.......ジーク......様........」
ジークフリートはエイルの側へと寄り、彼女の手を取った。
「_______もう休め。」
視界がもう見えていない。身体の感覚もなく、ジークフリートがエイルの手を握っていることすらもエイルは感じられない。
「ジーク......フリート.......さ........ま.......______________」
そしてジークフリートの腕の中でエイルは力尽きた。ジークフリートはエイルの瞼を下ろし、立ち上がる。
「________________学長室に行くか。」
「は、はは!!どうだ、参ったか!!」
ファフニールの背に乗るカーラは興奮した様子で地面に伏すブリュンヒルデを見下す。
(とは言え、ファフニールの再生力が追い付いていない。後少しでも戦闘が長引いていれば俺は負けていた。)
アングルボサの呪い、最上位個体の一体「ファフニール(成体)」の特質すべき性質はその不死性にある。殺しきるには細胞の8割を死滅させなければならない。
「てめぇの敗因はその傲慢さだぜ。聖女の力を過信しすぎて最後には墓穴を掘る。てめぇはガス欠でクラス序列戦やクラス対抗でも同じ負けかたをしてやがったもんな。」
聖女の圧倒的性能にブリュンヒルデは頼りすぎていた。揉手や小技、技術はなく、単純な力押しで戦闘を行うそのスタイルは隙が大きく生まれやすい。
「___________まぁいい。とどめをさしてやる。」
ファフニールへ命じ、その巨大なドラゴンの鉤爪で肉体を切り裂くように命じる。ファフニールはその大きな太腕を空中へと上げ、ブリュンヒルデへと振り下ろした。
「..............っ」
ガガアアンン!!と大きな衝撃音が鳴る。何事かとカーラはファフニールが切り裂いたであろうブリュンヒルデの方へと視線を向ける。
「ジークくんは渡さない.............ジークくんはブリュンのものぉ..........」
鉤爪を素力だけで受け止める。連続しての覚醒能力発動に魔力を出し惜しみしない戦闘スタイル。故に余力はもうない筈だ。
「うがああああああああああああああああっっ!!!!!」
だが聖女は雄叫びを上げ、巨体なファフニールを押し返す。火事場の馬鹿力。
「おいおいおいおい!!嘘だろ!!」
カーラはファフニールの背から脱出し、瓦礫の上へと着地する。ファフニールは反転し、裏返りとなってしまった。そして聖女が浄化した部位の再生が間に合っておらず、ファフニールは起き上がる事が出来なかった。
「ふしゅううううううううう...........聖女嘗めんなぁ!!」
息を吐き出し、ひっくり返ったファフニールへと中指をさす。最早聖女の面影はない。まるで闘技場に立つ、拳闘士のように雄々しい。そしてブリュンヒルデはファフニールへとよじ登り、全身全霊の聖光を拳へと付与する。
「これでおしまい...........このとかげ野郎ぉおおおおおがよぉおお!!!!」
ブリュンヒルデの現状扱える最強技『鉄拳☆制裁』を残りかす全ての余力をかき集め、拳に込める。その一撃がファフニールの胸部へと拳が突き刺さる。
『ギュルア!!!!??!!』
拳を食らったファフニールはうめき声を上げ、苦しみはじめた。何故ならば胸部を中心として肉体が浄化していくのだ。再生仕切っていない部位も含め、既に6割近くの肉体が浄化されてしまった。そして徐々に侵食するように身体の残りも消えはじめる。
「......................聖女って戦闘職だったけ?」
ファフニールは頭部を残し、完全に消滅してしまった。そして聖女は本当に力が尽きたのか瓦礫の上で眠るように意識を完全に手放す。
「俺の覚醒能力を打ち破ったとは言え、勝負はお前の負けだ。ジークフリートの事は潔く諦めな。っても聞こえてないか。」
カーラはその場に座り込み、辺りの惨状を見渡す。そして大の字になり空を見上げた。
「冥界の女王が死んだ一年どもを生き返らせたらすっげぇ~恨みを買うな、こりゃ。へへ、でも俺は聖女に、七英雄の一人に本気の戦いで勝ったぜ。ジークフリート........褒めてくれるかなぁ」




