飢人
「構いませんわ。この剣ならば腐る程ありますもの。」
異空間から黒剣を取り出すアスラウグ。
「そうか。ルーンを施した人造魔剣ということだね。」
アスラウグの本質は敵の覚醒能力封じ、そしてHP吸収、それに付け加え、クリームヒルト以上の剣術だ。だが、それだけでは火力面で劣る。
「ご明察。」
故のルーンを刻んだ人造魔剣を主武装とする。アスラウグの体力面が完全である場合、吸収された生命力は人造魔剣へと流れる仕様となっている。
(一定量の生命力が注がれると、魔力を断ち切る効力を宿すようになりますわ。)
けれど、剣を使わず生命力を蓄え続けると魔力暴発を起こし、半径10mを更地へと変える。
「ラウンド2と行きましょう。魔力障壁はもう当てになりませんことよ。」
盾が崩されたと言うのにアスラウグの台詞に頬を歪ませるシグルド。
「あぁ、そうだね...........せっかくの舞台だ。もっと戦いを楽しもう。せっかくジークフリートが用意をしてくれたのだから。」
ジークフリートは冷や汗を浮かべる。
(....................闘争心に飢えている目。)
ブリュンヒルデのことは確かに視野には入れていたのだろう。恋路を優先させ三人組を自由にさせていたことは事実だ。
(ベオウルフ先生が時折見せる獣のような眼光。)
だが、兄が真に求めていたのは恋路と平行して勝負になる闘争だ。生と死を感じる本気の戦い。刃を交え感じられる興奮。
(ヘルも言っていた気がする........兄さんは戦いが好きなのだと)
けれどこれまで誰一人として兄さんとまともに戦えた者はいなかった。もちろんヘルを例外としてだが。べオウルフ先生と同じ性質を持つ兄。早期に決着をつけなければ大変な事になると戦士としての感が警報を鳴らしている。
『勝利の剣』
グローアが剣把から手を離すと一人でに剣は宙へと舞う。そしてロングソードを腰に差す鞘から抜き戦闘態勢へと移行する。
(グローアも恐らく兄さんの違和感に気づいたんだ。)
グローアは次の数手で決めにいくもりなのだろう。するとシグルドがいる空間が突如として歪み始めた。
「________________ミスった」
ディートリヒは『次元斬り』を予備動作なしで発生させ、シグルドを真っ二つにしようとした。
「いい、いいね____________」
だが、未来予知にも等しい動きでそれを避けるとディートリヒへと向かい低空に跳躍する。
「________________捕まえた」
胸ぐらを掴み引き寄せられる。そしてディートリヒは魔剣により、左腕を切断されてしまう。
「あがぁっ、」
その場へと切断部を抑え、倒れるディートリヒ。それを見下ろすシグルド。
「左腕のお返しだよ、剣帝。そら、立ち上がって勇気を見せてくれ。」
アスラウグとグローアが後方から斬りかかる。しかしシグルドは後部を見ずに魔剣で斬撃を受け止める。
「切り裂け___________グラム=バルムンク」
アスラウグの黒剣とグローアのロングソードが砕け散る。
「ッ、勝利の剣よ!!貫け!!」
地面から飛び出るように勝利の剣はシグルドの顎を狙い上昇する。
「はぐっ!!?はは!!もっとだ!」
勝利の剣はシグルドの顎を裂き、右目を奪う。左腕の欠損、そして今度は右目を失った。だが、シグルドは楽しそうに笑う。
「っ、兄さんッ!!!」
ジークフリートもまたグローアとアスラウグに混ざり、シグルドへと攻撃を仕掛ける。
「く、あはは、痛いな!!」
三人の同時攻撃をギリギリで避け続けるシグルド。だが、右目の視界が潰れた事で攻撃を完全には避けられずに数多の切り傷が出来ていく。
(刻限か____________)
シグルドは低くしゃがみこみ、グローアの膝へと蹴りを入れ、体勢を崩す。
「くそ、が」
そして即座にジークフリートの腹部へと全力のエルボーを喰らわせる。ジークフリートは血の混じった胃液を吐き出すと前方へと倒れる。
「そん、な」
最後にアスラウグの黒剣の攻撃を口で受け止め、噛み砕く。
「嘘......ですわよね?」
「嘘じゃないさ。」
シグルドはグラム=バルムンクでアスラウグの心臓を穿ち、そのまま壁際まで突進する。
「がはっ!!」
アスラウグは最期の言葉を残すことなく絶命する。腹を抑え倒れるジークフリートは絶望する。
(ヤバい......ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!)
アスラウグが死んだ事で、シグルドは『勇者』を取り戻す。そして現在の勇者は満身創痍に近い重症を負っている。それを意味するは窮地に近くいると言うことだ。
「________________私は勇者だ。」
勇者の覚醒能力は窮地に立たされるほど勇者の力は数十倍と膨れ上がる。




