兄さんは怪物である
魔剣グラム=バルムンクは全てを切り裂く最強の剣である。真の能力として「主人に絶対的な勝利をもたらす代償としてその分の因果を主人へと返す」と言う能力が備わっている。とは言え、これは最終奥義になるためシグルドは使用を控えるだろう。
「強いもの苛め、ね。随分と自信家なことだ。」
先ず、打ち合ってはならない。どのような獲物であれ防ぐことは許されない。
「絶対にグラム=バルムンクは避けてくれ。あれは何でも切り裂く。どんな聖剣や魔剣であろうとも。」
シグルドが何故地上で最も最強の戦士であると言われるのか。それは一重に魔剣の存在と魔力量の多さが他を抜きん出ているからだ。最強の矛と盾を両立させている。「勇者」と言う職業適正は寧ろおまけと言ってもいい。
(だからといってアスラウグに覚醒能力を解いても構わないとは絶対に言わないが。)
勇者の覚醒能力、それは窮地に立たされるほど全ての性能を数十倍と引き上げる壊れ性能。
(こんな場所で倒れる訳にはいかない.........亡くなった母と弟に誓った。私は守るとッ!とか言って漸く倒せそうだと思った矢先に殺されてしまう未来が容易に見える。)
そんな主人公染みたふざけた能力を有している。そのおまけを封じて尚も目の前の兄は化物なのだ。
(だからこそ、冥界でのヘルの異常性が分かるだろう。この化物のフルパワーを真正面から潰したんだ。神話の時代が俺は怖いよ。)
とは言え今はヘルの事ではなく目の前の兄をどう殺害するのかを考えなければならない。
(............こいつらじゃなくてロキが来てくれれば一番簡単に決着はついたが)
物理系に対しては無双を誇るのに精神系統の能力では脆弱な面を見せる勇者。
(無い物ねだりをしても時間の無駄、か)
寧ろ、ロキの覚醒能力が強すぎるのが問題なのだが、それはあまり言及しないで置こう。
(弱点と言える弱点が「狂戦士」と「聖者」だけなのが凄いよな。寧ろクラキ側がロキに対して特効過ぎる気がするが......)
とまぁ色々と頭の中で考えているのだが、目の前ではディートリヒ、グローア、アスラウグの三人が連携を取り、兄さんと激しい戦闘を繰り広げていた。
(おれ、こう見えてあの二人に勝ったんだぜ..........)
遠い目をしながら四者の戦いを見守る。お前もはよ入れ、と言いたいのは分かる.......分かるけど、レベルが高過ぎて入れねぇ..........
「____________頑張ってっ!負けないで!」
だからヒロインのようにか弱い声援を送ることにした。
「ジ、ジークフリート様!?アスラウグ、この命に変えてもジークフリート様の期待に応えますわ!!」
「師匠..........僕が師匠を守ります!!」
アスラウグとディートリヒの闘志が向上する。
(よし、バフが掛かったな。)
その横で戦うグローアはジト目で此方を見てくる。しかも、お前もこっちに来て戦えと目で訴えてくる。前述の通り、入りたくても入れねぇんだよ!
「え.........ジーク怖い........戦えないよぉ」ふぇええ
上目遣いで怯えた小鳥のようにしゃがみこむことにした。その姿を見たグローアの剣からはイラつきと怒りが含まれていたと後のシグルドは語る。
「___________じゃねぇ!!ジークフリート!!お前もこっちに来て戦え!!」
あ、グローアがぶちギレた。流石にふざけ過ぎるのも良くないらしい。アスラウグは小声で「か、かわいい.....」と鼻血を流しながら戦っているというのに。
「小蝿のように鬱陶しい_________散れッ!!」
シグルドが痺れを切らし、三人を剣圧で吹き飛ばす。
「先ずは君を狙うとするよ、ロズブローク伯爵令嬢。」
そしてアスラウグへと狙いを定めた。彼女を先ず叩き、「勇者」の力を取り戻すつもりなのだろう。
「___________私を甘くみないで下さいまし」
アスラウグの首を狙った一撃は後方へと上半身を倒す事で回避する。そして黒剣をシグルドの右太腿へと向け投げつける。
「ッ、」
魔法障壁を突き破り、右太腿へと黒剣が突き刺さる。シグルドは一瞬怯み、その隙を狙い、アスラウグは大きく跳躍するとシグルドから距離をとった。
「魔剣がネーデルラント家の特権だけだとお思いにならなことですわね。」
黒剣を太腿から抜き取り、地面へと投げ捨てる。
「魔術無効化の黒剣...........」
シグルドはグラム=バルムンクを用い、地面に転がる黒剣を切り裂く。黒剣は折れ、剣としての用途は失われる。
「すまないね。君達を蘇らせた後にネーデルラント家から正式に弁償させて貰うよ。」
シグルドの絶対的自信は変わらない。寧ろ、表情がどこか嬉しそうだった。
(兄さん.......まさか..........)




