アスラウグは王道に憧れる
「_________ジークフリート様」
ウルズの泉にあるベンチにて一人黄昏れていると、アスラウグが声を掛けて来た。
「保健室の件だろ、どうせ。」
ブリュンヒルデが狂乱して保健室を吹き飛ばし、クリームヒルトを殺害したなんて噂が流れてる。
「えぇ。生徒会が事件は解決したと公表しましたが、聖女は暫くは停学とのことです。」
「それでクリームヒルトは行方不明と。」
恐らくブリュンヒルデはクリームヒルトを匿っているのだろう。生徒会の三人を寄せ付けない為に。
(ブリュンヒルデはああ見えて頭が回るからな。)
暫くは動かない方が身の為だと考えたのだろう。
「ジークフリート様、わたくしをお側に置いて下さいまし。今や貴方様をお守り出来る戦力はわたくしを置いて他におりません。」
確かに「c」組の様子から味方をして貰うのは難しいかも知れない。
「あぁ、出来れば宜しく頼む。俺にはお前しか頼る奴がいないらしい。」
「えぇ、えぇ!」
嬉しそうにアスラウグは声を弾ませる。そして隣へと座り腕へと引っ付く。
(..........ふふふ、計算通り。)
アスラウグは心の中で人には見せてはならない笑みを浮かべていた。
(わたくしが覇王や聖女に当初から助力をしてさえすればジークフリート様の取り巻きをしていたクズなど、敵ではありませんでした。)
単体での能力は強力な三人組だ。けれど、わたくしの覚醒能力を使い、二人がかりで事に当たれば相手を無力化出来る。「暗黒騎士」の覚醒能力は相手の覚醒能力を封じた上、相手の生気を吸い付くす。そして吸った生気の分はわたくしに還元され続ける。
(純粋な素の戦闘技術で戦わなければならない環境を作りだすのです。殆どの人間は職種適正に重きを置き、他の鍛練を怠る傾向にあるのは序列戦を観戦すれば一目瞭然。)
話を戻すが、クリームヒルトに味方し、三人組の対処に当たっていれば打倒は容易な事だったのだ。けれどそれをしなかったのはこの状況を生み出す為。道化師や剣帝、冒険王はいない。覇王も消えた。そして聖女も運良くドロップアウト。
(わたくしの時代が到来したのですわ!)
婚約を破棄されてから早五年。最早我慢の限界に近付いていた。けれど、ようやくジークフリート様の隣を独占出来ている。このわたくしが!
「_____________シグルド兄さんに相談しようと思う」
「..........へ?」
変な声が出てしまう。直ぐにジークフリート様の顔へと視線を向ける。
「彼奴ら、生徒会なんだろ。なら職権乱用すんなよって注意して貰えば一発だろ。」
ごもっとも。ですがこの学園は弱肉強食の世界。やめて頂きたい。
「学園長にも一応報告しておくか。」
いやいやいや、それは王道じゃないでしょ......これからわたくしとジークフリート様が協力して生徒会と戦っていく物語になるはずなのに。それで徐々に絆が深まって告白されるのですわ。
『アスラウグ、やっぱお前がいないと俺はダメな男だ。こんな情けない男だけど、俺はアスラウグを幸せに出来るように頑張る!好きだ、他の誰よりもお前が好きなんだ!結婚しよう!』
きゃああああああああああ♡アスラウグ秒ではいって言っちゃうぅ♡
「____________既に学園長には報告済みです。生徒同士で解決しろと。それにシグルド様はどうやらジークフリート様個人に問題の対処に当たって欲しいようで、生徒会役員達の職権乱用に目を瞑っているようですわ。」
(もちろん全てでまかせですが)
ジークフリート様にはわたくしと協力して生徒会のメス犬達の駆除をして頂きたい。
「..........はぁ、まじか。それじゃあフロールフ先輩やアムレートに相談「無駄です。そのお二人方も副生徒会長側についておりますわ。特にフロールフ殿下はジークフリート様のことを敵視しておりますし。」
事実、ブリュンヒルデに恋をしているフロールフはジークフリートのことを良く思っていなかった。
「アムレートくんも怯えた様子だったし、生徒会では肩身が狭いのか。」
ジークフリートはエイルが「c」組に来た際のアムレートの様子を思い出す。教室の隅の方に隠れ、震えていたのだ。
(よし、辻褄はあっている。平和的な解決?ありませんことよ!わたくしは吊り橋効果も狙っているのです。劇的な物語を紡ぎ、ゆらりと絆を結んでいきましょう。)
ふふふとジークフリートに聞こえないように笑みこぼすアスラウグなのである。
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