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クリームヒルトの敗北

クリームヒルトはホームルームを放り、「c」組へと向かった。追放されたのは分かる。他者から疎まれるのも理解出きる。孤高かつ唯我独尊を貫いて来たツケが回って来ただけだ。力では相手を蹂躙できる。けれど精神面は戦闘力ほど強靭ではない。一人は相手できよう。だが、クラスの大半のものが個を非難すればどのような者であれ、深く傷付く。



(____________今問題を起こせばジークフリートと離ればなれになってしまう。)



クラスメイト達を圧殺することは可能だ。けれどそれをするほど愚かではない。学園の者を容赦なく殺しても見ろ。勇者シグルドを含めた精鋭達が私を討伐しに来る。そして捕まった場合は国に連行され、処刑されるだろう。父上にはこれ以上、迷惑は掛けられない。


(父は私の爵位損失より、私自身について心配をしてくれた。)


国外追放を言い渡され、父は私の頬を平手打ちした。だが、涙を流し、私を包容したのだ。「処刑はない、安心しろ」と強く抱き締める。


(あぁ......私は愚か者だ)


そう己を恥じた。一時の気の迷いで公爵令嬢という肩書きを捨てたのだ。


(.......だからこそ樹立させなければならない。)


ジークフリートの掲げる『スローライフ計画』を完遂させる。ジークフリートを王と崇め新しい国を建国する。平和と平穏な世界を目指すと道化師は夢物語を語っていたが、あの瞳と覚悟は本物だ。


「ジークフリートの妃となり、絶対的な王政をひいてやる。」


ジークフリートの言う暮らし安い世界へとこの世界を変革させよう。そう心の中で覚悟を決めると「c」組へとたどり着く。そして扉へと手を掛けた。


(だが今は私を慰めて欲しい。傷付いた私の心をお前の優しさで埋めてくれ)


教室内へと足を踏み入れる。


「ちょ、あんた、やめっ」


しかし、現実は非常かな。信じられないものを目にした。



「___________ジークフリート様、やはり貴方こそが私の運命なのです。」



勇者シグルドに次ぐ三年生、「a」組序列二位がジークフリートを押し倒し、馬乗りになっていたのだ。


「何を......している?」


ヴァルハラ学園副生徒会長エイル。ヴァルハラに置いて二番手に強いと噂されている女傑。七英雄である「覇王」や「聖女」を差し置いての評価でもある。


「あら、ミストが貴方を虐めて壊すと豪語していたのですが、失敗したようですね。」


淡白とした様子でクリームヒルトを見ると、直ぐにジークフリートへと向き直り首筋へと唇を這わせていくエイル。


「いい匂い...ちゅ...しゅき...ちゅ...ジークフリートしゃま..ちゅ......はぁ....ちゅ」


キスマークをマーキングするようにつけていくエイル。教師や他の生徒達は序列二位かつ副会長の持つ権力を知っている為に何も言えないでいた。


「ちょ、助け、っこしょばゆい、からっ」


生徒会の力はこの学園では特別に強い。そして新学園長となってからは生徒会はより強固にその立場を確立してしまった。


「___________離れろ、下郎」


クリームヒルトはエイルへと向かい人が耐えらぬほどの重圧を浴びせる。


「.......あらら」


地面へと顔をつけるエイル。


「邪魔をしないで貰うと嬉しいのですが......しょうがないですね。」


しかし、エイルは何事もなかったかのように立ち上がり、クリームヒルトの前へと立つ。そして長身のクリームヒルトを見上げると鋭い一撃がクリームヒルトの腹部へと入った。


「うがっ、」


腹部を押さえ、その場にて膝をつくクリームヒルト。その一撃の重さは聖女の鉄拳制裁にも比類し得る程の威力。それをもろに喰らってしまったのだ。クリームヒルトは胃液を吐き出し、苦しい面持ちでエイルを見上げる。


「あぐあっ!!!!」


だが見上げた瞬間に顔面へと拳が穿たれ、教室の端へと飛ばされてしまう。


「クリームヒルト、クリームヒルト________」


壁へと衝突し、意識が朦朧とする。


「_________貴方のような問題児は此処で粛清しましょう。」


こちらへと向かいゆっくりと歩いてくる生徒会副会長エイル。


(身体が動かない......ぐっ、意識が)


意識を失いそうだ。


(私は負けるのか.......このような場所で.......)


クリームヒルトは近付い来ているエイルではなく、ジークフリートを目で探した。せめて止めを刺される前に愛しの男を視界に焼きつけたい。


「ジーク.........フリート.......」


エイルは倒れるクリームヒルトへと最後の一撃を叩き込もうと拳を放つ。


「おっと_________________」


だが、その一撃はジークフリートにより止められていた。それが意識を失う前に見たクリームヒルトの記憶だ。

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