ブリュンヒルデの憂苦
..........いやいやおかしいおかしい!
(本来の計画だと国外追放からのジークくんとのいちゃラブときめきメモリアルだったの......どう言うこと?)
フロールフ先輩はにこにことした表情で自分を見てくるけれど冗談じゃない。ブリュンはジークくんとしか結ばれないの。他の有象無象に興味なんてない。ブリュンヒルデにとっての白馬の王子様はジークフリート、その人だけ。
「ジークフリートやクリームヒルトが学園へと向け、馬車を出したと報告があったよ。」
そんなのものすでに知っている。ジークくんは貴族の地位すらも自ら断とうとしていた。それはいい。そっちの方がブリュンと卒業後に一緒に暮らしやすいのだから。だけど、世界蛇を倒すという目的は看過できない。冥界の女王でさえ全滅に近い被害を出していると言うのに地上世界で戦いでもして見ろ。多くの人々が死ぬことになる。
(ジークくん以外は正直にどうでもいい.....だけど、ジークくんがもし死んだりしたら)
ブリュンヒルデは自らの命を断つ。
「そろそろ私も学園に戻ろうと思います。」
「そ、そうか。なら僕も一緒に「いいえ、今は一人で考えたいことがあるので」.....わ、わかった。それでは学園で会おう。」
ブリュンヒルデの圧にあてられ、後退るフロールフ。そして、無念とした表情でクラキ王の乗る王族専用の馬車へと搭乗した。その姿を無心に眺めながら、ブリュンヒルデは思考する。
(あのくそ女のせいでフロールフ先輩がブリュンに恋慕していることが公衆に知れ渡ってしまった......よくない。「聖女」って肩書きがあるからか、各貴族や王族達の反応が悪くないのも気にいらない。このままトントン拍子でフロールフ先輩との婚約が決まって見ろ。ブリュンヒルデは暴れるぞ。)
クリームヒルトはそんなブリュンヒルデの姿を見てほくそ笑むのだろう。許せない。それにジークくんがあのくそ女から逃げ出した過去があるにも関わらず、以外と優しくて寛容であることも好ましくない。
(どうすればいい.......ブリュンヒルデはどうすればジークくんを独占出来るの?)
この状態のまま学園を卒業すればジークくんは冒険者になる。そして恐らくクリームヒルトはそれに追従する。
「嫌だ嫌だイヤだぁ!!ジークくんはブリュンと辺境でパン屋さんをすればいいんだ!」
こんなに好きって感情が押さえられないのになんでジークフリートはブリュンヒルデにこうも冷たいのだろう。寂しい。
(もっと優しくしてよ.........うぅ)
涙目になる。ジークくんに会いたい。今すぐに会いたい。今さっき別れたばかりだけどもう会いたい。好きが止められない。
「___________大丈夫か、ブリュンヒルデ。」
「会長さん......」
涙をシグルド会長に拭われる。ジークフリートの面影を感じる。だけど、ジークくんじゃない。
「ジークくんは本当に世界蛇をやっつけようとしてると思いますか。」
「はは、あれは彼奴の方便だよ。崇高かつ達成不可能な夢を掲げれば実家に帰って来なくてもいいだろう?」
本当にそれだけなのだろうか。ジークくんは嘘つきであるけれど、一定のことに対しては真面目だ。世界蛇を倒すと言ったあの表情に嘘はなかった。そこだけが引っ掛かってい。
「ジークは何かを企んでいますよ.......何か、大きな」
詳細なことは分からない。けれど、直感がそう告げている。好きな男は単純な人物ではない。複雑な感情と信念を元に動いている。
(あのロキと言う道化師と行動を共にしてからジークくんは少しだけ変わった......)
何か危ない、触れれば火傷してしまいそうな、そんな危険な何かにジークフリートはなろうとしている。
「会長、ブリュンヒルデは学園に戻ります」
突き止めなければ.......
(恋する乙女として)
...............聖女として。
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