表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼になったので配信者になる現代百合  作者: 川木
おまけ 吸血鬼パワー編
46/52

吸血鬼パワーの練習

 シロの血が美味しすぎて困っちゃうほどだ。シロも私の血が美味しすぎるって思ってくれたのは嬉しいけど。でもちょっと疑問はある。


「ていうか、恋人だから美味しいの? 前と味違ってた?」

「うむ。以前は普通に健康的な乙女として普通に美味かったのじゃが、そうではなくて……なんといえばよいか」


 シロはまだぼんやりしているような、顔を赤らめて私と目を合わせようとしない。

 そんな顔を、私の血を飲んでしているんだ。そう思うと体温があがってしまう。こんな興奮、人だったら考えられないだろうな。吸血鬼だけの特権なんだろうか。好きな人に、血を飲まれる快感って。


「うん、シロの血、うまく説明できないくらい美味しかった。……あれ飲んじゃったら、豚の血とかふつーだったよ。あー、また飲みたい」

「茜は……まあ、よいが。気を抜くと飲みつくしてしまいそうなほど美味じゃったからの」

「わかる」


 めちゃくちゃわかる。ていうか、私ってもしかして吸血鬼適性高いのかも知れない。こんなに血を美味しく感じるんだから。まあ、吸血鬼になったら誰でもそうなのかも知れないけど。


「ちなみに私はね? シロになら、飲み干されてもいいよ?」

「……なに恐いこと言っておるんじゃ」


 本心からだったのだけど、シロは目を見開いてから呆れたように言った。恐いかな? まあ、シロになら殺されてもいい、みたいなことだし、そうか。物騒だね。

 私の場合はシロのお陰で生きてる恩人でもあるから、シロのためなら死んでもいいっていうのはあるけど、それだってさすがに遊び半分で意味なくは死にたくない。シロとずっと一緒に生きたい。

 それは当然だ。だけど、さっきの吸われてる瞬間が幸せすぎて、シロが私を我慢できずに吸い尽くしてしまいたいほど求めてくれた結果として死んでしまったなら、きっと悔いはないだろうなって思っちゃったんだもん。


「シロは飲まれるの、どうだった? シロの血美味しいし、飲むのもすごくいいけど、飲まれるのも、すごく気持ちよかった。シロはそうじゃなかった?」

「……のーこめんとじゃ」

「隠す必要ある?」

「汝はなんでもあけすけすぎじゃ。ちょっとは恥じらいと言うものを覚えよ」


 シロは何かを恥ずかしがっているようで、めっとでも言いそうなお姉さんムーブで私を注意してきた。うーん、可愛い。


「私だって恥ずかしいと思うことくらいあるけど。まあ、シロが恥ずかしいなら無理に聞かないけど。とりあえず、血の吸い方はわかったよ、ありがとう」

「うむ。そうじゃな。これで茜に急な吸血の必要性があっても問題ないじゃろ」


 今までそんなことなかったけど、シロの体感的には急に吸血が必要になることってあるのかな? もう無理今すぐってなる前に飲むべきでは? まあ万が一はいつでもありえるから、わざわざ否定することでもないけど。


「そうだねー。じゃあ次、さっそく霧になってみるよ!」

「うむ。そうじゃな。本当にやる気じゃな」


 血も吸ったことだし、体に吸血鬼パワーがあるうちに次の練習に移ることにする。私はソファに寝転がる。ソファにはシロも座っているので、ついでに膝枕してもらう。


「おー、シロの膝枕、いいね」

「別にこのくらいよいが、集中できるのか?」

「平気平気」


 シロの太もも気持ちいいなぁ。あ、おでこ撫でてくれた。こういうさり気ない触れ合い、なんかくすぐったいけど気持ちいい。心地よくて、寝そう。


「……はっ。ごめん、無理だわ。普通に寝そうだった」

「うむ。茜はいつでも寝れるの。よいことじゃ」

「ありがとうございます」

「わらわは横で見ておこう。集中するんじゃぞ」

「はっ。了解です、できてたら教えてね」


 シロは猫になって机にのってくれたので、私は改めてソファに寝転がる。霧になる。吸血鬼の力にあふれた今なら、前より簡単なはず!

 ……ん? でもシロに吸いなおしてもらったから別にパワー同じなのでは? あ、気づいてしまった。まあまあ。


 でもシロに血を吸われた時、すごいふわふわして自分が消えていきそうな感じだったし、あの感じなら霧になるかも。よし。さっきの感覚を思い出そう。


 ふわふわ、シロ、吸われていく、シロ……溶けていくような感じ……私は消えて、霧のような何かに…………


「おおっ、茜! できておるぞ! 霧になってきておる!」

「えっ」


 パッと目を開けると、なにやら視界がちょっともやっぽい。頭をあげて体を見ると、まだあるけどちょっとかすんでいる感じだ。

 おお! これが私! すごいぞ! この調子だ。体に力がはいらなくて、空中に溶けていくイメージ。


 私はもう一度目を閉じて、体から力を抜いていく。血が抜かれてくように、消えていくように。


「おお。茜、完全に物にしたようじゃな。どこから見ても霧じゃぞ」

「ほんと!?」


 ぱっと起き上がって目を開け、体を見下ろす。何もない! 実際にはなんていうか、黒いもやみたいなのがあるけど、固体がない! すごい! あれ、でもすごいけどこれ体のどの部分? 感覚はなんとなくあるんだけど。

 例えば右手を動かすとどうなるんだろ? と疑問のまま右手を眼前にかざすように上げる。


「お、おおおおっ。こわっ」


 黒い靄が固まって手の形になって目の前にやってきて、どこからか普通の手が生えているみたいになっている。幽霊の手みたいで恐い。


「うむ。意識すると固体になるようじゃな。ほれ」

「あ、かが、こわっ!」


 シロがほれ、と言いながら鏡を向けてくれたので覗きこみ、靄の中に浮かぶ目玉にメチャクチャビビった。身を引いて思わずソファから滑り落ちたことで、普通に人の姿に戻ってしまった。しまった。


 え、ていうかめっちゃ怖い。何でシロ普通にしてるの。空中に腕と目玉が浮いてるんだよ?


「たぶんじゃが目を開けた瞬間に出てきたから、汝が意識して動作を行うと霧状態から意識が動いてしまうようじゃな。まあ、練習して霧でいることが当たり前になればなれるじゃろ。二回目にしては十分ではないか?」

「うーん」


 シロは慰めなのかそう褒めてくれたけど、霧で時間をとってしまうのはあまりよくない。最終目標は猫になってシロに猫の私にもえっちな気分になってほしいからだし。霧なんかはできたところで利用方法ないし。


「ちょっと霧以外目指してみる」

「真面目じゃのぉ」


 もう一度ソファに寝転びなおし、私は目を閉じて力を抜く。まず霧。霧。霧。

 さっきのふわーっとする感覚を思い出して霧になる。目を開けてないから分からないけど、多分霧になってるはず。ここからだ。


 シロの吸血鬼パワーの使い方の説明ってだいたいまとめると、こうなるって思い込む、みたいな感じだよね。不定形の力が確かに私の中にはあって、明確なイメージで動かすっぽい。つまりしっかりとしたイメージとその通りに動けって言う自信満々の意志が必要っぽい。なのでとりあえず、イメージだ。


 今私は霧になっている。いくらでも形の変わる。存在。黒いもや。これを私の望む形に変える。まずはぎゅっと集めよう。おにぎりをつくるように。

 うっ。ちょっと窮屈な何かに包まれている感じがする。これ、私の力でなっているのか。つまり成功だ。


「おっ」


 シロの声が聞こえたけど、ここはスルーする。体感的にも客観的にも変化しているみたいだ。


 えーっと、じゃあぎゅうっとしてこねこねして、猫の形にする。こんな感じかな? なんか全体的に引っ張られているような押し込められているような変な感じだけど、できた気がする。


「えー……どうかな?」


 そっと目を開ける。視界がひくい。テーブルにいるシロの方が視点が高い。ぱっと手を前にしてみると、黒い何かだ。霧ではない固形だけど、真っ黒のフェルトの人形みたいな円柱みたいな手だ。


「シロ、鏡ー」

「う、うむ」


 シロはさっき持ってきていた鏡をたてて私に向けてくれた。黒い二頭身くらいの人型の人形みたいなのに、頭にとんがりが二つ付いている。左右の手足の大きさがばらばらで地に足ついてないし、耳もあんまり綺麗じゃないし尻尾もないけど、これが私猫の第一弾だ!


「うわ、すご! 思った以上に思った通りの姿になってる!」

「なぬっ、これで合っていたのか。てっきり、思ったのと違う姿なのかと。なぜそのような不気味な姿になっておるんじゃ?」

「それは私が不器用だから?」

「? 不器用って、それは変身に関係あるのか?」

「いや、うーん」


 ない、確かにないのだけど。私のイメージで黒い塊となって粘土のように好きな形に変えるまではできたけど、そこから私の実力では可愛くならないんだよね。耳も手足も意外と同じ大きさにならないって言うか。本当の粘土ならパーツごとに作れるけど、ひと塊から生やすように粘土細工するの難しくない?

 もっとご都合主義的に、想像の形にきらっと変わる感じにイメージできればいいんだけど。


 と言うことをシロに伝えると、シロはうむ? と腕組をして首を傾げた。シロは猫の姿だけど普通に人間みたいな動きもできるんだよね。


「粘土のようにこねたりするイメージで好きな形にはできるんじゃろ? では汝の手ではなく、機械を通してイメージのものができるように考えてはどうじゃ?」

「んん? ……3Dプリンターのイメージか! シロほんとに天才だね! 採用!」


 それなら不器用な私でも間違いない! 絶対できるってイメージがあればできるんだからね。よーし、もう一回。

 私は目を閉じてもう一回霧になる。そして謎の四角い金属の機械を登場させる。そこに靄を吸い込ませる。機械はごうんごうんと音を立てて一通り揺れてから、下の部分がぱかっと開いた。そこにいるのはそう! 可愛い黒猫ちゃん!


「にゃん! と言うことで猫になってる?」

「う、うむ。なっておるぞ」


 あれ? なんか声音引いてるぞ? と思いながらシロがさっき立てかけておいてくれた鏡を見る。ちゃんとリアルな猫になっている!


「おわ! すごい! かわいー!」


 机の上にジャンプして移動して、二足歩行で鏡の前で自分を見る。メルヘーン。かわいー。やだ。振り返った尻尾も動きも完璧ー。やだー、私、可愛すぎる。子猫で想像しちゃって、ちょっと自分で可愛くしすぎちゃった。かわいー。


「……おい、茜」

「え?」


 ぐるぐるしながら自分の姿に見とれていると、いつのまにかシロが隣に来ていた。ぱっと振り向くと、なぜかそこには子猫ちゃんバージョンのシロがいた。


「かっ、わいい! シロそんな、子猫ちゃんにもなれるなんて! 可愛い! 可愛すぎ!」

「……まあ、当然じゃが?」


 シロの周りを一周してみるけど、とても可愛い。この可愛さで私と同じくらいの大きさに見えて、とってもおっきなもふもふ毛並みなのが凄く良すぎて飛び込みたい!


「シロー!」

「わっ」


 と言う訳で飛び込んだ。こんな可愛い子猫ちゃんなのに、こんなに頼りがいのあるほど大きくてしっかりして感じるし、もふもふしていてあったかくて、すごくいい!


「うむ、まあ、茜もの。可愛いと思うぞ」

「だよね! この猫の変身! 完璧だよね! ていうか猫の姿に完全になってるよね!?」

「うむ。そうじゃな手触りと言い、成功じゃな。まさかこうもとんとん拍子にいくとはの。意外と才能があったのではないか? ん、というか、意外でもないのか?」


 シロも褒めてくれたし、合格点いただきました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アカ改めクロ?アカだから赤茶のネコ想像してました。途中経過の怪しいねこもどきも笑えました。いい! 茜といるとシロは刺激がたくさんですね。 [気になる点] シロ、子猫姿の茜に対抗心? 茜の一…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ