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第23話 男子会前編

 後日のこと。

 由弦と宗一郎、そして聖の三人はファミリーレストランで食事をしていた。

 勿論……聖の奢りである。


 そして男が三人集まれば……決まってすることがある。

 そう、猥談だ。


「俺、最近、お尻って良いなって思っててさ」


 由弦はガラス製のグラスに入っている葡萄の飲料物を飲みながら言った。

 仄かに顔が赤く染まっている。


「まあ、本来、類人猿にとっては尻が最大のセックスアピールだからな」


 冷静な声で宗一郎は言った。

 友人の同意を得た由弦は大袈裟に頷く。


「そうだろう? まあ、胸も胸で素敵だけど。やっぱり、お尻が本物かなって……」

「しかし偽物が本物に勝てないという道理はあるまい」


 宗一郎はそう言いながら、自分のグラスへと、デカンタの中に入っている葡萄ジュースを注ぐ。

 そして真面目な顔で由弦に言った。


「我々は猿だが、人間だ。猿と人間の違いは……胸にある。ならば、胸を愛するべきじゃないか?」


 そんな由弦と宗一郎に対し……

 ムール貝を突きながら、聖はため息混じりに言った。


「分かってねぇな……」


 由弦と宗一郎が聖に視線を向ける。

 

「脚だろ。すらっとした足は、ただ胸や尻がデカいよりも、芸術的だ」


 胸や尻は性的かもしれない。

 だが足にはそれを超える、芸術的なエロースがあると聖は主張した。


「まあ……結局は全部だよな」

「それを言ったら御終いだろ」

「全部というか、バランスというか、程度の問題ではあるな」


 最終的にみんな違ってみんな良いという結論に至った。

 それから話題が、別の趣味へと移る。


「由弦、お前って普段、何見てんの?」

「何とは?」

「ジャンルだよ、ジャンル」

「あぁ……ジャンルな。ジャンル」


 由弦は少し考えてから答える。


「まあ、普通のだよ」

「ネトラレモノか?」

「それは普通じゃないだろ」

「だが一番、人気のジャンルらしいぞ?」

「そんなバカな」


 一番人気かどうかは知らないが、少なくとも由弦にそんな趣味はなかった。

 とはいえ、“普通”という答えは良くなかったなと由弦は反省する。


「そう言えば最近は……マッサージ系を見たな」

「あぁ、リンパの流れがーみたいなやつか」

「そうそう。そういうの」


 そんなことを言いながら……由弦は少し前の、愛理沙との“マッサージ”を思い出す。

 勿論、由弦は愛理沙のリンパの流れ的なものを整えるような真似はしなかったが……いろんな意味で楽しかった。


「で、俺にそう聞く君は何を見てるんだ?」

「最近、VRに嵌ってる」

「見たことないんだが、楽しいのか?」

「臨場感凄いぞ」

「臨場感なんているか?」

「やってみれば分かる」


 そう言われると、少し試したくなってしまう。 

 もっとも、今は愛理沙への“プレゼント代”があるので、そんなくだらない物を買っている暇はないが。


「宗一郎は?」

「百合」

「ぶれないな、お前は……」


 聖の質問に即答する宗一郎。

 由弦は相変わらずの彼の“趣味”に苦笑する。


「百合じゃないと抜けない」

「百合なら何でも良いのか?」

「竿役の男が出てくると抜けない」

「もう、これ、末代までの恥だろ……」

「宗一郎で末代だぞ」


 尚、“末代”とは子孫のことではなく、来世のことであり、末代までの恥とは来世までの恥という意味である。

 勿論、三人ともそのことは分かっている。


「そう言えば、お前、結局、橘に婿入りするのか?」


 ふと、小耳に挟んだ情報について宗一郎に尋ねた。

 父親経由でそんな話を聞いていたのだ。


「順当に行けばそうなるな」

「じゃあ、佐竹の家督は……」

「俺は降りる」


 橘と佐竹は決して悪い関係ではない。

 が、橘の傘下に入ることを佐竹は望まないだろう。


 橘の婿養子となる男が佐竹の当主になれるはずがなく、宗一郎が次期後継者の地位を辞退せざるを得ないのは当然のことだ。


「まあ、うちは兄弟が多いからな。あいつら(・・・・)と違って、俺でなければいけないわけではない。俺が降りるべきだろうさ」


 宗一郎はそう言うと、「雉を撃ちに行ってくる」と立ち上がった。

 彼が席を立った後、聖は由弦に尋ねる。


「……俺はあいつらの関係について、お前ほど詳しくないわけだが」

「どうした?」

「前々から思っていたが、橘と上西は、やっぱり、アレなのか?」

「まあ、昔から“仲良し”だな」


 由弦は葡萄の飲料物を飲みながら、曖昧に答えた。

 それに対し聖は「なるほど」と頷く。


「つまりあいつは……三人で幸せになるために、佐竹の家督は諦めたわけか」

「そうなるな」

「意外と愛に生きる男だな……」


 佐竹は関東を中心とした東国の大地主であり、また地方議会や土木関係に太いパイプを持っている。

 その家督の相続者の地位は……そう簡単に捨てられる物でもないだろう。


 それに……


「天香に聞いたんだが、上西に種子を提供するのは、あいつなんだろう? でも、上西は京都で、橘は東京だろ。あいつ、どうするんだ?」


「そりゃあ……妻問婚じゃないか? 丁度、リニアもできるし」


 二つの家を定期的に行き来する生活になるだろう。

 勿論、亜夜香と千春は“仲良し”なので互いの家でお泊りをすることも決して少なくないだろうが。


「……可哀想に、あいつ、帰る家、なくなるんだな」


 そう言う聖の言葉には同情と、そしてそれでも尚、好きな女のために家を出ていく男に対する若干の尊敬の念が含まれていた。


「そうだな」


 そんな聖に対して由弦は同意しながら……


「まあ、ぶっちゃけ、佐竹よりも橘や上西の方が金あるけどな」

「やっぱり、クズじゃねぇか、お前」


 丁度、トイレから戻ってきた宗一郎に対して聖は言った。


「トイレから戻ってきた友人に対する第一声がそれか? ……そこはクソだろ」

「そういうギャグじゃねぇよ。何だよ、そのうんこマンみたいなノリは。俺は小学生か」

「汚い下ネタは酒……ごほん、ジュースが不味くなるからやめろ」


 汚いのは抜けない……じゃなくて、食べられない。

 と、由弦は宗一郎と聖に苦言を口にするのだった。


千春ちゃんは愛理沙に「好みのタイプ」とか言ったりしているので割と最初から本性現してます。


十二月一日に一巻が発売されました。

活動報告(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/430380/blogkey/2696303/)にも上げましたが、重版が決まりました。

ご購入してくださった方、本当にありがとうございます。

また、まだ買っていないよという方はもしお金に余裕があれば買っていただけると幸いです。

加筆部分もあるので、WEB既読でもご満足いただける内容になっていると思います。


また担当イラストレーターであるくりあ様が表紙イラストをpixivに公開してくださいました。

紹介させていただきます。

https://www.pixiv.net/artworks/86015838

※もしurlに問題がありましたら教えていただけると幸いです。








面白い、続きが読みたいという方はブックマーク登録、評価(目次下の☆☆☆☆☆を★★★★★に)をしてついでに一巻を買っていただけたら

由弦と愛理沙のイチャイチャを今後も書きます。


男子会が終わったらバレンタインです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 末代までの恥について言及があるのですが、この説明は後世(こうせい)と後世(ごせ)の意味を混在させていませんか?末代の場合、意味としては後世(こうせい)にあたり、自身の死後の世の中を指し…
[気になる点] もしかして書籍の売り上げが悪いと次の話出せないとかそういう…?
[一言] おいw最後のでジュース飲めなくなったんだけどww(食事中に読む俺氏) 今回食後でよかったよw
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