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第34話 “婚約者”との“聖夜”

 終業式は午前中に終わった。

 愛理沙はその日、家には帰らず、そのまま由弦の家へと向かった。


 二人とも私服に着替え、昼食は近くの喫茶店で軽く済ませてしまう。

 それから、本格的なクリスマスの準備に取り掛かった。


 食材に関しては、事前に由弦が指定通りのモノを買い込んでいたので、後は料理をするだけだった。


「では、由弦さん。私は料理をしていますので、飾り付け、よろしくお願いします」

「ああ、任された」


 普段はクリスマスの飾り付けなどやらない由弦だが、しかし今日は愛理沙と過ごす日だ。

 そう思うと、自然とやる気が出てくるから不思議だ。


 そして由弦が飾り付けを終える頃には……

 美味しそうな香りが漂ってきた。


「由弦さん、できました。配膳を手伝って貰えますか?」

「ああ、分かった」


 バゲット。

 アボカドと海老のリースサラダ。

 ビーフシチュー。

 ローストチキン。

 フライドチキン。

 フライドポテト。

 クリスマスケーキ。


 それが本日のメニューだった。

 ちなみにパン屋で購入したバゲットを除けば、全て愛理沙の手作りだ。


「じゃあ、乾杯しようか」


 由弦は冷蔵庫の中から、瓶入りの飲み物を取り出した。

 透き通るように美しく、中には炭酸の気泡が見える。


「それ、気になってたんですけど……もしかして、シャンパンですか?」

「そうだと言ったら、愛理沙はどうする?」


 由弦が冗談半分で尋ねると……愛理沙は少し考えてから答えた。


「……ダメです。未成年なのに、飲酒をするのは。由弦さんを叱ります」

「手厳しいな。……でも、安心してくれ。これはジュースだから」


 シャンパン風のリンゴジュースだ。

 つまりノンアルコール飲料である。


 ……実は由弦はクリスマスや年末、親戚同士が集まる時には普通に飲酒をしてしまっていたのだが、今回はさすがに自重した。

 愛理沙ならば怒るだろうという判断だ。


「まあ、雰囲気ということで一口、付き合ってくれ。口に合わなかったら、残してくれて良いよ。他の飲み物も用意してあるから」

「そうですね、分かりました。折角ですしね」


 由弦はシャンパングラスを用意し、その中にジュースを注ぎ込んだ。

 そして愛理沙と共に、グラスを掲げる。


「じゃあ、乾杯」

「はい、乾杯」


 小さく、グラスをぶつけ合った。

 そして一口、ジュースを飲む。


 あくまで見た目がシャンパン風なだけなので、味はシャンパンとは異なる。

 が、しかしさっぱりとして口当たりの良い、美味しいジュースだった。


「どうかな? 愛理沙」

「これは結構、好きかもしれません」


 そう言って愛理沙は微笑み、一口、飲んで見せた。

 本物のお酒ではないにも関わらず、愛理沙の肌は僅かに上気していて、少し艶っぽかった。


「じゃあ、せっかくだし……料理の方を頂こうかな」

「はい、どうぞ」


 取り敢えず前菜からということで、由弦はリースサラダに手を伸ばした。

 クリスマスリースのように美しく飾りつけられているので、見た目もとても美しいが……


「うん、美味しいね。愛理沙の作るドレッシングは、市販のよりも美味しいね」

「ありがとうございます。サラダに使うお野菜に合わせて、作ってるんです」

「さすがだね」


 由弦がそう言って褒めると、愛理沙は恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 そしてポリポリと頬を掻く。

 とても可愛らしい。


 次にビーフシチューを口にする。

 肉を口にすると、口の中でほろっと蕩けた。 


「この肉、柔らかいね」

「長時間、煮込みましたから。……普段は時間が掛かり過ぎてしまうので、できませんけど、得意料理なんです」


 愛理沙は少し、自慢気に言った。

 得意料理というだけあって、とても美味しい。


 その他の料理もとても美味しかった。

 しかしそれ以上に……


「楽しいな」

「ありがとうございます。……そんなに褒めて頂けると、作り甲斐があります」

「……いや、まあ愛理沙の料理も美味しいのは間違いないんだけどさ」


 由弦がそう言うと、愛理沙は不思議そうに首を傾げた、

 美しい亜麻色の髪が僅かに揺れる。

 エメラルドの瞳がじっと、由弦を見つめた。


「どうされましたか?」

「……やっぱり、君と一緒だから、楽しいんだと思う」


 愛理沙の料理は勿論、美味しい。

 だが、それ以上に。

 愛理沙と一緒に食べる食事が美味しい。

 

「まあ、……その、何だ。こういうことを敢えて言うのは少し照れ臭いんだけどさ」


 由弦は頬を掻いた。

 自分の顔が熱くなるのを感じる。


「今日は一緒に過ごしてくれて、ありがとう。本当に楽しいよ。……また来年も、付き合って貰えないかな?」

「は、はい。……喜んで」


 愛理沙は恥ずかしそうに、しかしはっきりと、頷いて答えた。 

 何となく、由弦は浮ついた気持ちになった。

 今ならば、恥ずかしくて言えなかったような言葉も言えるような気がした。


「愛理沙」

「……何、ですか?」

「……これからも、その、俺に料理を作ってくれないかな?」


 由弦がそう言うと、愛理沙の表情が固まった。

 そして少し遅れて、顔が真っ赤に、茹蛸のように染まった。


「……愛理沙?」


 押し黙っている愛理沙に、由弦は声を掛けた。

 すると愛理沙は我に返った様子で、背筋をピンと伸ばした。


「は、はい! そ、その、喜んで!」


 そして愛理沙は由弦の手を握った。




あっ……

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愛理沙デレ度:75%→100%

由弦本気度:80%→90%


ゲージが……

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次回で二章は最終回です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゆづるん、越されてるじゃないか!? おとこをみせるんだ、ゆづるん!! ……このあと、見せ場があるんですよね?(チラチラ
[一言] 本気度あと残り10 もっと熱くなれよ!!
[一言] もうプロポーズですよねこれ、もうプロポーズでいいですよね?!
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