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メモリアランド  作者: ひみこ
11/28

第11話 赤い馬

○登場人物

・主人公グループ

後藤 奏太

長谷川 杏奈

佐久間 陸✗

佐藤 芽依✗


・陽キャグループ

柿本 湊斗

本郷 彩

村上 順平✗

岡本 めぐみ

吉田 涼

中村 弘明



 緩やかに上下に動く馬。

 身長が高い柿本くんが一人だけメリーゴーラウンドに乗っている姿は普段なら笑えるくらいおかしな姿だろう。

 だけど何か俺はそれとは違う違和感を感じていた。

 なんだろうこの違和感。

 高校生がメリーゴーラウンドに乗っているから?

 暗い中で淡い照明に照らされているから?

 いや、この違和感はいつから感じている?


 ゆっくりと一周回って、俺の目の前を通り過ぎようとした時。

 ちょうど柿本くんが光を遮って俺の前に影を作った。

 その時、ふと赤い馬に乗っていたはずの柿本くんの馬が白く感じた。

 そんなわけない、馬の色が変わるわけがない。

 ハッと気づいた俺は自分の服を見てみる。紫色に見えた。


 俺の今日の服の色は青だったはずなのに。


「避けろ! 柿本くんー!!!」

 俺は叫んだ。

「は?」と振り返る柿本くん。ダメだわかってない。

「避けろ、それは赤い馬じゃない! 飛び降りろーっ!!」

 柿本くんは華麗な体捌きで馬を飛び降りた。


 その瞬間、天井から棒のようなものが飛び出し、馬を貫いた。

 ちょうど、一周回ったところだった。


「どういうことなんだ。なんで赤い馬がハズレなんだ?」

「ちがう、アレは赤い馬じゃなかったんだ」

「どういうこと?」

「たぶん、照明のせいだ。俺も詳しくはわからないけど、光の当て方によってものの色は違って見えるだろ。例えばマークシートとか使うと緑のマークを引いたところは見えづらくなったりするだろ?」

「あれか。じゃあ、本当はあれは違う色だったってことか!」

「そうだ。そして、おそらく一周回るごとにハズレの馬が串刺しになるんだよ」

「なんじゃそりゃ! ほんとにたちが悪いなこれ作ったやつは!」


 急いで本物の赤い馬を探さないといけない。

 でも、俺は色に詳しくない。何の光を当てればどの色が変わるのかなんて知らない。

 さらに、光のあたり方も複雑に混ざり合っていて、何色の光があたっているのかすら特定できない。

「誰か、色に詳しいやつはいないか!?」

 全員が首を横に振る。

 それはそうだ。さっきのティーカップみたいな都合のいい能力を持った高校生なんてそうそういるわけがない。

「ど、どうすればいい? どの色の馬に乗れば良いんだ俺は!?」

 柿本くんが叫ぶ。

 今は馬に乗っていない。

 このまま馬に乗らなければ最後まで生き延びられるかもしれない。

 だがそれではおそらくミッション失敗になる。

 判定は一周ごとだ。

 何周までチャンスが有るのかは分からないが、少なくともこのへんてこな曲が終わるまで、あと数周は回るはずだ。

 二周目が終わる。

 今度は青く見えていた馬が棒に貫かれた。


 どうする。どうやってトリックを見破れば良い。

 わからない。

「くそっ、一か八かかけるしかないか!」

 柿本くんが早まった決断をしようとしている。だが、馬の数はまだ9頭ある。

 あたりを引く可能性はかなり低い。

 分が悪すぎる。

 なんとか色を見抜かないと柿本くんが殺される!

 なんとか、なんとかしないと。

 頭がうまく働かない。へんてこな音楽が考えを散らしてしまう。残り時間が俺を焦らせる。

 俺は緊張が大嫌いなのに!

 顔をあげると、柿本くんが俺の方を見ていた。

 さっきまでのような慌てぶりはなく、落ち着いた様子で言った。

「後藤くん。さっきのお願い。頼んだよ」

 そう言って、ちょうど横に来た黒い馬にまたがった。


「柿本ー! くそ、くそ! どうなってんだこのクソゲーは! 卑怯にもほどがあるだろうが!」

 俺は自分を抑えきれなくなって大声で叫びながらメリーゴーラウンドの柵を殴った。

 興奮していて痛みは感じなかった。

 柵はやっぱりびくともしない。

 くそ、くそ、くそ、くそ!

 俺は柵を殴り続ける。

「奏太! もうやめて!」

 彩が俺のもとに駆け寄ってきて腕をつかんだ。

「奏太、まだ終わってないよ。落ち着こう。まだ諦めちゃダメだよ」

「彩……」

 彩の顔は電飾に照らされたせいか、さっきとは全く違って見えた。とても綺麗で、幻想的な。

 お陰で頭が少し冷えてきた。


 そうだ。まだ諦めちゃダメだ。

 彩がバッグから何かを取り出そうとしている。多分絆創膏だ。こいつはいつも絆創膏を持ち歩いている。昔から変わらない。

 だけど、昔と変わったのは服の趣味だ。

 その真っ赤なバッグは流石に目立ちすぎるし服装も選ぶだろうな。


 俺はバッグを漁る彩の腕をつかんで叫んだ。

「お前のバッグは何色だ!?」

「え!?」

「良いから! 今日のお前のバッグは何色だった!?」

「みればわかるでしょ、黄色だけど。あれ? 赤い? なんで?」

 そうか!

「さんきゅー彩! 絆創膏持ってんだよな?」

「う、うん持ってるけど、今出すからちょっと待って……」

「じゃあ大丈夫だな!」

 俺は思いっきり自分の腕に噛みついた。


「ちょっと奏太!? どうしちゃったの!」

 彩が俺にしがみつくように止めてくる。

「大丈夫」

「何が大丈夫なのよ。うわ、血が出てるじゃない!」

 俺の腕から流れる血の色はあざやかな橙色だった。


「柿本ー!! オレンジだ! オレンジ色の馬に乗れ!」

 三周目が終わった時、今度は緑に見えていた馬が貫かれた。

 音楽がゆっくりに変わる。四周目。おそらくこれが最後だ。

 あとは柿本くんが俺のことを信じられるかどうかだ。

 だけど俺の心配を他所に、柿本くんは「わかった!」と言ってあっさりと俺の指示に従った。


 だんだんと速度が落ち、ゆっくりとメリーゴーラウンドが止まった。

 と同時に、柿本くんが乗っている以外の馬がすべて棒に貫かれた。


「こ、怖かったぁ……」

 柿本くんはそう言う割には軽い身のこなしで馬を降りると、駆け足でこちらに帰ってきた。

 逆に俺の方が足が震えてしまっていた。

 こいつのこの度胸は大したものだと思う。同じ高校生とは思えない。

 電飾版の表示が変化する。



 ゲームクリア

 


 俺たちはなんとか三つ目のミッションをクリアできたようだった。

 初めての犠牲者無しでのクリア。

 大きな一歩だったと思う。


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