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寝取りの才能だけで勇者になれますか?~はい。堕とした美少女達が大活躍します~  作者: T-愛坂
第一章【呼び覚ませ。寝取りの才能】
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8話:本性を曝け出せ

 俺がアイに搾り取られてしまった長い夜が明け、翌朝。

 アイが殺した見張りの代わりに、地下牢の階段を降りてきたのは……一人の男だった。


「やぁ、ネトレ君。久しぶりだね」


 人当たりの良さそうな明るい笑顔。

 爽やかな顔立ち、服装の……眼鏡を掛けた優男。

 この男こそが、ガティの婚約者にして――このエクリプス王国の三番隊隊長を務める騎士、イヴィル・マサーキンである。

 

「……お久しぶりです、イヴィル」


「さん、をつけたまえ。私は君よりも歳上で、地位が上で……そして、君の大好きなガティの婚約者なんだからね」


 顔に貼り付けた笑顔の仮面を一切動かす事なく、そう言ってのけるイヴィル。

 どうやら、本性を隠すつもりはさらさら無いらしい。


「そんな偉い方が、このような場所に何のご用でしょうか?」


「いや、なぁに。見張り番が面白い話を聞かせてくれてね。昨日……ここに、ガティがやってきたと」


 話しながら、イヴィルは腰に差した剣を鞘ごと引き抜く。

 そして、その先端を鉄格子の隙間から差し込み――俺の腹へと突き刺した。


「がはっ!?」


「……困るんだよ。私の婚約者の心を、惑わせるような事をしてもらっては」


「はぁっ……はぁっ……! 随分と、余裕が無いように見えますね」


「ははははっ、そんなわけ無いだろう? どうせ君は、もうすぐ死ぬんだから」


 苦痛にもがく俺の頭を、髪の毛を掴んで持ち上げるイヴィル。

 そして、その薄気味悪い笑顔のまま……彼は言葉を続ける。


「むしろ感謝しているよ。君が死ぬ事で、傷付いた彼女の心を……完全に私のモノに出来る。たぁっぷりと、可愛がって慰めるつもりさ」


「……ガティへの執着は相変わらずですね。初めて会った時と、変わらない」


「ああ……あの時はすまなかったね。自分でも、大人げない事をしたと思っているよ」


 あの時。それは、俺がガティの修行を受け始めて、数ヶ月くらいの時だった。

 ガティが騎士団の会議に出席するとの事で、代わりにこの男が……俺に修行を付ける事になったのだが。


「修行に乗じて、君を何度も何度も痛めつけたね。あれは気持ちよかった」


「……そして、こうも言った。ガティに手を出せば……お前も殺す、と」


「くくっ……そうだったね」


 その時の光景は未だに良く覚えている。

 当時はただ、婚約者に想いを寄せる男への牽制なのかと思った。

 だけど、その後……気になった事がある。


「お前を殺す、じゃなくて。【お前も】殺す。つまりアナタは……ガティを手に入れる為に、既に誰か殺しているって事じゃないんですか?」


「……ははははっ。いやぁ、参ったな。君は本当に、抜け目の無い男だよ」


 乾いた笑いを溢し、イヴィルは俺の髪から手を放す。

 そうして浮いた俺の頭を、右足のつま先で蹴り上げる。


「あぐぁっ!?」


「その通り。私はね。彼女を手に入れる為に……この手を汚してきた」


 口の中に血の味が広がるのが分かる。

 この野郎、思いっきり蹴りやがって……!


「最初に彼女と会ったのは、幼い頃。騎士養成学校の入学式だ。その頃の私はあのヒイロと並び……周囲の中でも、屈指の剣技を持っていた」


「……」


「だが、そんな私も……ガティには一度も勝てなかった。彼女は私以上の才能を持っていたんだよ」


「だから、惚れたんですか?」


「いいや、少し違うね。むしろ彼女を恨んだのさ。天才の私を差し置いて、ヒイロと首位を競う彼女が……疎ましくて、妬ましくて仕方なかった」


 くつくつと笑いながら、イヴィルは話を続ける。


「だから私は、仕組んだんだよ。ありとあらゆる策を練り、彼女の両親と弟が……不幸な事故に遭うようにと」


「なっ!?」


 驚いたフリをしているが、この事実は昨日……アイから聞かされている。

 イヴィルの屋敷に忍び込んだアイが、イヴィルに擬態して……この男の側近である執事から話を聞き出したのだ。


「面白いほどに上手く行ったよ。ガティが留守中、金を払った強盗に家を襲わせる。そして、その強盗を私が始末する。私は一躍、家族の仇を討った恩人というわけさ」

 

「……」


「それから陛下に進言して、彼女を騎士に取り立てて貰う。さらに両親に頼み、彼女を我が家に招き入れる。そうすれば彼女は、私の求婚を断れなくなる」


「……クズめ」


「あはははははっ! 彼女は家族の仇とも知らず、私の花嫁となるんだ! そして、あの気取った女は私に純潔を奪われ、私の子を孕むんだよっ!」


 聞くに堪えない、醜悪な欲望を口にするイヴィル。

 もはやこの男に、騎士としての名誉も、品格も、プライドも存在しないのだろう。


「ああ、楽しみだ。あの女が私に抱かれて、どのような喘ぐのか……感じるのか。想像しただけで、私のアソコが硬くなるよ」


「……一つ、教えてくれませんか?」


「ん? なんだい?」


「……ガティがいくら頼んでも、陛下が俺の処刑を撤回しない理由。そこに、アナタも関わっているんですか?」


「ククッ、そんな事か。残念だけど、私は何もしていないよ」


 俺はてっきり、この男が陛下に俺の処刑を撤回しないように手を回しているのかと思っていたが、そうじゃなかったらしい。


「だが、冥土の土産に良い事を教えてやる。陛下がお前の処刑を決意したのは、あの儀式よりも前の話だ」


「……なっ!?」


「全ては仕組まれていたのさ。お前は最初から、死ぬ運命にあったんだ」


 どういう事だ? 陛下はなぜ、俺を殺そうと企んでいた?

 俺の素性を、以前から知っていた……のか?


「おっと、そろそろ私は行くよ。今日はガティと食事の約束をしていてね」


「そうですか。でもその前に、俺からも一つ……良い事を教えてあげます」


「……何かな?」


「来世では、そのペラペラと喋る口をどうにかした方がいいですよ」


「……?」


 キョトンとするイヴィル。俺はそんな彼にも分かりやすいように、傍らのベッドに被せてあったボロ布を……一気に剥ぎ取る。


「なっ!? なぜ……!?」


「話は全て聞かせて貰ったぞ……イヴィル」


 そこに身を隠していたのは鎧を脱ぎ捨て、身軽な格好のガティ。

 彼女は今までずっと、ベッドの中に身を潜めていたのだ。

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